モッツァレラチーズとトマトのスープ
エル・ブジのフェラン・アドリアのチームが体系化した創作メソッドは料理がどのようにして生まれるのか、というフローを整理したもの。僕はエル・ブジによるこの創作メソッドはエスコフィエが著した『料理の手引』に続く、料理の体系化を試みたマイルストーンとして重要なものだと考えています。
さて、彼らの創作メソッドの一つに『アダプテーション』があります。アダプテーションとは日本語でいうと翻案。既存の料理を自分たちのスタイルに作り変えることです。今回ご紹介するモッツァレラチーズとトマトのスープはそんなアダプテーションの一つ。オリジナルレシピとは分量を大幅に変えていますが、充分楽しめるはず。
モッツァレラチーズとトマトのスープ
モッツァレラチーズ 100g
牛乳 50cc
生クリーム 50cc(純乳脂肪)
塩 適量
バジル 20g+飾り用
EVオリーブオイル 50cc
ミニトマト 6個
この料理、元ネタはイタリア料理のカプレーゼサラダで、冷たいスープ仕立てにしたところがスペイン料理的。イタリア料理好きなフェラン・アドリアらしいひねりが利いています。
モッツァレラチーズは少量、浮身用にとっておきます。
残りをカットし、牛乳、生クリームと一緒にミキサーへ。
こまかく粉砕します。
ミキサーにかけた状態のままだとちょっと粗いので、混ぜながら弱火にかけて温めます。次第に滑らかになるので火を止めて、冷蔵庫で冷やします。完全に沸かしてしまうと風味が落ちるので、温める程度に留めるのがポイント。塩で味をつけておきます。
バジルは飾り用の葉をとっておいて、、、
10秒間茹でます。
硬く絞ってから、こちらはオリーブオイルと一緒にミキサーに。
バジルのソースができました。
ミニトマトも湯剥きしておきます。この一手間でスープとの馴染みがよくなるので、結構重要なプロセスです。
あとは組み立てるだけ。スープ皿にミニトマト、チーズ、バジルの葉を配置し、バジルソースを少量かけます。
客席でスープを注ぎます。冷やすと底にチーズが沈むので提供前に混ぜることを忘れずに。裏ごしすると滑らかにはなりますが、チーズの味は薄くなるのでやる意味は薄いか、と思います。
この客席スープを注ぐ行為は今では当たり前の感もありますが、フェラン・アドリア曰く、これは80年代のジャック・マキシマンの発明とか。ジャック・マキシマンはホテルネグレスコの料理長時代『厨房の(ナポレオン)ポナパルト』と称された天才シェフで、フェラン・アドリアをはじめとした多くのシェフに影響を与えた人物です。経営はうまくないようで、店を手掛けては失敗することでも有名な人ですが、現存している偉大なシェフの内の一人であることは間違いありません。
モッツァレラチーズのスープはそのまま食べるよりもミルキーな甘みを強く感じます。そこにミニトマトの酸味とバジルの香りが加わり、完璧なバランス。スープとはフェラン・アドリアが得意とするコンセプトなのですが、モッツァレラチーズを液体にするアイディアはさすがという印象です。
撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!