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(ネタバレ注意)料理における視覚の影響「オレンジとビーツのゼリー」
「目で食べる」という言葉があるように、視覚は料理の味に大きく影響します。
例えばこちらの記事では丸いプリンが四角いプリンよりも〈甘く〉感じる事例を紹介していますが、食べ物は口に入れる前に眼から入った情報が先に脳に伝達されるので、その「味の予想」が実際の味にも影響を及ぼします。
具体的にはINRAのGil Morrotとボルドー大学のFrederic BrochetとDenis Dubourdieuの共同研究では54人のテイスターを対象に、赤く着色した白ワインを試飲させたところ、コメントが赤ワインの特徴になったことなどが挙げられます。人間は食べる前に「準備する」のです。
ヘストンブルメンタールの『ビーツとオレンジのゼリー』はその現象を利用したアミューズ。作り方をご紹介しますが、ネタバレ注意です。というのもこの料理。種を知ってから見る手品と同じで、先に理屈を知ってしまうとまったく楽しめなくなります。現在、FatDuckでは提供されていないようですし、こちらの論文
でも取り上げられている事例なので、解説していきます。ただ「どうしても知りたくない」という人はここから下は読まないことをオススメします。
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ビーツとオレンジのゼリー
黄色ビーツ 1個(350g程度)
ゼラチン 5g
ブラッドオレンジジュース 200ml
グラニュー糖 10g
ゼラチン 7g
まず準備するのは黄色ビーツです。
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黄色ビーツはゴールドビーツやイエロービーツと言われる品種。
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切ると中は黄色です。甘みが強く、ビーツ特有の苦味が少ないのが特徴。
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皮を剥いて、角切りにします。
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ジューサーで絞ります。
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200mlジュースができました。
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鍋に入れてさっと沸かし、ゼラチンを溶かし込みます。
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粗熱をとってから四角い容器に流し込み、冷蔵庫で冷やし固めます。
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続いてブラッドオレンジジュースです。こちらは酸が強いので、ゼラチンの量を多少増やしています。
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同じように沸かしてゼラチンを溶かし込みます。ちなみにヘストンのオリジナルレシピはブラッドオレンジジュース1lを600mlまで煮詰める→濾すという手順を踏みます。(その方がより色が濃くなるので)
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冷やし固めたゼリーを取りだし、四角い形に切り出します。
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それぞれを盛り合わせて提供し「オレンジのゼリーからお召し上がりください」と勧めます。
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仕掛けがわかりましたか? オレンジのゼリーと思って口に入れると酸味はまったくなく、ビーツの甘みが広がります。次にビーツのゼリーと思ってブラッドオレンジのゼリーを食べると今度は酸味を感じます。一瞬、脳みそがバグった感覚です。ヘストンブルメンタールらしい五感を刺激する料理です。種を明かされてしまうと脳がバグった感覚はもう得られないので、難しいところですが、視覚が味覚に及ぼす影響について考えずにはいられなくなる、という点で興味深い料理でしょう。
撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!