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OSJ KAMI100 参戦記(後編)

"OSJはエイドは水しかないよ"
"もうすぐエイドはざっくりだよ"
"なんだかわからないけどキツいらしいよ"

とにかくいろんな話だけを聞いて妄想を膨らませた
OSJのレース。この目で確かめるまでは死ねん!
いざ激走の後編へ。

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いざ出陣!

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さすが兵庫県の奥地。
とても静かで清々しい朝を迎えました。
少し目覚ましの運動をした後、足にテーピングを施し、初投入のガーニーグーを足指に刷り込んだ。
レイヤリングは
ミレーのドライナミックメッシュにTシャツ
ファイントラックのラピッドトレイルアームカバー。下はT8のアンダーにanswer4のショーツ、ソックスはTFオリジナルのメリノウールタイプにシューズは信頼のasicsフジライトとトラブーコMAXを準備していたが、MAX一本で行くと決めた。

会場へは、宿の方のご好意で8時に宿前に集合し送って頂く事となった。
ここまで良くして頂いてDNFは出来ませんね!と皆で気合を入れて、一同会場へと到着した。

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会場は既にたくさんのランナーで賑わい、これから始まるであろう長旅に少し武者震いがした。
テントに着くと、今回光栄にもテントを共有する事となった2020KOUMIの優勝者黒田選手とご挨拶

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ここでテントに戻ってくる時の話をしていると、どうやら2周目は帰って来ないと。一瞬なんで?と考えたけど、よく考えたら補給食もワンウェイだと相当分は背負って走るし、着替えはおそらく日が暮れ出して気温も下がるであろう3周目で良いのでは無いかと。熟練者の何気ない当たり前の会話も、こういった経験の少ない自分には目から鱗だった。
急遽2周目戻らない計画に変更し2周目用に分けておいたジェル等は全てザックに詰め直した。2周目後半の冷えが読めなかったのでショーツのポケットにウインドシェルを丸めて待つことにした。
バタバタと準備変更してスタート地点に向かうと続々と周辺に人が集まり出した。

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SNSで見知った方々やリアルは初めましてな方々と談笑。こういった時間もレースの醍醐味。
各有名選手の紹介が終わり、いよいよレースがスタートする
今回の目標は20時間切り、2ケタ順位。
悔いの無いよう後は走り切るだけ。

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1周目は挑戦的に

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スタートは比較的前の方を取るようにした。
事前情報でスタート開始直後、ゲレンデの長い登りを終えると中々テクニカルなトレイルがあり走れないとの事だったので、渋滞に巻き込まれると後々面倒だと判断し速めのパワーウォークと斜度によっては走りを織り混ぜ、少しでも前方に食らいつく。
1周目もしくは前半は絶対ペースが速くなるので巻き込まれないようクレバーに、がロングのセオリーだと理解してるけど今日は今年のターゲットレース。
初っ端からガンガン離されるのもなんか違う。
ゲレンデを走り切ると一気に細いトレイルの下りが始まる。予想通りゴツゴツと足の多い路面で前方のペースが落ち始め、これも事前情報にあった4点支持の登りで停滞が少し起きてた。ゲレンデ区間を少し頑張ったのでさほど詰まらず通りすがられたけど、上がった息を整えるにはちょうど良かった。

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トレイルを進むと、ジリジリと登りの強度が高くなってくる。周回において前半のボス、鉢伏山だ。
中々近づかない山頂を前に、木段をひたすら登りたどり着くと、深い山々まで見渡せる、よう少し紅葉していれば"超"絶景だったろうなと思わずにはいられない素晴らしい景色が現れた。レース中であったので脚を止めるわけにはいかなかったが、束の間の景色に癒されエイドまでの長い下り区間に突入する。

鉢伏山からの下りの木段は中々にイヤらしく、段差がまばらなうえに滑り止めに横溝を貼ってあるのが余計目の錯覚を誘発しリズムを作るのが難しいし夜になれば余計にペースが落ちる所だろう。
その後もしばらく続く下り基調のトレイルを過ぎると出ましたよ

『もうすぐエイドだよ』

しかし距離的にまだ先のはずなのにえらく早いタイミングだな、、、これが噂のOSJか!?
なんて考えてるとテントが見えた。
どうやら2か所のエイド以外にも小エイドが増設されているらしくその案内看板だった。ちゃんとマップには載ってたが確認不足で知らなかった笑
比較的早いタイミングで特に減ってるものも無かったので、そのまま第一エイドとちのき村を目指す

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とちのき村に近づいた辺りで近くにいたランナーが

「ヤバいわー、突っ込みすぎてるー!」

チラッと時計を見るとスタートから約1時間半。
そして間を置かずに第一エイドが見えてきた。

「おうおう、これはホンマに突っ込みすぎやな」

この時点で想定していたペースより30分〜1時間も速く着いている。
今回のKAMIのコースはエイド感覚が時間比率で1:1:1に設定されてるとの事。
つまり第一エイドに1時間半で着くペースだとトータルで4時間半となり、6時間設定からは大分速い。
これは残り2周と3分の2を残して想像以上にハイペースで辿り着いてしまった。

第二エイド兎和野高原までは上り基調になるが、比較的走れる斜度が多く、瀞川氷ノ山林道を抜けると細かくターンのある少しテクニカルな下りが2〜3km続いたりとペースを落とそうにも落とし所が少なく、、、と言うか周りが手を抜かない笑
自分も足と体力と相談しつつできる範囲でペースを維持することにした。

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この方が前にいる時点で明らかにオーバーペースだとは薄々気づいていたけど、自分の力試しもしてみたかった。

案の定、第二エイド兎和野高原に着くと3時間ちょっと。思ってたより大分早く来れてるが良いペースで飛ばしたせいか中々の疲労感。これは後2周あることを考えると少し冷静にならねばとグッとペースを落とす事にした。

幸いにもここからは後半のボス、瀞川山。
比叡山の横高山を思わせる延々と続くのでは無いかと思わせるつづら折れの登りが始まり。
これはペース調整に良いと、思い切って全て歩きに変えた。瀞川山は面白いルートで7合目まで登ると途中林道をつないで8合目を横ばいで通り過ぎ9合目からすぐ頂上と横に長い登山道だった。(下記地図だとちょうど右回りに降って登るルート)

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※やまもり村岡HPより

長い登りを終えて相互通行部になる瀞川氷ノ山林道から瀞川山山頂を抜けると、スタート地点であるハチ北スキー場が見渡せる。ここまで来ればあと少し。

2kmほどアスファルトの下りが続くラストスパート区間。バチバチ行きたくなる所だけど、降りのダメージは馬鹿になんないんのでなるべく傾斜を転がるように足を引き上げながらまだまだ先は長いぞと、足を温存させながらも気持ちよく降る。そして無事1周目を4時間50分台で帰ってくることが出来た。

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2周目は計画的に

※ここら日暮れとランニングハイにより殆ど画像ありません笑。あとループなので書くことがなくなって行きます汗。

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このカレーもう少し味わって食べたかった(涙)

1周目を終えて数人抜かれたが、コースの攻め所、抜き所が見えてきてたなと特製丹波牛のカレーを頂きながら総括していると。

『ほらほら!もう行くよ!』

と黒田選手。
いやいや!まって!追いかける必要は無かったけども何となく置いて行かれるのはヤダなと笑
残り半分あったカレーを強引に胃に流し込むと、予定通りテントはスルーして2周目へ向かった。

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随分先行されたなー

2周目のペース配分は1周目より確実に落とす必要があるし3周目のことも考えると5時間半からかかっても6時間か。あわよくば3周目はそれよりも速く回れるのが理想だなと。
掻き込んだカレーが胃で暴れてるのかだんだん胃が気持ち悪くなる。ペースを上げたかったけど、
ゲレンデもどこを走ればどれくらい差がつくのか、歩いてもさほど変わらないのはどこか1周目で把握してたので、自分の武器と思っている歩きを最大限使って苦手な走れる区間に向けて足を温存しつつ登り切った。
最初のトレイルに入ると日陰は徐々に空気が冷たくなってきているのを感じたけど、1周目を予定より速く回ったのもあり、まだまだ陽の光が照っている。おそらく後半の兎和野高原辺りで日暮れを迎えるのでその辺りで一度装備変更しようと予定した。

トレイルを抜け鉢伏山に取り付く辺りで、妙に山頂付近が賑やかな事に気付いく。
どうやら地元の小学生の校外学習のようだった。

「頑張って下さーい!!!」「頑張れーー!」
(ゼッケンを見て)「鈴木さんですね!名前覚えました!」「凄いですね!頑張って下さい!」


名前は絶対忘れるだろうが笑、凄いテンションで応援してくれてこちらも楽しくなる。ほぼ頂上付近までこのウェーブが続き、カレーで苦しんでいた胃もいつの間にかエネルギーに変わったのか回復していたので苦しい登り区間もあっという間に過ぎてしまった。

前半で目の錯覚を誘うと感じた木段の下り

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画像はネットで拾ったモノ。

やっぱり薄暗くなるとよりテクニカルになるのか、前を走る人のペースが落ちるのでガンガンプッシュして譲ってもらう笑。走れる所ではどうしても負けてしまうので得意な所で飛ばすしかないのだ!

とちのき村の手前辺りで流石にトレイルでも目が効かなくなって来たのでヘッドライトだけ装備。
気温も日が陰ってくると共に下がって来た。特に稜線で吹き付けてる風がすこし冷たい。お腹の冷えも感じだしたので、ウインドシェルを羽織りハラマキ代わりにお腹に巻いた。

肌に当たる風感じや温度、山の中に居る静けさ。
TDTで走った青梅の山を思い出す。
あの時はトレイルに入るとどんどん足が軽くなって、日も跨ごうかと言う時間なのにエネルギーが溢れてくる感覚があった。
あの時ほど劇的ではないけど日が落ちて暗くなるごとに、確実に、ゆっくりと、体に満ちてくる感覚があった。

「今日はもっと行ける」

その手応えを感じだした辺りで、瀞川山から2度目のゴール地点が顔を見せた。
再び長い降りだけどまだ一周残ってる。
フルマラソンで言う30km地点のイメージ。
本番は3周目。
勢いよく何人かに抜かれたがやらないものはやらないと、負荷なく、足を抜くように転がるようにゴール地点へ向かった。

2周目、5時間42分。
すこし早めだけどほぼ運行表通り、まさに定刻での到着だった。

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3周目は情熱的に

2周目を終えるとすぐに装備の補充と着替えの為テントへ向かった。走っている間に考えていたが、この気温なら下半身に寒さは感じないのでロングパンツは無し(履き替える時間も勿体無いし)上はTシャツを脱いでドライレイヤーの上に直接answer4のグリットフーディを着てその上から薄手のウインドシェルを羽織った。
コースに出る前にすこし暖かいものをと、エイドにあったコンビニおにぎりの海苔だけ外して熱いお茶に掘り込んでお茶漬けにしてすこし温まると、フラスコにお湯を入れてもらいラスト3周目へと旅立った。

最初のゲレンデを登り出す。
嘘みたいに足が軽い。2周目の始まりと足の感覚は大して変わらないのでは?と思うほど。おそらくランニングハイなのだろうか、でもそうであるならばどこかでハタと電池切れになる時が来るのか。いや、これが最後だし出せるだけ出し切ろう、悔いのないように。

鉢伏山への登りに取り掛かろうとした時、会場の方から大きなアナウンスが聞こえた。
え?まさか??そう思って時計を確認するとスタートから12時間経っていない。
そう。どうやらトップの選手がゴールしたようだ笑
まさに異次元!これから3周目なんですけど!?
と心の中でツッコミを入れつつ登りに取り掛かった

気温が下がった為のウエアの変更だったけど、流石に登りはヒートアップしてすこし暑い。が一度走れるポイントに来ると、荒メッシュ+グリッドが汗を逃しつつ適度に保温してくれてコレは大成功だった。

鉢伏山からの錯覚木段もヘッドライト+腰ライトの特急モードで昼間と変わらないペースで降りる。 

この辺りくらいから、1人、また1人とゾンビランナーを拾っていく。
これよこれ!2周目でバンバン抜いていったランナーをジワジワと拾っていくこの爽快感!!
登りで後ろにピッタリつくと、息を上げてお先にどうぞなポーズ。なんだか自分が強くなった気分になれるボーナスタイム。

2周とも苦しめられた瀞川氷ノ山林道も短い歩きを挟みながら少しでも速く前にとプッシュし続けた。

そうして第二エイドについてゼッケンチェックを受けている時に、これてっ今聞けば順位わかるんじゃね?

『すみません、僕って今何番手ですか?』
「ええ〜と、、33番ですね」
『え!?えええええ?!』

まさかの好順位に興奮を隠しきれない笑
エイドの方が言うにはすぐ前に2人いますよと
狙えってことですか?いやーさっきすごいスピードで抜かれた人も入ってるし厳しいかな〜。

そう思って瀞川山を登り始めると少し上にライトの灯りが見える。思ったより射程圏内!
もう体を持ち上げる筋肉は疲労困憊、少しでもペースを落とさないように深めに前傾を取り足を引き上げるイメージ、お尻を使って重心を移動するように。そして7合目までに1人捕まえた。現在32番手

瀞川山を登り切り、少し走ると見えてくる長ーい直線。走りるか歩くか何度もムチを入れながら駆け抜けた瀞川氷ノ山林道。その先500から800か、ヘッドライトが2つと、その先に1つ見える。

足は?『もう無理だけどやるんだろ!』
気持ちは?『まだまだコレからでしょ?!』

この距離なら残り8kmほど。
20番代を狙えるかもしれない。
このレースのために約半年、自分にしては真面目に練習して来た。本当に最後の最後、悔い残さぬように。

9合目標識から瀞川山山頂までの登りで1人追いつき後ろに張り付きパス
山頂を超えると本当のゴールである会場の明かりが見える。
ここからは硬いアスファルトの下り。
かなり足に響くけど何も残す必要はない。
ひたすら前を追うと一つ明かりが見えた。チラチラと後ろを確認しているがペースはそれ以上上げられないみたいだった。
何とか食いしばって走りここで1人パス。よく見ると兎和野高原エイド手前でぶち抜かれたランナーだった。

この時30位。
前に1人見えるが先ほどのランナーをパスするのに結構体力を使ったので追いつけるか。
ラスト手前の小エイドを過ぎたあたりからもう一回エンジンを掛け直す。
登り坂を詰めていくとヘッドライトに気づいたのかチラチラと後ろを確認しまた走り出す。コレは逃げ切られる。
そこで何を思ったか私。
ヘッドライトの電気を消しました笑
月明かりだけでしばらく追いかけましたよ捕獲者のように。マジで。
林道出合い付近まで来るとようやく射程圏内。
ここからヘッドライトもHigh、腰ライトもHighの特急モードでスイッチオ!残りの力を振り絞って走る!ポラール を確認すると4分30は切ってましたねバカですね。

そして残り2kmくらいでついに並ぶ!

「もう無理!負けた!」

横のランナーから聞こえた瞬間
何を思ったのでしょうか?

「諦めんすか!?ここで差がつきますよ!?」

いやーめちゃめちゃアホでしょ笑
さっさと抜き去ればいいしそれが出来ただろうにこの勝負があっさりつくのはつまらないと言わんばかりに話しかけてしまった。もとい煽った。
アドレナリンの成せる技。楽しくて仕方なかったんでしょうね。

「コレで最後!お互い出し切りましょ!」

そう言って先に走り出した。
ほんと、3分台とか出てたんじゃなかろうか?
痛みも我慢して走った。
しかし相手の方が余力があった笑
あと1kmくらいで見事に千切られました、、、
が、前にもう1人見えるじゃありませんか、、、
このペースならゴールギリギリで抜ける!!
まだ挽回できる!

ていうか何が無理やねん!めっちゃ余力あるやないか!くそ〜いらん事言うた!ゴール前まで競り合えるとか思ったのになんであんな残ってんねん!

めちゃ本音です、実際そう思ってました笑
それでも諦めず走り続けるとまさにゴール前、フィニッシュを確信したであろう瞬間に一気に残りを振り絞ってダッシュ!

『あああーー!!やられた!!』

ランナーの横を通り過ぎた瞬間悲鳴のような叫び声が聞こえ30秒差で29位をもぎ取りました

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三味線引いてた戦友とパシャリ(古

ゴールした瞬間はとにかく一歩も歩きたく無くて地面に転がり込みました。
3周目、5時間48分と2周目と数分差
トータルで16時間50分38秒 
こうして、僕のKAMI100はゴールを迎えました。
本当に本当に楽しい時間でした。
最後は順位狙ったくせに頭の悪いことしましたが
目標である20時間切りも大幅に上回り、二桁順位も通り越して上位10%に入ることが出来ました。
入賞を狙うとここから更に異次元な時間差がありますが出来過ぎの結果にひとまず喜びを噛み締めることにします。

ここまで読んでくださった皆様。
ダラダラと長い振り返りにお付き合いいただきありがとうございます!
素晴らしいホスピタリティ。
エキサイティングなコース。
宿のご飯も美味しいし、KAMI100気になってる方は
来年是非エントリーして下さいね^_^

ー完ー



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