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エンジニア必見!世界中のグローバル企業で使用される最強CMS“Drupal”の開発者ドリス・バイタルト氏講演レポート

みなさま、こんにちは!note担当の西川です。

今回は、先日開催した弊社内エンジニア向け講演のレポートをお届けします。Drupalの開発者であり、Acquia社の創業者でもあるドリス・バイタルト(Dries Buytaert)氏が弊社本店@渋谷ファーストタワーにお越しになられました。講演内容は、弊社エンジニア向けとしてDrupalの歴史や開発小話と質疑応答です。

弊社エントランスにて笑顔でパチリ(右から2人目がドリス氏)

CMSやDrupalにご興味のある方やオープンソースソフトウェア等の開発が気になる方必見のレポートです。
印象的な内容や転機となるエピソードをまとめました。


DrupalとAcquia社ができるまでのストーリー

まず始めに、ドリス氏から「DrupalとAcquia社ができるまでのストーリー」のお話がありました。

ドリス氏:最初にDrupalについて簡単に説明します。これはオープンソースソフトウェアであり、ソースコードは公開されていますし、誰でもソースコードに手を加えることができます。興味があれば、様々な形で貢献することができます。ソースコードを書くだけでなく翻訳という貢献の形もあります。1万人以上のコントリビューター(貢献する人)がいて、1,000以上の企業からも貢献していただいています。

2001年にDrupal誕生!

ドリス氏:次に歴史です。2001年に私はDrupalを開発し始めました。当時は学生で、自分のために作っていて、大規模なものではありませんでした。使用しているPHPは、当時はまだ新しい技術でした。この開発はあくまでも趣味の領域で、夜や休日に開発していました。
2003年に転機が訪れます。当時の米国大統領候補が、当時の米国では初めてWebを使った選挙活動を行おうとしていました。この大統領候補は、大統領にはなれませんでしたが、後のインタビューで『Drupalを使用した』と語りました。そこから注目されるようになり、ターニングポイントとなりました。

ドリス氏の話に聞き入る参加者

2005年初めてのカンファレンス開催

ドリス氏:2005年に初めてカンファレンス『DrupalCon』を開催したのですが、私はこのイベントのために20~30名が開催地のアントワープに来るのが信じられませんでした。このあたりから、Drupal.org(Drupalの公式サイト)へのアクセスが増えていき、サーバがダウンするほどになっていました。もっと良いサーバを買わないといけなくなったのですが、当時学生だったので、高価なサーバを購入することはできませんでした。
そこで、Drupal.orgにPayPalボタンを設置して、寄付を求めました。そうすると、24時間で一万ドルも集まりました。さらに、サーバをフリーで使っていいと言ってくれる方も現れました。私はポスターを作って、寄付をしてくれた人の名前を掲示して、感謝の意を示しました。

2009年に米国政府CIOからメール!

ドリス氏:2009年には、米国政府がいくつもDrupalでWebサイトを立ち上げ始めていました。ある時、米国政府のCIOからメールをもらいました。私は、米国政府にCIOがいることを知らなかったし、メールは信じられなかったのですが、ホワイトハウスに行きました。そして、既存のDrupalの小規模なWebサイトについて話しました。そうすると、「米国政府の大規模なWebサイトでDrupalが使えますか?」と聞かれて、恐怖を感じつつも「Yes」と答えました
それは、米国政府にとってもオープンソースソフトウェアを初めて使用するというプロジェクトで、試験的なプロジェクトだったと思います。
実は、Acquia社内にオバマ元大統領が来て、従業員に何をしているのか聞いて回ったこともあります。従業員が「APIを作っています」と答えたところ、オバマ元大統領は「APIとは何か?」と聞かれたというエピソードがあります

Drupalサイトが世界中へ

ドリス氏:2016年にはNASDAQ(ナスダック)(※)のWebサイトや、ネスレ社のリージョン・ブランドで4,000ものサイトが動くようになりました。また、オリンピック公式サイトもDrupalで作られました。このサイトは世界中からのアクセスがあり、ダウンすることは許されません。そのことからスケールやトランザクションを扱えることが分かっていただけると思います
また、多言語を得意としており、それも評価されていることがわかります。私自身が多言語の国であるベルギー出身であることもあります。多言語を重要視しており、日本語を含め36か国語をカバーしています
2017年にはAcquia社は10周年を迎えて、DXP(※)に方向転換をしています。Drupalをコアとはしていますが、DXPにも広げていきます。

※NASDAQ(ナスダック)は米国の代表的な株式市場の1つ。
※DXPは「Digital Experience Platform(デジタル・エクスペリエンス・プラットフォーム)」の略称で、デジタル体験プラットフォームで、企業が顧客に優れたデジタル体験を提供するための製品・プラットフォームを指す。

質疑応答タイム

続いて質疑応答タイムです。「どんなことでも聞いてください」とドリス氏。開発者として聞いてみたいことや使う側として気になることを聞きました。

実現したいことや上手くいったこと・こうすべきだと感じたこと

ー質問:一番実現したいことは何ですか?

ドリス氏:コアのモジュールを簡単に使えるようにすることと、作ったコンテンツを他でも容易に使えるようにすることですね。ユーザはコンテンツをCMSで管理しており、フレキシビリティが重要だと考えています。様々な部分とインテグレーションできることが必要だと感じます。


ー質問:上手くいったことや難しく感じたこと、こうすべきだったなと感じることはありますか?

ドリス氏:難しいと言いますか、こうすべきだったと感じることは、開発当初は開発者視点で作ってきたので、マーケター視点では扱うことが難しいと感じられるかもしれないという点があります。今は、マーケター視点で、簡単に扱えるようにという視点で作っています。
また、上手くいっていることのキーワードはヘッドレス(※)です。ヘッドレスという言葉ができるまえから、ヘッドレスCMSについては考えてきました。

※ヘッドレスCMSとは、フロントエンドとバックエンドが切り離されたCMSを指す。フロントエンドで何か変更をしても、バックエンドに影響が出ないというメリットがあり、その点でフロントエンドの自由度が高まると言われている。

セキュリティ面の強み

「セキュリティに関してお聞きしたいです」と質問が!

ー質問:他のCMSと比較して、Drupalのセキュリティ面でのセールスポイントは何ですか?

ドリス氏:米国政府で使用している事例が挙げられます。米国政府が使用しているソフトウェア等のリストが公開されており、そのリストを見るとDrupalは他のソフトウェアよりもはるかに多く使用されていることが分かっていただけると思います。また、30名以上のセキュリティチームで常に改善を続けています
もし、顧客への説得が難しい時はAcquia社にヘルプを求めてほしいです。私達は、Drupalを最も知っていますし、セキュリティに厳しい顧客に対しても使ってもらえるようにしてきたので、手助けができます。


CMS開発にあたって

ー質問:Drupalを作るにあたって何かを参考にしましたか?

ドリス氏:私がCMSを開発し始めた当時にCMSはありませんでした。なので、自分用に作り始めたため、何かを参照して作り始めたわけではないんです。自分にとって最適なものは何かを考えて作りました。他CMSを見ていないからこそ、独自の機能がある点は良いポイントだと思います。たとえば、他CMSはコンテンツはツリー上になっていますが、Drupalはノードというまとまりに入っています。オープンマインドで作れたのが良かったと感じています


質疑応答の後は、弊社製品のDEC CMSのデモに移りました。ドリス氏もDEC CMSに興味があるとのことで、弊社担当者の説明に耳を傾けておられました。

DEC CMSについて説明を受けるドリス氏(手前側の着席している方)

講演を聴いて:
私自身もDrupalを業務で使用しており、他のCMSよりは身近な存在ではありました。しかし、今回開発者であるドリス氏のお話をお聞きしたことで親近感が増しました。中でも「一学生が自分のために作っていた」という話や米国政府CIOやオバマ元大統領のエピソードがとても印象的でした。

最後に、ドリス氏と現地参加のMT統括部CMSソリューション部のメンバーたちでパチリ📷️