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妄想アマガエル日記(14)-8月8日(火)晴れ

一通り食事を済ませて戻ろうと朽ち木を登り始めたら、ちょうど上から与助が降りてくるところだった。

「おっ!どこ行くの?」
見上げて声をかけた。

すると、
「君に会いに行こうと思って隙間を覗いたらいなかったから、探しに行こうと思っていたところだったんだよ」
与助が嬉しそうに返してきた。

「へ~そうなんだ!」
自分に用があるなんて、、とても嬉しく思った。

「で?なんの用なの?」
嬉しく思っていたのと同時に要件がとても気になっていた。

「いや~大したことでもないんだけどね。。。まぁ、あそこが涼しそうだからあそこで話すよ」
コンクリートの壁の上を指差してそう言ってきた。
ちょうど、その場所は、大きなヤナギの木があって、陰になっていて涼しそうに見えた。

「わかった。ちょっとまてて、この日記を置いてくるから」
脇に抱えていた日記を持って隙間に戻ろうとすると、
「いや、それ持ったままでいいよ」
与助がそう言ってきたので、持ったまま与助の後をついていくことにした。

コンクリートの壁をよじのぼって、ヤナギの木の下に歩いて行って、二人で並んで腰かけるとちょうど夕日が見えて雑木林も一望できて、とても気持ちがよかった。

「ここはいいところだな~」
与助が言ってきた。

「そうだね、涼しいし、眺めもいい!」

そして、お互い少し沈黙してから、
「あのさ~少し気になっていることがあるから教えて欲しいんだけど。。」
与助が言いづらそうに言ってきた。

「実はさ~ 僕も教えて欲しいことがあるんだよね。。。」
モジモジしながら言ってみた。

「へ~、お互い聞きたいことがあるんだね。。」



再び沈黙が続いた後、
「体の色を・・」「暗号を・・」
お互い被ってしまった。

「あっ、いいよ先に言って」
与助が言ってくれた。

そこで、
「体の色を自在に変える方法を教えてくれない?」
意を決して聞いてみた

すると、
「いや、、、、この体の色は生まれつきだから、、、」
「自在に変えたりなんてできないんだ」

「あっ、そうなの?」
「なんか特殊な訓練とかして、体の色を自在に変える方法があったりするんじゃないんだ!」
「そっかぁ、、」
少しがっかりしてしまった。。

「与助くんの質問はなに?」

「あのさ~、日記に書いている暗号を教えてくれない?」
すると、
「いや、、、、この字は生まれつきだから、、、」
「暗号とかじゃないんだ」

「へっ、そうなの?」
「なんか特殊な訓練とかして習得した暗号じゃないの?」
「ちょっと日記見せてくれない?」
「これさ~、、自分じゃちゃんと読めるんだよね?」

「もちろんだよ!」
「ただ、調子が悪い時は読めないんだよ」

「ん?調子が悪い時って何なの?」

「調子がいい時は日記を書いた時のことを覚えているからだいたい読めるんだけど、調子が悪い時は書いた時のことを忘れているから、わからないんだ」

「それってさぁ、読んでるんじゃなくて、書いた時のことを思い出しているってことなんじゃない?」

「ん~、、、まぁそう言われたらそうかも。。。」

与助が呆れた顔で見てきた。

そして、お互い顔を見合わせて爆笑してしまった。
どれくらい笑っただろう、、久しぶりにこんなに笑った。
いや、カエルになって初めてかもしれない。。

「お互い変な勘違いしていたんだ!」
「暗号って、、ぷっ」
与助の肩を叩いて言った。

「ところでさぁ、、、字が汚いのが生まれつきってなんだよ」
与助が真顔で言ってきた。

「ぷっ・・・」
また、笑いがこみあげてきた。
ヤナギの木の下に2匹のカエル。暗くなるまで笑い続けた。

つづく