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ジーン・ウェブスター「あしながおじさん」ペンギンブックスp.109~110

10月3日

あしながおじさま

 大学に戻ってきました、4年生です――そして校友会誌の編集部員にもなりました。信じられないですよね、こんな如才ない人物が、4年前まではジョン・グリア孤児院に在籍してたなんて。アメリカの進歩には目覚ましいものがありますね!
 おじさまどう思います? ジャービーぼっちゃまがロック・ウィローに当てた書簡が、こちらに転送されてきました。悪いけど、友達何人かでヨット遊びに行く招待を受けてしまったから、この秋はロック・ウィローに行けないって書いてあります。それで、私が田舎で楽しい夏を過ごせるよう祈ってるって。
 でもね、彼、私がマクブライド家と一緒にいるって、ジュリアから聞いて知ってるはずなんです! 男性は、女性相手に駆け引きなんかしないほうがいいですよねえ、どうせ女性にはかなわないんですから。
 ジュリアは、うっとりするような新しい洋服をトランクに詰めこんで戻ってきました――虹色をしたリバティのクレープ地の夜会服は、天国にいる天使のお召し物みたい。私、今年の自分の洋服は、前古未曽有の(こういう言葉、ありましたよね?)美しさだって思ってました。パターソン夫人のドレスを真似して、もっと安い店で仕立ててもらったんです。夫人のと完全に同じ仕上がりってわけにはいきませんでしたけど、それでも、ジュリアが荷ほどきするまでは大満足してたんですよ。でもねえ――パリ製を目の前にしてしまったら!
 おじさま、おじさまは女の子じゃなくてよかったですね? おじさまは、私たちが衣類のことでこんな大騒ぎをしてるのが、まったくばかげてると思ってらっしゃるでしょ。そうなんです。まったくそのとおり。でも、これは男性のせいなんですよ。
 ある教授の話を聞いたことがあるでしょうか? その人は、無駄な装飾を身につけるなんて恥ずべきことだと思って、女性が、無駄のない、実用第一の衣類を着ることを好んでたんですって。その人の奥様は従順な女性で、この「ドレス改革」を受け入れてたんですけど、このあと教授はどうしたと思います? 踊り子と駆け落ちしたんですって。

ジュディより

追伸 いつも廊下にいるメイドが、青いギンガムチェックのエプロンをつけてるんです。私は彼女に茶色のエプロンをあげて、青いほうは湖の底にでも沈めてやろうと思ってます。あのギンガムチェックを見るたびに、孤児院を思い出してぞっとします。

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