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 当館の棚や展示台は私たちが作ったものが多数を占めていますが、それらは、ほとんどすべて黒いペンキで塗っています。これには、これまでの試行錯誤の末に行きついた理由があるのです。

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 また、ただの黒色のペンキではなくて、「黒板ペンキ」という 塗ればどこでも黒板になるというペンキで塗っています。だから、棚はどこでも黒板になっているのです。

 以前は、色々な色のペンキを塗っていたこともありました。でも、そうすると ただでさえ狭い展示室がゴチャゴチャして見えるし、展示物が綺麗に見れないことに気づきました。

 棚や展示台は所詮、黒子なのです。

 だから、可能な限り目立たず、必要な情報だけを見やすくしてくれればいいのです。

 また、いろいろな色のペンキで塗るより、黒一色と決めた方がコストが低く抑えられますし、ペンキによって塗るコツや重ね塗りの回数とかの性質が違うので、同じペンキだけ使っていると、そのような性質も気にしなくて済むのです。

 さらに、ペンキによって匂いが臭いといった問題もあります。棚を作ったり、塗ったりする作業は受付業務の合間とかに行いますので、館内で行うことが多いのですけど、臭いペンキの場合は館内でできないし、何より展示している生物に影響を与えそうな気もします。
 でも、黒板ペンキはほとんど匂いがしないのです。

 そんな理由で、いつも何かを作る時はこの黒色のペンキで塗るようにしているのです。

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▲自分たちで作るほとんどの物を同じペンキで塗っています。

 開館当初、私たちスタッフは目立つことだけを考えて作られたような蛍光黄色の薄々のジャンバーが支給され、着ていました。そして、それはわずかな期間でボロボロになったので、次に、皆の希望をとって色を決めて作ったのが、背中にstaffと書かれたグレーのポロシャツでした。

 このグレーのポロシャツを夏場着て作業していますと、ある問題がおきました。

 それは、棚などを黒色のペンキで塗っていると、気を付けていてもわずかな油断でペンキがポロシャツに付くのです。グレーに黒色のシミというのはとても目立ちます。

 そのため、私たちスタッフのポロシャツは、ペンキが付いても目立たないという理由で同じ黒色になったのです。

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 そして、今では、皆が上下黒色の服を着るのが、当館の暗黙の決まりのようになっています。

 博物館にとっては、棚も職員も、所詮 黒子なのです。