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cakes連載とブルーチーズとチョコレート

cakes連載の更新

今日は二つの材料でできる極上のチョコレートムース。

noteでも以前、載せたレシピだけど、チョコレート種類を変えながら試作を繰り返した。ちなみにチョコレート系のお菓子の場合、製菓用として売られているチョコレートよりも板チョコの方が失敗の確率が少ない。(丁寧にコンチング=すりつぶし処理がされているため)総じて日本のチョコレートは口溶けを優先させるために粒子が細かいので分離するリスクが非常に低い。大手メーカーの技術力はすごい。

結局、糖分の割合をどれくらいにするか、とかいろいろとあるのだけれど、コンビニエンスストアで手に入る材料という想定では、いろいろと試した結果、MeijiのThe chocolateのカカオ分70%のビターチョコとガーナのブラックチョコレートの組み合わせが万人受けする味ではないか、という結論に至った。チョコレート菓子の味はチョコレートで決まるので、種類を変えるとレシピが想定している味が変わってしまうのが難しいところ。

レシチンについて

cakeの説明からは省いたけれど、チョコレートに加えることの多いレシチンは一般的な乳化剤だが、チョコに限っては使用目的が少しだけ異なる。砂糖やカカオ固形分、ミルクチョコレートの場合は粉乳のあいだで潤滑剤の役割を果たし、口溶けを改善する働きがあるのだ。逆にクラフト系のチョコレートではあえてレシチンを入れずに、チョコレートの粒子感を際立たせている場合もある。これまで日本人の嗜好性はなめらかなものを好むとされていたので、このあたりはすごく面白い。

チョコレートとブルーチーズ

これはtwitterに載せたレシピ。チョコレートとブルーチーズの組み合わせは科学が見つけたペアリング。

ブルーチーズ 50g
やわらかいタイプのクリームチーズ 50g(理想はマスカルポーネチーズ)
チョコレートビスケット 

ブルーチーズとクリームチーズをフォークでよく混ぜる。

それをチョコレートビスケットに塗って食べる。ビスケットは三種類ほど試したがアルフォートブラックが一番良かった。ここにポートワインをシロップ状になるまで煮詰めたものか、ハチミツを少しかけるとさらに相性がよくなる。

人間が感じるおいしさは味よりも香りによる影響の方が大きい。味を感じる味蕾は9000個ほどしかないが、香りの受容体は5〜1000万あり、人間は1000種類あまりの香り成分と10000万を超える匂いを嗅ぎ分けることができる。テイスティングでは20%が舌で感じる味、80%が鼻で感じる香りとされている。だから、風邪を引いて鼻が詰まっていたりすると食事がおいしく感じられない。

香りのメカニズムを解明したリンダ・バック、 リチャード・アクセルの二人は「匂い物質受容体の発見と嗅覚系の組織化」で2004年にノーベル医学生理学賞を受賞している。

話は変わって、チョコレートとブルーチーズの組み合わせは同じ風味化合物同士を持つ食材同士は相性がいいという「フードペアリング仮説」という仮説から導き出されたもの。フードペアリング仮説はスイス、ジュネーブにあるフィルメニッヒという世界的な香料メーカーの研究者、Francois Benziが発表した概念で、彼は最初の分子ガストロノミーのワークショップで豚のレバーとジャスミン(同じインドールという香り成分を含む)の組み合わせを発表している。ブルーチーズとチョコレートも73種類の共通する風味化合物を持ち、実際に相性がいい。

食材の香り成分を調べるにはhttp://www.thegoodscentscompany.comを使うと便利だ。

例えばGoogleの検索窓に「Blue-cheese chocolate site:http://www.thegoodscentscompany.com 」と打って検索すると、
ブルーチーズとチョコレートにはプロピオンアルデヒドという共通する香り成分が含まれていることがわかる。

他にも

Mr.cheesecakeで有名な田村さんが「ブルーチーズとバナナ」の組み合わせを提案しているが、さきほどの検索結果から二つの食材は『イソ酪酸ブチルという香り成分が共通しているので相性がいい』という結論が導き出せる。(さすが香り使いの名手!)

風味化合物の名前なんていいから材料の相性だけを知りたい、という方にはもっと簡単に調べられるサイト、foodpairing.comもある。食材を打ち込むと相性のいい食品が提案される。とはいえ、このフードペアリング理論はすべてに適応されるわけではない。

こちらの論文では食品の相性(おいしさ)は化学よりも民族的および文化的な違いによる影響が強いことが示唆されている。西洋ではフードペアリング仮説は支持されるが、東アジア圏ではむしろ同じ風味化合物同士を避ける傾向にある、という。

とはいえ、まだまだレシピの研究は道半ば。これからもっと数を増やしていけば、法則性のようなものが見つかるかもしれない。

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樋口直哉 作家・料理家 主な著作として小説『スープの国のお姫様』(小学館)ノンフィクション『おいしいものには理由がある』(角川書店)など。新刊『新しい料理の教科書』が1/17日に発売されました!
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