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発音や文法の細かいミスは気にせずどんどん話そう!という意見について

発音や文法のミスを恐れず、細かいことは気にせず話そう!というスタイルは受け入れられやすく、大手のサービスでもこのようなメッセージを前面に出してマーケティングしています。

そして、これをやや極端に裏返して表現すると、発音や文法で細かいところを指摘することは悪である、ということになりますが、これは本当でしょうか。今回はこの論点について話をします。

細かいところを教えるの意味

ここでいう「細かいところ」の具体例ですが、たとえば、「furniture は集合名詞だから a furniture とは言えない」や、「avoid は存在するものを回避する行為だから avoid to do とは言えない」などです。

いずれも具体的であり、聞く人によっては、重箱の隅を楊枝でほじくるようなアドバイスに聞こえるかもしれません。また、人によっては、「どうでもよいことに時間を割きたくない、もっと本質的なことを教えてほしい」と考える人もいるかもしれません。

細かいミスは本質的な理解の是正につながる

学習の指導やアドバイスをする人は、そのような突っ込んだ話をせず、伝わればOKの精神で寛容に指導をすべきでしょうか。

ここからは僕の意見ですが、僕は、「細かいミスは本質的な理解の是正につながる」と考えます。つまり、細かいミスの指摘は、その奥にある根本的な理解を正すことに貢献するため、遠慮することなく、細かいことを洗い出した方がいいと考えます。

たとえばですが、avoid の例で考えてみます。

まず、何かをしないようにする「意思」と、すでに表に存在するものを回避する「アクション」には明確な違いがあります。

avoid は身体を動かして回避するアクションです。ほっとくと被害を被ってしまうため、能動的に避ける「動き」に対応します。

avoid the worst case senario
最悪の事態を避ける(放っておくとひどいことになる)

avoid exposure to heat
高温を避ける(高温にさらされる可能性はすでに存在する)

など、いずれの表現にも能動的に避ける動きが組み込まれています。

一方で、「~しないようにする」というのは、意思、あるいは試行であり、回避アクションではありません。この気持ちを表現する手段にはwill not(意思)やtry not to do(試行)などがあるでしょう。

もし、avoid to do と言ってしまう人がいたら、それは、avoid の、「対象物を避けるアクション」というイメージをそもそもとらえきれていない可能性があります。avoid のような動詞は、明確な対象をとる動詞(=他動詞)であり、対象が存在してはじめて成り立ちます。

このように振り返ることで誤った avoid のイメージを修正できますし、同時に、英語には自動詞(単なる主体の動き)と他動詞(主体が対象に作用を及ぼす)という区別があり、単なる日本語の和訳だけではとらえきれない部分もあるんだな、と学習できます(もちろん、そのような知見から他の誤解釈の発見、修正につなげることができます)。

まとめ

英語学習とは、豆粒のような independent な知識を集める作業ではありません。細かいところを気にしても仕方ない、学習者に時間を使わせることはよろしくないから、「大事なところ」のみに注力させる、というやり方は、一見正しそうですが英語学習の指導においてはよろしくありません。むしろ逆で、細かい不具合を見つけ、「そのように言ってしまう心理的要因」を探り、表面化させることが、指導する立場の人間のやることです。

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