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ゴスロリ先生 第3話「黒ギャル」

三学期になった。理科の川中先生が産休に入ったので、新しく臨時任用の先生が来た。

 その先生は、職員朝礼で元気よく挨拶をした。

「初めまして!城田りんです。三学期からお世話になります。よろしくお願いします!」

 城田先生は、どう見ても黒ギャルだった。
初日なので黒いスーツを着ているが、髪はロングのシルバー、鼻ピアス、200本ぐらいマツエクを付けているし、ゴールドのアイシャドウがキラキラでかっこいい。
ネックレスもブレスレットもゴールドで統一し、日焼けした肌に似合っていた。

職員室がざわついた。
ゴスロリの私が初めて挨拶するときと同じような空気になった。


城田先生は、挨拶が済むと、私の隣のデスクに座った。
「初めまして!斉藤です。教科は社会科。ゴスロリ着てるからゴスロリ先生って生徒に呼ばれてます。」
「城田です!服めっちゃ可愛いね!似合ってる!私も今日初日だからおしゃれして来ちゃった。」

2人で話していたら、教頭先生が城田先生を呼んだ。
「城田先生!ちょっと!校長室へ来てください!」
おそらく怒っていた。

15分後に校長室から釈放された城田先生がデスクに戻って来た。
朝は着けていたネックレスやブレスレットを外している。髪も一つ結びになっていた。
何を言われたか想像はついたが聞いてみた。

「校長と教頭に何て言われた?」

「アクセサリー外して、髪は染め直せとまでは言わないけど自分で考えなさいって言われました。」

「それで、城田先生はなんて答えたの?」

「元気よくはい!と答えましたけど。鼻ピアスだけは外したくなかったので、鼻ピアスは死んだばーちゃんの形見だって言い張って死守しました。あと、舌ピアスはバレなかった。」
にこっと笑って私にベーっと舌を見せた。



仲間だ……こいつは私の仲間だな。そう思った私はこの日以来、城田先生にやたら話しかけるようになった。

いつから黒ギャルなのか、先生になるときにギャルをやめようと思わなかったのかなど、色々聞いたら、全部答えてくれた。


「私、小5からずっと黒ギャルなんです。10歳離れた姉がギャルで、めっちゃ憧れてたので早いうちにギャルになりました。鼻ピアスは、中2で不登校になった時にある時思い立って、自分で開けたら学校に行けるようになったんで!今もずっと付けてます。黒いのは日サロでしょって言われるけど、実は地黒です。」

 「そして、高校に奇跡的に受かってからは、いい担任の先生に出会って、自分も先生になりたいなと思ってなりました。生徒会長になって、頭髪の校則を変えたり頑張ってました。」

「でも、教員採用試験が問題なんです!
教員採用試験の筆記試験は受かるんですが、見た目のせいで二次の面接が落ちるんですよ。ウケません?もう3回落ちました。まじムカつく。」


城田先生は昔の私のようだ。私もニ次面接では絶対落ちるだろうと思って渋々黒スーツを着て行ったことを話した。
「採用試験の日だけ黒髪にしたらすぐ受かりそうだけどね!私はニ次試験の日だけゴスロリ封印したよ。不本意だったけど。」

「それじゃダメなんです!」
城田先生が強めに言った。
「それじゃだめ。もちろん、面接の時だけギャルを辞めれば受かるかもしれないけど、それじゃ、そういう見た目で人を判断することに同意することになっちゃいます。私は学校のそういう所を変えたいから先生になったんです。ギャルでも学力上げられるし、学級経営もできるってことを臨時採用だけど示さないとね!」
「あ、あと!」
「あと?何?」

「あと、最近は学校の先生になりたい人どんどん減ってるから、いずれはギャルだろうがゴスロリだろうが、ユニコーンだろうが採用しないと教員不足で自治体は苦しむので!私はそれまで粘りますー!」


案外現実的に変な理想を語るのだなと感心した。
隣の席で、これから仲良くやっていけそうだ。

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