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アメリカの風景:ロサンゼルスからフィラデルフィアまでグレイハウンドバスで旅をしたときの思い出③

アマリロをでてオクラホマに進むとまた景色がガラッと変わる。畑がガラッとかわるのだ。コットンかなにかか。やがて日が暮れオクラホマシティに到着したのは夕焼けが綺麗な晩であった。ロサンゼルスをでて以来の初めての都会だ。これからはミズーリ州まで一気に移動することになる。わたしは最初の晩と同じように、ターミナルで買ったサンドイッチを頬張りながら夕焼けを、自分と重ねて眺めていた。わたしは家族に捨てられた身だ。今の恋人しかわたしにはいない。だからこそこの旅を続けているのだ。

まもなく乗車時間となり再びバスに乗り込む。明日の朝はいよいよセントルイスだ。セントルイスで乗り換えなければならない。そう考えながらわたしはいつの間にか眠りについていた。

三日目の朝は6時頃に目が覚めた。日はまだ昇っていなかったが、高速道路のライトから、まだバスの中だということを気付かされる。時計を見るとあと数時間でセントルイスだ。そんなことを考えながらうとうとしていたらその朝のうちにセントルイスのターミナルへ到着した。セントルイスはミシシッピ川とミズーリ川という2つの大河が合流し、昔から交通の要所として栄えた町である。また、「ゲートウェイ・シティ」の愛称がある、アメリカ西部の入口を自負している街である。ここを越えればアメリカ東部であるという実感を覚えた。

さて、ここでロサンゼルスからお世話になってきたバスとの別れである。乗り換えのために2時間ほどターミナルで待っていると、同じくロサンゼルスから通しで乗ってきた、20代くらいの若い乗客に話しかけられた。

「やあ、おれはここからスプリングフィールドの方に行くんだけど、君はどこまで行くんだい?」

「僕はフィラデルフィアまでだよ。あと2日乗らなきゃならない。」

「大陸横断か!そりゃ大変だ。もう雪が降る季節だし身体に気をつけてな。所で、フィラデルフィアまで何しに行くんだ?」

「いや‥恋人に会いに行くんだ。」

「へー!バスに乗って会いに来てくれるなんて相当幸せな彼女さんだね!ラッキーだと思わなきゃ。」

「‥そうかも知れないね。」

そんな話をしているうちにバスの発車時間となった。わたしは彼に別れを告げ、新しいバスに乗り込んだ。新しいといっても見た目はそっくりそのままだ。そしていよいよバスはミシシッピ川を越え、イリノイ州へ進んでいく。車窓からゲートウェイ・アーチという、西部開拓を記念した巨大なモニュメントが光って見えた。これからは東部なんだという気持ちが新たに湧き上がってくる。フィラデルフィアまであと2日だ。



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