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京助くんは今日も考える(3)虫と光

最近は、毎日暑かったけど、今日は朝から曇りだったし、夜になってより一層涼しくなってきた。
外はだいぶ暗くなって来て、涼しい風が網戸越しに入って来る。

「今夜は涼しくていいな~」
網戸を見ながら独り言を言うと、3歳上の姉がちょうどリビングに入って来た。
「京助、戸を閉めて、エアコンにしてよ!!」

「え~~。。外は涼しいから、エアコンなんてつけなくいいでしょ」

「だって、、、ほらっ、虫がいっぱい網戸にいるでしょ?」
「あたし、、虫が嫌いなのよ。。」

「ふ~ん、、そう?」
「だって、別に、網戸にとまっていたって入ってはこないでしょ」
外の涼しい風の方がエアコンの風より好きなので、どうにかこのままにして欲しいから反論した。

「まぁ、、、そうだけど、、でも、1匹でも入ってきたら、エアコンにするからね!」

「うん、わかったよ」
そう言って、近くにとまっていた小さな蛾を軽く握るようにして捕まえて、見つからないに隠した。

姉がいなくなった隙に網戸を開けて、その小さな蛾を外にヒョイと逃がした。外は真っ暗になっていた。

その時、ふと考えた。

ところで、なんで虫たちは光に寄ってくるんだろうな~。。

昼間はあんなに光があるのに、じっとしていて、暗くなって光に寄ってくるなんて、何が目的なんだろう~??

光に寄ってきたからといって、何かをしているわけでもなさそうだし、光に寄ってこないと生きていけないというわけでもなさそうだし、、充電するとかでもないだろうしな。。

ん~~~いったい、なんで光に寄って来るんだろうな~~??

そもそも、人が光を作る前はどうしていたんだろう~??

月の光に寄っていっていたのだろうか~?
でも、月に向かって虫が飛んで行くとは思えない。人の光がない山の奥とか海の上とかで、月に向かって虫が集まるなんてのも聞いたことないからな~

いったい、なんのために、虫は光にこんなに集まるのだろう?

そもそも、光が好きだったら、昼間なんて光がいっぱいあるじゃないか!!昼間にいっぱい動き回ればいい。
なのに、昼間はじっとしていて、光を喜んでいる感じではない。。。むしろ、光から避けるように暗いところに隠れる。

考えれば考えるほどわからなくなってきた。

でも、まてよ。。。

少し前に、朝、学校に行く途中に街灯の下で大きなカブトムシの雄を拾った。喜んで学校に持っていったけど、先生とかに見つかったら逃がさないといけないから、亮太と一緒にゴミ捨て場に行って捨ててあった段ボール箱を拾って来て、その中に入れておいた。
放課後、その箱を開くと、そこにカブトムシの姿はなかった。よく見ると、その箱には小さな穴が開いていて、そこから逃げたようだった。
あの時、あのカブトムシは穴から漏れる光に寄っていったから、外に出ることができたんだと思う。

そう考えると、光に集まる虫たちにとって、夜というのは大きな段ボールの箱みたいなのかもしれない。出口の穴だと思って光に集まっているのかもしれないな。

「まったく、、ここは出口の穴ではないんだよ。ここはただの網戸なんだ。」

そう虫たちに言って、戸を閉めて、エアコンをつけた。

つづく。