妄想アマガエル日記(1)-7月15日(土)くもり時々雨
カエルになって今日で10日目だ。
つい最近まで水の中にいたけれど、その時のことはあまり覚えていない。
ただ、水の中にいた時は音を聴いたことがなかったし、風を感じることもなかった。少しずつ脚がでて、尾にあったヒレがなくなっていくに従って、水の中では暮らしにくくなった。オタマジャクシの頃は尾のヒレを少し左右に動かすだけで簡単に前に泳ぐことができたが、それができなくなったし、脚が出てからは水の中で息が長く続かなくなった。脚が皮膚を破って出てきた時は不思議と少しも痛くはなかった。覚えていることと言えば、これくらいだ。
10日前の雨が降る夜、遂に尾のヒレがなくなったので陸に上がってみたら、普通に歩くことができた。だから、水の中での生活を終えて、陸で生活することを決めた。歩くだけでなく、ジャンプもしてみたが、これも案外簡単にできた。だから、元々いた田んぼから少し遠くに移動することにした。
少しでもよさそうなところを探して歩きまわっていたら、いい感じの隙間を見つけたので、とりあえず、そこでその日は夜を明かした。
その次の日、日が出て明るくなったので外に出ると、前の日の雨が嘘のように晴れていて、日の光が地面を照り付けていた。
水の中での生活をやめて陸での生活をはじめたものの、陸での生活はまったく違った。まず、音がうるさいし、風を感じるし、何より暑い。水の中もそれなりに暑かったが、陸では日の光が直接皮膚に当たって暑いというか痛いし、風が体を乾燥させてしまう。
前の日 隠れていたのは、どうやら朽ち木の隙間だったようで、その朽ち木は雑木林のようなところに無造作に置かれ、雑木林がいい具合に影を作ってくれて涼しかったようだ。
さて、あれから10日、この居心地のいい朽ち木の隙間からあまり動かずにいたが、今晩少し移動してみるか。今日は夕方少し雨が降って、地面が湿っているし。
つづく