窓の外に描く 2話「画集」
暴走族に入ってから一年後、中3になったジニは、5月に初めてバン先生に会った。進級して、しばらくしても学校には行かなかった。暴走族の仲間と、無茶な走りをして、バイクが転倒して事故を起こしたのが、5月の半ばごろだったと思う。
命こそ大丈夫だったが、右足に怪我をして、入院していた。家族はジニを見放していたから、入院の手続きで来てからは、その後はほとんど見舞いにも来なかった。
唯一、毎日来たのが、担任のバン先生だった。
「ジニ、生きていてよかった。始業式からずっと会えなくて、初めましてが病院なのは変な気がするけどね。」
そういって、目を細くして笑った。バン先生は、とても優しかった。ジニの2ヶ月の入院期間中ずっと気にかけてくれた。仕事が残業で遅くなっても、毎日病室に顔を出してくれた。バン先生は、美術を教えている。入院中は、有名な写真家の写真集や、ゴッホやモネの画集を貸してくれた。
「興味ないよ、こんなの。どうせなら、バイク雑誌持ってきてよ。」
そう言っても、バン先生は、いつも通り目を細くして笑った。