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破裂音の気音化と閉鎖音化について

この記事は、「そっちゃそ発音講座」の受講者向けに公開しているものです。特に非公開にする理由もないので、広く役立ててもらう目的で公開しています。発音講座について気になる人は以下からチェックしてください。

はじめに

辞書に書いてある発音記号は、細かい違いを区別せず、似通った音をざっくりひとつの音として表記する簡略表記です。簡略表記は便宜上役に立つのですが、実際に運用される音を「ざっくり」捉えたものであるという都合上、細かい音声変化が発音記号に反映されていないという弱点があります。 

この記事では、辞書の発音記号には反映されていないそのような音声変化のうち、英語で頻繁に発生する気音化と閉鎖音化について解説します。

気音化

/k/, /p/, /t/ が [kʰ], [pʰ], [tʰ] になり、破裂に摩擦音の /h/ が伴うようになることを「気音化」といいます。なぜこのようになるのかというと、気音化させたほうが発音するのがラクだからであり、気音化させない無気音で出すことが間違いというわけではありません。末尾に来る破裂音が気音化することもありますが、後述の閉鎖音化が発生することもあります。

無気音と有気音の区別は簡単で、口元にティッシュ1枚をひらつかせて、発音時にティッシュが吹き飛ばない方が無気音、吹き飛ぶほうが有気音です。

ちなみに、有気音と無気音で意味を区別する言語としない言語があり、タイ語や中国語は有気音と無気音の間に意味の区別がありますが、英語には意味の区別はありません。英語の気音化は意味の区別とは関係ないので、当たり前かもしれませんが、気音になっても意味が変わる訳ではありません。

閉鎖音化

日本語のコマーシャルや大衆向けのメディアコンテンツで、check it out のことを「チェケラッ」と書くことがよくありますが、「チェ・ケ・ラッ・」の中黒(・)に対応する箇所が閉鎖音です。閉鎖音とは、破裂直前の内圧を高めた状態をかまえ、その後に破裂させることをしない音素であり、一般的にリダクションと呼ばれる現象に対応します。/t/ の閉鎖音の場合、精密表記で [ʈ̚] と表記します。

注意してほしいこととして、閉鎖音化すると音は聞こえなくなりますが、これは、音素そのものがなくなるというわけではありません(なくなるとリズムが崩れておかしくなります)。閉鎖を作り、内圧を高めた状態で一定時間保持し、その後破裂させずに次に行くため、閉鎖させる間の無音が音素として存在感をしっかりと維持します。

ちなみに、can と can't の聞き分けの唯一の足掛かりとなるものが、閉鎖音の存在の有無でもあります。/n/ の鼻音の直後に次の音が来る場合は can、abrupt に音がストップして一定時間の無音が入り、その後次の音が来る場合は can't になります。

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