見出し画像

YouTubeコンテンツIDの仕組み ~アセット~

この記事には最新バージョンがあります。(2023/6/27追記)

株式会社TRACKSのクリエイターサポート部門です。
 
前回はYouTubeのコンテンツIDの仕組みについて簡単に説明しました。今回はその中でもアセットについて詳しく解説します。また最近発表された、JASRACのコンテンツID運用本格化についても、アセットが関係してきますので、一緒に解説していきます。


1.アセットの種類

アセットとは、著作権者が楽曲などの情報をコンテンツIDに登録すると生成されるもので、以下で構成されています。
 
・音声や映像のデータ
・楽曲名やアーティスト名などの情報
・ポリシー
・地域ごとの著作権者の情報
 
アセットの種類にはいろいろありますが、大きく分けて映像と音楽に分けることができます。映像のアセットは映画やテレビ番組などで、無許可でアップロードされた映像作品のブロックなどによく使われています。これに対して音楽のアセットは収益化に使われることが多く、また、用途や権利ごとに種類が分かれていて、それぞれが関連しあっています。

音楽のアセットには以下のようなものがあります。

  1. サウンドレコーディング
    楽曲の音声データとその情報です。CD音源などをそのまま利用した動画に対する、音声の一致による申し立てに使われます。

  2. ミュージックビデオ
    音楽コンテンツの動画データとその情報です。音声と映像の一致による申し立てに使われます。

  3. 楽曲権利保有率
    楽曲の著作権者の情報です。楽曲の旋律をもとに、演奏の動画などに対する、メロディの一致による申し立てに使われます。

  4. アートトラック
    YouTube Musicのためのアセットで申し立てには使われません。ジャケット画像と音声データと楽曲情報で構成されています。

アセット
https://support.google.com/youtube/answer/3011552?hl=ja&ref_topic=6084219

2.音楽アセットの関係

音楽コンテンツには上記で説明した色々な種類のアセットがありますが、それぞれの関係と役割について説明していきます。

音楽アセットの関係図

左側が一般の動画、右側が音楽動画です。赤い点線から上側、緑色の□はYouTube上でユーザーに見えるコンテンツを表しています。またその下の白い□はアセットを表しています。YouTubeの利用者に見えている情報としては、
 
・動画
・ショート
・ショート用オーディオライブラリ
・アートトラック
 
の4点です。

音楽アセット間の関係 

それぞれのアセットは、図のような関係になっています。ミュージックビデオとアートトラック、オーディオライブラリにはサウンドレコーディングが紐づいていて、公式ミュージックビデオ、YouTube Musicのアートトラック、ショートで使われる曲が同じ曲であることがわかるようになっています。また、サウンドレコーディングには楽曲権利保有率が埋め込まれていて、その曲の著作権情報が管理されています。

一般の動画と著作権の申し立て

音楽が含まれた動画をアップロードすると、CD音源をそのまま使っている場合はサウンドレコーディングアセットから音声一致による著作権の申し立てがつきます。CD音源を使わず、楽曲の旋律が元曲と同じ演奏などの動画の場合、楽曲権利保有率アセットからメロディ一致による申し立てが付きます。これらの申し立てが付いた場合、動画にはクレジットが表示されます。

前のYouTubeと音楽の記事も合わせて見てみてください。

3.JASRACの先日のリリースについて

先日JASRACとYouTubeがContent IDの利用について発表を行いました。

 JASRACのお知らせページ
https://www.jasrac.or.jp/news/23/230210.html

 この発表の内容について、ここまで説明してきた内容をもとに読み解いてみます。

 JASRACが「著作権の申し立て」を行った旨のお知らせが動画投稿者に届く

著作権の申し立てが起きるためにはアセットの登録が必要です。つまりこれはJASRACが管理している楽曲について、楽曲権利保有率アセットを登録したことを意味していると考えられます。楽曲権利保有率アセットはサウンドレコーディングアセットに埋め込まれるものなので、既にコンテンツIDに登録されているサウンドレコーディングアセットに対して楽曲アセットの設定を行う(行なった?)のでしょう。

これまで広告が表示されていなかった動画にも、広告が表示されるようになります。

これまで収益化されていた動画においても、YouTube パートナー プログラムに参加している動画クリエイターは引き続きの収益化が可能ですが、その条件に変更が生じる場合があります。

楽曲権利保有率アセットからはメロディによる一致が起きます。その結果、今までサウンドレコーディングアセットでは著作権の申し立てが起きていなかった「弾いてみた」や「歌ってみた」動画にも、メロディによる一致が行われ、著作権の申し立てが起きる可能性があると考えられます。また、広告が表示されるということは、ポリシーは収益化になっているようです。

これらのことから、今回のJASRACの運用変更による影響を最も受けるのは、CD音源を使っていない「弾いてみた」や「歌ってみた」の動画になりそうです。

4. まとめ

前回から2回にわたり、YouTubeのコンテンツID、特にその中で音楽コンテンツがどのように管理されているかを解説しました。次回はYouTubeコンテンツIDでフリーBGMがどのように管理されているかを解説したいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?