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イラスト制作の振り返りと、技術熟達における言語化思案

これは何の記事?

直近1年で特にイラスト技術が伸びたなあっと思ったので忘れないうちに振り返り+言語化をした記事です。(あとおまけで、熟達について思案しています)
これを通して自分なりに編み出した学びの経験と考え方についてシェアできたらいいなぁって思って書いてます。

振り返り(議題:イラスト熟達について)

画像12018年8月
画像12019年11月

18年9月にデッサン教室通い始める

会社のデザイナーさんにイラストを見せて、イラストのレビューを貰って、「デッサン力が足りない」って言われたので近場のデッサン教室へ月2で通うように。
じわじわ観察眼が養われるようになり、描けるようになった。
併せ実際に描くことで、観察眼で得た知識と行動の知識スキーマ構築を行えた。
観察について述べている記事も併せ読み、デッサンにおける価値を認識する。
観察とは何か?デザインにどう活きるのか?
お堅い解説:
強制力のある、確実に描く環境を作ることで描く時間を増やすシステムを構築

19年5月から「平日は2分クロッキー2回」する

最初は20分前後でデッサンに近いことをしていた。
家帰るのも遅かったし、時間の軽減を行いたかったので2分クロッキー×2で確実にこなせる量にした。モチーフはずっと手。
サイトはLine of Action
お堅い解説:
継続性を高めるためのシステム。最初は20分かけていたが「毎日行う」というコンセプトの下、行動ハードル下げるために2分クロッキーへ変更。
デスクPCを立ち上げて行動よりiPadProの方が即実性が高いので購入。以後iPadProと低い達成目標で行動ハードルを少しでも下げ、イラスト制作の馴化を図る。

19年3月から、時折デッサンで学んだ知識を考えながらイラスト制作が行えるようになった

回り込み影や、視線誘導、明度差を活用した技法知識など。デッサンで学んだことを考えながらイラストを描けるようになった。
作品は作っていくが、制作後、簡単なふりかえりを行って次のイラスト課題を決めて次に取り組むようになった。(例:今回は形のバランスが悪くて見栄えがイマイチだった。次回は形に気を付けて制作する)
解説:
毎日クロッキー描くことによる「イラスト描くという馴化」が起きたため、技法知識にリソースを割く余裕ができたと考えられる。
また、デッサンによる実技とフィードバックによる知識増強も大いに関与している。

技術熟達における言語化思案

Q. 今回行った、絵の品質を上げるための行動順は?

1、「確実に描かねばならない環境」を構築する(例:デッサン教室)。意思に依らない絵を描くシステムを構築することが大事かも
2、低いハードルで毎日描く(制作の馴化を促し、少しでもリソースを使わないようにシステムを再構築する)
3、デッサン教室など、絵にフィードバックをくれる環境を構築する(ここではなるべくFaceToFaceの環境が望ましい)

Q, iPadPro+Pencilが高いので買いたくないです。ほかの道はないですか?

A, ここでは「行動ハードルを下げる」ためが目的です。
そのため、今回は高めの先行投資としてiPadPro+Pencilを購入していますが、ドスパラのお絵かき用タブレットでも良いですし、Android用ペンタブでも、紙と鉛筆でも問題ありません。
ただ行動準備と終了片付けを含めるとiPadProより増えてしまう恐れがあります。

iPadPro+Pencil:スリープ解除→(パスワード入力)→イラスト制作アプリ起動→モチーフサイト準備→2分クロッキー×2→スリープ
Winタブレット(スリープ復帰):スリープ解除→(パスワード入力)→イラスト制作アプリ起動→モチーフサイト準備→2分クロッキー×2→スリープ
Winタブレット(OS起動):OS起動→(パスワード入力)→アプリ起動→モチーフサイト準備→2分クロッキー×2→OSシャットダウン
Android+ペンタブ:スリープ解除→(パスワード入力)→板タブレット取り出し→板タブレット接続→イラスト制作アプリ起動→モチーフサイト準備→2分クロッキー×2→スリープ
紙とペン:紙を必要分用意→ペン・消しゴムを用意→タイマーを用意→(スマホでモチーフサイト閲覧)スリープ解除→(パスワード入力)→モチーフサイト準備→2分クロッキー×2→スマホスリープ→消しかす片付け→タイマー・ペン・紙をしまう

上記のようにクロッキー時間は変わりませんが準備・片付けの時間を含めると行動ハードル差が発生します。
iPadPro+Pencilで準備~クロッキー~片付けをして、初期:10分、慣れ:8分程度です。ほかの場合はOS起動や準備片付け手順増加などの影響で増えます。
目標を達成するための1つの方略として「行動ハードルの低減」は有効ですが、お金も大事です。自分に合った方略をぜひ探してください。
コストについては以下サイトをご覧ください
リンク:金銭、時間などの「コスト」の種類【コストのフレームワーク①】

Q. もっと効率のいい方法で学びたいです。他に方法はないですか?

A. 行動して結果を出さなければ熟達はありません。行動0に、いくら効率数値が高いものを乗算しても0です。
そのため「徹底した”意思に依拠しない”環境の構築」と「馴化による心的リソース低減」をコンセプトに行動を構築し、「一度行動システムを作り出し、それを調整していく」方略を取っています。

エンジニアの「効率の良い学びを学ぶ、いろいろ調べて一番良いものを探す」より「遊びながら(試しながら)プログラムを組んだり、SDK・ツールを触った」人のほうが技術期待値が高い場合や、同様にイラストレーターの「色々調べて技法を学ぶ、講座や解説を見まくってから描く」より「ただひたすら描いていた」人のほうが結果を出している期待値が高いという、行動プロセスと結果の違いは、今井むつみさんの書籍「学びとは何か」の中に記述されている以下に依拠できると示唆することができます。

効率よい学びは確かに大事だ。しかし、それはシステムの枠組みを素早く立ち上げ、後でゆっくり修正するという学びの過程の一部でしかない。効率よい学び自体が、熟達者のすぐれたパフォーマンスを可能にするわけではないのである。

学びついて詳細を知りたい方は以下の書籍をおススメします。子どもの言語学習をベースに学習と熟達について記述されています。
学びとは何か-〈探究人〉になるために (岩波新書) 今井 むつみ

Q. 他の人も「ひたすら描く」ことについて理由を述べてくれたらいいのに

A. 実はそうとも限りません。これは認知心理学と行動経済学の論点から示唆できます。認知心理学からは「言語隠蔽効果」、行動経済学からは「自前主義バイアス」です。

認知心理学の「言語隠蔽効果」とは「言語化が難しい場合、説明しやすい、想起されやすいなどの特徴に言語化が引っ張られてしまい認知と言語に歪みが生じる」ものです。
技術の熟達・作品の創出は多くの経験や知識によるもので1つの事が出来ればよいとは限らない世界です。
そのため分かりやすい部分を理由として考え・伝達してしまい、本当に伝えたい事柄や本質を伝達することができなくなります。
また、それにより知識スキーマ構築レベルの違い(熟達者:それだけでないことを知っている、初心者:教わったことしか知らない)で、問題が発生する可能性が多分にあります。が、説明は割愛します。説明が必要な領域が広がってしまうので。

次に行動経済学の「自前主義バイアス」です。
自前主義バイアスとは「自分たちが発明したアイデアやモノでなければ価値が低い」というバイアスです。
「誰もが持っているが、他人のものは使いたくない」という観点から別名「歯ブラシ理論」とも呼ばれています。

自分で発見することで価値を感じ、他人から丸々教授されたものは相対的に価値が低いと考える思考です。
大学の「自分で考えて発見、解決する」や、学びの中(例:デッサン)「観察して、自分で気づき発見を得る必要がある」は、このバイアスの活用を示唆できます。
併せ行動プロセスも自身の行動なので把握しやすく、知識スキーマの構築がより促進されます(行動と知識が結びつかないと、使わない丸暗記した英単語のようなものになる)。

上記が主な2点です。
あと、過度な一般化による当てはめも問題に挙げられます。
正確にものごとを考えるにはどうしても「ユースケース(活用例)を想定して、コンテキスト(行動プロセス)を正しく理解」する必要があります。

「行動」と「期待効用の程度」の乗算がモチベーションになるのは心理学的に説明できます。
しかしあーだーこーだ考えても難しいことばかりなので、「行動しないといけない強制力の環境」を構築して行動した方が、なんだかんだコスパが良い、という身も蓋もない話です。

あとこの質問の最大の問題として「人間は理由を欲しがる」という点です。
TEDトークの「サイモン シネック, 優れたリーダーはどうやって行動を促すか」では理由が必要な理由を以下のように述べています

言い換えれば 外から中へのコミュニケーションを行っているとき 確かに大量の複雑な情報を理解できます機能やメリットや事実や数値などです
しかし行動につながりません
中から外へのコミュニケーションを行っているときには 行動を制御する 脳の部分と直接コミュニケーションすることが出来ます
言葉や行為によって 理由付けは後からすることができます 直感的な決定はここから生まれます
時には誰かに あらゆる事実やデータを伝えても 「細かい事実は分かったけど どうも納得感が得られない」と言われることがあります
どうしてここで「感」なんでしょうか
理由は脳の意思決定をする部位は 言葉を扱えないからです
せいぜい「分からないけど納得 “感” がない」という言葉なのです
時には胸の内一つとか 魂の導きに従ってとも言いますが でも別に頭以外の部分で 意志決定するわけではありません
すべては大脳辺縁系で起きています 辺縁系は意思決定を司り 言語は担当しません

「心理学ではなく生理学」と述べている通り、意思では覆りようのないプロセスだと示唆しています。

人はどうしても理由が欲しいと渇望します。そして、それの納得の程度で言論の良い悪いなどが、原則ヒューリスティックを用いて判断されます。
だからこそ詭弁だったりストローマン論法だったり、「納得感を利用した論法」が発達したと思われます。
まぁ、でも欲しいもんは欲しい。しゃーない。

少し脱線しましたが、述べたいことは

「ヒトの熟達は行動をベースとしたものなので、効率は無視して一度行動する。そこから行動を効率化するのが結果を出しやすいかもしれん」

です。

参考文献

書籍
学びとは何か-〈探究人〉になるために (岩波新書) 今井 むつみ
ファスト&スロー (上) ダニエル カーネマン
基礎から学ぶ認知心理学 -- 人間の認識の不思議 (有斐閣ストゥディア) 服部 雅史

記事(すべて:最終閲覧日2019年11月10日)
観察とは何か?デザインにどう活きるのか?
優れたリーダーはどうやって行動を促すか - TED
第5回 「一般化のワナ」に注意しよう

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