妄想アマガエル日記(4)-7月17日(月)晴れ~ヌマガエル小太郎編~
俺の名前は小太郎。最近カエルになったばかりのヌマガエルだ。
俺は冒険家だ。だから、同じところにじっとしたりはしない。
カエルになってそれほど日数は経っていないが、これまで色々な世界を見てきた。もちろん、危険な目にもあったが、冒険家なのだから仕方がない。
田んぼから出てから、色々な物を食べてみた。何が美味しいかよくわからないからだ。クモとミミズは美味しかった。アリは苦かった。ナメクジはベタベタして食べられなかった。
カエルになって4日目、草むらの中を歩いていると、クズが地面を這うように生えていて、その葉の上に丸い虫が何匹かいるのが葉の裏からシルエットで見えた。試しにそれを食べてみようと葉の表に移動しようとすると、1匹のアマガエルがそれを食べようとしていた。
「先を越されたか!まぁ、ここで隠れてアイツがいなくなったら食べてみよう。」
「おっ、アイツは同じ夜に同じ田から出てきたアマガエルじゃないか。アイツは気づいていないだろうが、田から出るときに俺の頭を踏み台にしたんだ。」
葉に開いた孔からそっと見ていると、そのアマガエルが悶絶して虫を吐き出しはじめた。とても苦しそうだ。
「うわ~ 可哀そうにあの虫は不味いんだな~ 食べなくてよかった~。にしてもアイツまだ悶絶してる。。。ふ~ あぁはなりなくないな~」
そして、そのまま草むらの中を進み、冒険を続けた。
一昨日の夜、この辺りを一周して雑木林に戻ってきた。その夜は、月もなく暗くて、風が心地よくて、とても冒険日和であった。色々な食べ物も食べることができた。雑木林を通り抜けようとすると、端っこに朽ち木が何個か転がっているのが、見えた。ちょうど、この朽ち木の辺りだけ街灯の光がわずかに照らして完全には暗くならない。
そして、その一つの隙間からカエルの足が外に出ているのが見えた。
「ん?あれはなんだ?」
その朽ち木の隙間に近づいて見てみると、どうやらそれはアマガエルの足のようだった。隙間の奥を覗き込むと、
「あっ、このアマガエルは数日前に虫を食べて吐き出していた奴だ。なんて寝相の悪さだ。しかも、なんて無防備なんだ。ふ~、俺はこうはなりたくないな~」
そして、そのまま水たまりを泳いで、冒険を続けた。
昨日の夕方、この辺りを一周して雑木林に戻ってきた。日が当たるけど、まぁ暗くなるまでの間隠れるだけなので、大きな石の下に身を潜めることにした。
「さて、今夜はどんな冒険が待っているのだろう~」
ふと、上を見上げると、朽ち木の隙間からアマガエルが外を見ていた。
「またアイツだ。この前は虫を吐き出していて、昨日は朽ち木の隙間から足を投げ出して爆睡していたけど、今日はなんか真剣な顔しているな」
「うわっ、目が合ってしまった。まぁ、俺のことなんて覚えてもいないだろう~。さて、今夜の冒険が楽しみだ!」
暗くなってきたので、石の下から出ようと上体を起こすと、アイツが視界に入った。
「うわっ、なんてアホズラで、ぼ~としているんだ!」
「ほんと、あぁはなりたくないな~」
そして、そのまま近くのコンクリート製の側溝の中に入って、冒険を続けた。
つづく