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Vol.6 機動警察パトレイバー the Movie

企画・原作/ヘッドギア 原案/ゆうきまさみ
脚本/伊藤和典 演出/澤井幸次 監督/押井守 

あらすじ *ウィキペディア(Wikipedia)による

すべてが朱に染まる夕暮れ、篠原重工の天才プログラマー・帆場暎一が、バビロンプロジェクトの要となるレイバー用海上プラットホーム「方舟」から投身自殺を遂げる。何とか彼を引き留めようと叫ぶ同僚や作業員を背に、海に向かって飛び降りる彼の口元には嘲りの笑みが浮かんでいた。時を同じくして、レイバーが突如暴走する事件が多発。遂には自衛隊の試作レイバーまでが、無人にもかかわらず風洞実験中に暴走事件を起こす。       特車二課第1小隊は、近々正式配備される新型パトレイバー(通称「零式」)に関する研修中のため不在。留守を預かる第2小隊は単独で暴走事件の処理に追われていた。第2小隊の篠原遊馬巡査は、多発する暴走事件の異常性にいち早く気付いて独自に調査を始め、原因が暴走した機体すべてに搭載されていた篠原重工製の最新レイバー用OS「HOS」(Hyper Operating System)ではないかと推測する。また、同様の疑念を抱いていた第2小隊長・後藤喜一警部補は、「HOS」の主任開発者だった帆場の捜査を、本庁の松井刑事に依頼していた。                        遊馬の調査の結果、強風によって建造物から発せられる低周波音を引き金として、帆場の意図したとおりに「HOS」が引き起こす暴走が事件の原因であることが明らかとなった。篠原重工から同じ内容の報告を受けた警視庁上層部や政府は、有力企業である篠原重工との関係や「HOS」を認可した国の責任問題の隠蔽を重視し、公式には「HOS」のバージョンアップと称しつつ、「HOS」を旧OSに書き換えることで政治的決着を図ろうとする。     そしてすべての謎が解明された頃、大型台風が東京に近付いてきた。大規模なレイバー暴走を未然に食い止めるため、大音量の低周波音を発し得る「方舟」を解体するべく、第2小隊は本庁黙認のもと緊急出動する。

 このように造形された帆場暎一を、押井守がどう料理していくか? そこがこのアニメーションの核であろう。
 押井は「帆場暎一は実はいなかった」というシナリオを考えたが、伊藤が「映画の次元は上がるが、観客が混乱する」と反対したという。だが押井はこのアイデアに固執したとみえる。完成した作品のあちこちで、帆場の「不在」が強調されていたのだ。

 ここに『東京占戈争戦後秘話 映画で遺書を残して死んだ男の物語』という映画がある(「占戈」は造語) 主題/大島渚、田村孟 脚本/原正孝、佐々木守 監督/大島渚によるATG映画で、1970年に封切られている。

元木象一(後藤和夫)は映画製作運動に没頭していた。沖縄デーの闘争記録を撮影に行った象一はカメラを奪った私服刑事を追いかけるが、突然一つの幻想にとりつかれた。それは、自分の身近かな友人の一人が、自分から借りていったカメラで、何かを撮影しつつ、そのフィルムを遺書に残してビルの屋上から自殺してしまったという幻想である。仲間の松村や谷沢はこの馬鹿げた話に苦笑するだけだった。しかし、あいつが自殺したと思いこんでいる象一は、自分の恋人泰子(岩崎恵美子)も「あいつの恋人」だと思いこみ、強姦同然に泰子を犯してしまった。象一は幻想の中で「あいつ」の遺書の映画を見た。その映画というのは、ありふれた風景の積み重ねだけの訳のわからないものだった(中略)象一はこの世に風景がある限り、「あいつ」はどこにでもいるし、そのことがわかった時どこにもいないのだと気づいた。今や、風景なんて何だって同じである。象一のカメラはでたらめにそこらの街角でまわりはじめた。やがて、松村たちがカメラを奪い返そうと追ってきた。象一は、「あいつ」の影に誘われるようにビルの屋上にのぼり、そこから身を投げた。

 つまり『機動警察パトレイバー the Movie』は『東京占戈争戦後秘話』からの引用が多いのだ。もちろん「引用」にとどまってはいるのだが。これに対して、原正孝改め原將人が監督となって1997年に発表した『20世紀ノスタルジア』では、映画に憑かれてしまった片岡徹(圓島努)を遠山杏(広末涼子)が「再編集」で呼び戻すところを真正面から描いている。これこそが、1970年の大島渚に対する1997年の原將人によるアンサーソングというべきだろう。

 『東京占戈争戦後秘話』がamazon prime で見られる今だからこそ、『機動警察パトレイバー the Movie』『20世紀ノスタルジア』と3本立で見たほうがいいと思う。

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