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比叡山International Trailrunning Race 2023 参戦記(後編)

写真/井寄さん

いよいよ迎えた当日朝
前日寝る前にprローショを塗り込んだ
いつものルーティンのご飯を
Twitterで見かけフルマラソンの時に試して良かった赤飯に変え、本番までにゆっくりお腹に貯めていく感じで食事を摂った。(Twitterの叡智に感謝)

今回、現地までの移動方法に苦慮していました。
地元なので距離的には近いのですが、ロープウェイの始発時間が微妙に遅く、スタートまで出来るだけゆっくり準備したいと思っていたのでもっと早くつける方法を考えていましたが、ボッチ&シャイボーイな自分には他に方法もなく諦めかけていた時、なんと女神の如く、何度か比叡山の試走もご一緒した今回東京から参戦される黒田さんが、これまた犬猫通信でもお馴染みのナミネムさんと相乗りさせて頂けると連絡が!!
まさに渡りに船!!

この辺りから運が回ってきていたのかも知れません。

朝の6時に大津駅に集合し
いざ根本中堂へ

待合室へ行くと既に猛者達が準備を始めていた。
知った顔も沢山あって緊張感の中にも和やかさがあり、比較的リラックスして準備ができた。これも声掛けてもらって早く辿り着けたからこそ。感謝!!

時間が少しづつせまり
以前からTwitterでフォローさせていただいた慶太さんや、関東では伝説的なヒロミチ兄さんとお会いしたり、レースでしか味わえない出会いやコミュニケーションに少し気分も上がってきていた
(それまでずーっとため息ばかりついてました、、、)

まあ緊張するのは自分への期待の裏返しらしいので切り替えて!

50mileの選手が50kmの関門を抜けた先のために使うデポに荷物を置くといよいよスタート地点へ。

ゲートにたどり着くとグッと緊張感が出るし
レースあるあるの極みと言うか
50mileにこれから挑むどの選手も遥かに自分より強そうに見える笑。実際強い人ばかり。

いつもお世話になっている
SAIさん、アラタクさん、黒田さん


『いよいよだぜ』

『まじで走るのかよ』

『いや、やるだけやった』

『後は楽しもう』


目を瞑り胸に手を当て

やれる、完走できる



カウントダウンが始まる。

3!  2!  1!  ファーーン!

スタートーーーー!!


始まったものは仕方ない!後は楽しむだけ!

始まって早々の登りでSAIさんと会話し、しばらくは渋滞が続くのと得意の下りで詰まる可能性があったので、最初の長い下りがはじまるまでに少し前に出る事に。
いきなりの登りで少しペースを上げた影響か早くも汗がにじみ出てきた。
当日は昼前くらいから雨が降る予報だったが、少しずれたのか湿度と気温が高いまま、しばらく降る気配はなさそうだった。いつも走り始めは調子がなかなか上がってこないタイプだと認識しているが、渋滞を避ける為とはいえ心拍を上げることになり、先が思いやられるスタートとなった。

最初のプッシュで上手く前方へと抜ける事が出来たら、後は数回の試走で掴んだペースを維持しつつしばらくは流れに身を任せる。


この比叡山50mileを攻略するにあたって
何より意識したのは各エイドでの通過時間。
レース経験の乏しい自分は、今まである程度ペースは考えたりしてたものの、基本頑張る!笑。
みたいな走り方だったが、今回は話が違う。
完走出来るかどうかすら危ういレースに挑むには、当然それでは足りないと色々考えた。

こらが無ければ完走してなかったと思う、、、

そこで今回Twitterで知り合い試走もご一緒して頂いたひろたかさんがタイムスケジュールをアップしてくださっていたので(神!!)それをゴニョゴニョと

Aプラン想定で記入

こうやって高低図に記入してゼッケンの裏側に仕込んでいつでも確認できるようにした。
方法は違えど、この高低図を持ち歩くアイデアもSAIさん黒田さんから頂きました!神々!!

〜〜
第一エイドのロテルドでAプランより5分落ちだったけど、でも想定内。むしろ速いくらい?
行きの車内でナミネムさんとも話していたけど、前半は2時間45分くらいのペースで、後半走れるパートにしっかり足を残す方がよいのではないかみたいな話をしていたからだ。

エイドでは特にすることはないと思ったけど
気温の高さと身体の熱の籠り具合からその当時ほどではないが2019年に参加した50kmの事を思い出し被り水をする事に。

もうダバーッと
頭からいったよね

熱が抜けて軽くなる感じがしたので天候が崩れるまでは毎エイド水を被ろうかと考えながら直ぐに日吉東照宮へのトレイルに突入した。

少しの間、走りやすいトレイルが続く区間
しばらくご一緒させてもらってたナミネムさんはここでギアを上げて颯爽と前に消えていった。
やっぱフォームが違うなぁーカッケェ。

この辺りから前後の感覚がばらけだしてきた


竹村くん撮影、このすぐ後だった、、、



決して飛ばしてる感覚はなく抑え気味ですすめていらつもりだったけど、ガレた下りが多くなるあたりから前が詰まりだしたので何人かパスする。
心拍こそ高い(これは平常運転)けど調子は悪くない。

そう思った矢先。


『あっっ!! 』



ちょうど腰くらいの登りを通り過ぎるあたりで足が上がりきらず躓いてしまう

これは顔面コース!!

それだけは!!

怪我でDNFとか1番最悪や!!

走馬灯のように考えが巡った


ガザザザザザッッ!!

スピードが乗っていた上に段差手前に躓いたので受け身を取る暇もなく、咄嗟に右肘を地面に押しつけて体を庇った。

痛てぇ

ダラダラと流れる血

他は?

うん、大丈夫。

ちょっと(大分)擦りむいただけ

誰にも見られていない(これ大事


傷口は少し拭ったくらいでは血が止まりそうになかったので固まるまでそのまま行く事に。
スタッフに止められたらまた考えよう。

冷静でいたつもりだったけど思いのほか動揺していたのか、コスプレエイドで水をかぶるのを忘れ、そのままもたて山に突入してしまった。
途中暑さもあったが試走の経験から、ここは走らなくても予定ペースだとたどり着ける事は分かっていたので、淡々とパワーウォークで足を進めた。

中間地点、根本中堂へ到着。
タイムは2時間44分54秒。
バッチリ過ぎるタイム。JRげんや。


エイドに着くとやっぱり血で赤くなった右腕を心配されるが「カッコいいでしょ?」と平気なフリをして水分を補給して頭から水をかけてもらい直ぐに後半30kmへ。

エイドでの時間は人生の滞留時間とは誰が言ったか。ここはレースしなくても常にイメトレできる部分なので何が足りなくて何をすべきかはエイドで考えない。なので毎回エイドで数人はパスする。走って1分縮めるよりエイドで1分サボらない方が圧倒的に楽ですからね。

いざ後半横高山へ

比叡山のボス的存在横高山

stravaより

普段は右の一般道?を通るのですがレースの時は
途中、青龍寺に向かって横高山の見えない麓まで一度下ってそこから頂上を目指す。
この取り付きは向かう長い下りで少し異変が、、、
根本中堂で浴びた水で脚に塗ったprローショが水に溶けたのかそのまま靴の中まで入ったようで、下りで一歩踏み込むたびに脚に巻いた捻挫防止のテーピングが剥がれ出す感覚が、、、、
うわー最悪やー
踏み込み方や足のつく場所を意識してみたけど、ズルズルとどうにもならなかったので、その時点で諦めました(笑)

横高山登り前の川にたどり着くと
アドバイス頂いてた通りにここで追いprローション。
塗るとスーッとして気持ちいいし何となく足が軽くなった気がする。
そのおかげか苦手意識のあった横高山も足が終わった方々を尻目にするするとせりあい地蔵までたどり着いた。ここで携帯していたグランフォンドウォーター+アミノ酸の粉をボトルに入れフルーツを口にかき込んだ。

ここでもA予定より10分遅れくらい。

横高山過ぎたあたりから復調の兆しを感じた
調子良い時ののロングのパターンに似てる。
足もしっかり動くし得意の登りで抜くことはあっても抜かれることもないし、かなり順調な手応え。

仰木峠を越えたあたりだったか、この辺りまでに胃腸トラブル?でダウンしてる名取さんに追いつき少し話した後、その先を言ったあたりでsaiさんやぺぺさん(ここで初めましてでした)に追いつく。
やっと知ってる人に会えてしばらく談笑しながら走る。
何となく登りが辛そうだったけど流石の下りではスルッと抜かれたり。パラグライダーを過ぎて今回変更があった迂回する下りの林道を抜け南庄のエイドワークをいつものごとく素早く済ませるとsaiさんとはここでお別れ。

ここからは横川に向かって走れる長い区間が続く
1番サボりの効かない自分の苦手なポイント。

洋さんの応援めちゃくちゃ沁みた

ある程度出力したまま走り続けるのが苦手(だと思っている)なのでchickenontuesdaysよりテントゥエンティよろしく走り6割速歩き3割1割息整えでひたすら動きを止めず走り続けた。

ここで榊原さんやその先でアラタクさんに追いつくも、お二人とも足攣りで思うように走れず厳しそう。
この時点で榊原さんに会えたのは良かった
タイムスケジュール的にも10分前後落ちからずっとキープ出来ていたがまだまだ半分過ぎたあたり。
先の長さと過酷な前評判からまだまだ不安は拭い切れなかった状態だった。

「おっ!来たねー!調子良さそうだね!この時間でこの位置なら行けるいける!!」

何度も試走ご一緒したり不安で直前の調整相談したり、今回の挑戦に至るまで何度も助けてもらった方の爽やかな笑顔とポジティブな言葉にエネルギーをもらい、自分の調子の良さを改めて意識する。

いいぞいいぞ


少し雨も降り出したので、アームスリーブを捲り上げる。


40km地点ほんま楽しそう笑

途中残念ながらリタイヤされた名取さんと西村チャンプが応援しながら根本中堂に戻ると言う離れ業に何度か出会うが、たまたま速歩きモードの時を狙って現れるので出会うたびに

「歩き過ぎやろー笑」

「さっきも歩いてたなぁー」

と煽られる笑。
いや、今は歩きのタイミングーー!と爆笑しながら去っていくのが上の写真である(名取さん撮影)

この前後あたりかな、、、
以前コーチングでもお世話になった荘司さんに

「ここで歩いてたら間に合いませんよ!」

と何やら不穏な言葉を残して走り去っていった、、、

あれ?もしかして林道でペース落ちた??

おかしいな?

前年10時間切って完走した荘司さんが時間見誤る?
不安に駆られつつも少しペースを上げて追いかける。
45km地点6時間25分。んん?
横川エイドに着いたらなんなら少し巻いて着いた笑
あれ?騙された??
少しホッとして頂いたランウォークエイドでのフルーツポンチがあまりにうま過ぎてリアクション褒められた。2杯もらってお願いして3杯目貰おうとお願いしたら3周目辿り着けたらね!とお預け、、、よっしゃ帰ってくるで!と根本中堂に向けて出発。

ここのクダリの林道はミックさんのアドバイスからも、なるべくしっかり走りたかったのでキロ5分切りで駆け抜けた。まだまだ走れる。

50km地点手前最後の登り。
カッコよく撮ってもらおうと
キリッとしたら辛そうに写ってて泣く

登りはスピードを意識した全歩き。
時計を見る感じ50kmの関門にはギリギリ間に合いそう(と思っていた)

50km地点。
ここで初めて意味をなしたデポ。
時間短縮の為に予備のソフトフラスクにスペシャルドリンクを準備したものとandoをRushにすぐに押し込みゲートへ向かう。


デポバックの大福をもぐもぐしながらラストスタート

7時間9分。

出来過ぎ。
なんならまだ30km走るつもりでこのタイムはかなり調子が良いはず。残りは横高山もショートカット出来るし少し見えてきた?
ゲートでは50kmを走り終えたナガノさんやアカイさんに見送られ「ウィニングらんや!」と声かけられるも、まだ自分の力を信じてないので首を傾げつつ茶化して出発した笑


横高山への迂回路。雨が目に入って細い目が余計細く笑

雨が強くなり出したが、まだ暑さを感じていたのでレインは着ないまませりあいへ向かった。

途中忘れてたので境内の歩行区間でprローションぬりぬり。
雨で流れそうだったけどおまじないも込めて。

ここから横高山までの間でなぜか勘違いが起きていて、あれ?あと3時間と何分かで30km??とここまで時間しっかり見てきたのに少し集中が切れてきたのか1時間勘違いして焦ってスピードアップ!
横高山の取り付きでナミネムさんに追いつき教えて貰うまで気が付きませんでした笑。

気温が下がってきたのか自分の調子もドンドンよくなって、1周目よりも足が進む。
横高山の山頂あたりでナミネムさんと別れると
前にいるらしいひろたかさんを追いかける事に。
追う余裕あったんだなと今考えると思う。

順調にすすみ小野山あたりで遂に追いつく。
「西さあーん」

『だれだれ??』

「ゲンヤでーす」
「予定通りに進んでます?」

『このペースなら完走は大丈夫かな?』

そんなやり取りをした記憶がある。
タイムテーブルの作成者との合流は精神的にかなりプラスになった。
ここからは着いていければ完走間違いないと思っていたけど、何やらひろたかさんも潰れ気味?僕がランニングハイ?ちょっとペースが噛み合わなくなってくる。

少し自分を信じてみようか?

ここからなんと前に出て完走から記録に挑戦してみたくなった。

無謀にもトレインを離脱してひろたかさんとは別れその先を進む事にした。

雨が強くなり出しパラグライダー場からの下りがもはやアドベンチャーレースみたいだったがおたふくグローブが大活躍してロープにしがみ付きながらもはやグリップなど期待出来ないぬかるんだ急な坂道をスライダーの様に降りた。

降りきったあたりでスタート前お話しした慶太さんに出会う。レイン?を反対に来て雨を防ぎつつ背中から熱を流す独特のスタイルに経験値の凄さを感心しながらペースを引っ張ってもらう。

南庄のエイドを抜けたあたりから慶太さんには離されてしまい、動きに重さが出てくる。
これは雨を浴び過ぎて冷えてしまったかな?と
レインを着るも中々ペースが戻ってこない。
仰木エイド到着は9時間26分ほど

タイム的にはまだ余裕があった。
ここでひろたかさんが追いつき
ふたたびトレインに乗車、、、が、、
流石サブエガランナー
元三大師までの下りが速い速い!!
ドンドンはなされてこのペースじゃ無いと間に合わなかった??4分半くらいでも追いつかない!!
折り返しでスライドした時に思わず泣きつく笑

「にしさん!追いつけないです泣!!」

『大丈夫!上りで追いついてくるから』


ひろたかさん的に上りがかなりキツくて下りで稼ぐ流れだったらしく横川までの登りでなんとか追いつく(ホッ

やっと、ついに、ここまで来れば完走は確実と思える様になった

50kmのテールエンドとマイルのトップ選手が通り過ぎてヌタヌタになった路面と雨か霧でライトも中々効かず視界の悪い中一歩一歩進む。

この辺りからふたたびカラダにエネルギーが回ってくる感覚があった(単純に冷えて思ったよりエネルギーが足りなかったのか?)
登りの足取りも軽くなってくる。
最後の横川エイド到着時に10時間26分で到着
エイドで準備していると

『げんくん行くよー!』

もう最高。
さっと先に行っても良かったのに。
いや、僕が逆でも声かけるか。

ひろたかさんにも時間を告げもう安心ですねと話すと視界も悪いし長い下りだから油断して怪我したらダメだよと。

そうは言ってもこの50mileの旅も残りわずか
なんとなくこの楽しい時間が終わる寂しさと
完走が見えた安堵感からか目頭が熱くなった。

最後の林道はキロ4分半切ってたかな?
相変わらず長く感じるなと思いつつも
めちゃくちゃ気持ちよく走った。
だってもう足残す必要ないから!!


最後の登りはもうドロドロ!ヌタヌタ!!
登り始めで登りは全然だから先行ってと言われたけど、是非一緒にゴールしたかったのでこのまま後ろつきますとゆっくり噛み締める様に登りを進んだ。

しかし残り僅かの所で
家族がゴールにいるみたいで先に行っていいよと
おっと
そりゃそっちが大事!
(ちょっと寂しかったのは内緒)

なぜか脚は回復してたので
ささっと走ってお先にゴールまで。

会館横を通り過ぎ
坂道の向こう側
照明に雨が反射し明るく光が漏れている。


ああ、去年憧れた景色。

前の選手のゴールを讃えるアナウンスが聞こえる。


ゴールには惜しくも関門で散った仲間や応援してくれてた面々が。

『やったなーー!』

『かっこいいぞーー!』


よっしゃあああああああああああああ!!!

跨いだ瞬間
ありったけの声で叫んだ
歓喜の叫び

『20番目のランナーが帰ってきました!』

『鈴木 弦也 選手!』

感動してウルウルしてるのに名前難しいのか
ゼッケン確認されてる図

11時間15分59秒でゴール
正直最後の時間はあんまり意味がないかな

足を攣りながら8時間50分台でゴールに倒れ込んだ
2019年の比叡山50km。

2019年のゴール。足が太い。



3年後、50mileを自分が完走出来るなんて
自分で言うのもなんやけどカッコよくない?


こうして
憧れから挑戦へ
挑戦から完走へ

僕の比叡山50mileは幕を閉じました。


ひろたかさんとはゴール後に
ちゃんと写真撮ってもらいました笑


完走できた要因は今思い返せば色々ありますが
1番は気持ちで負けない事。
これに尽きると思ってます。
あんなにネガティブだったのにどの口が?とスタート前を知ってる方からは言われそうですが笑
(緊張は自分への期待の裏返しという事で、、、)
自分を信じきれなくても諦めない事。
最大限挑戦を楽しむ事。
途中ご一緒した慶太さんやボランティアで参加されてた方からも

『通り過ぎた50mileの選手で1番元気!』

『走りがポジティブな印象』

練習ではいつも良いイメージをつかめないけど
kami100で良い走りが出来た時も脳のロックが外れるのか終わった後のダメージの酷さから相当ポテンシャルを解放して走れてたのではないか?
精神が肉体を凌駕する、とは大袈裟ですが
自分のフィジカルの強さを他の選手と比較すると
自分が走り続けられた根拠はこの辺りにあるのかなと思います。

人生においても自信になりましたし
本当に素晴らしい経験になりました。

後半は参考にならない感じになってしまった様な‥
書く事が多くて最後は走り書きみたいになってしまいましたが最後まで読んでくださった方ありがとうございます!


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