妄想アマガエル日記(28)-10月6日(金)晴れ
「話しは聞いたわよ。小太郎ちゃん♡」
「あんた、あの建物を登りたいらしいわね。。。」
「そんな無謀なことを考えるなんて、さすが私が惚れた腹の持ち主だけあるわ♡」
日出夫が小太郎を持ち上げながら嬉しそうに言った。
「あ~そうですか。。。。」
小太郎はなされるがまま腹をほっぺにすりすりされ過ぎて、遠い目をして言った。
「じゃ、私もあなたのその無謀な夢を叶える手伝いをしてあげようじゃないの!!」
日出夫が小太郎を地面に降ろして、胸を叩いて言った。
「えぇ~~。。いいよ。。。もう俺たち帰らないといけないし。。」
「なぁ、なぁ、もう帰るもんな?」
与助と銀次郎にどうにか、うんと言ってもらおうと必死で聞いた。
「それがね。。。日出夫も俺たちが住んでるあの朽ち木を見たいって言うんだよ。。」
「だからね、これから帰るんだけど、日出夫も一緒なんだよ。」
与助が申し訳なさそうに答えた。
「え~~。。そりゃないよ~~」
「だって、あの隙間にはこんな大きなヒキガエルは入れないじゃないか。。」
日出夫はとてもショックを受けて、2人を日出夫から遠ざけて3人で話すことにした。
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「あっ、住んでるところを見るだけって話しか!」
与助が言ったことをもう一度思い出して、一緒に住むことではないことを確認した。
「まぁ、、一緒に住むわけではないんだけどね。。」
銀次郎が申し訳なさそうに言った。
「でもね、、、朽ち木の前に大きな石があるでしょ?あそこに住むことになるかもしれないんだよね~」
銀次郎がさらに申し訳なさそうに言った。
「おいおい、、どうして、そんな話しになるんだよ!」
小太郎が銀次郎を日出夫に聞こえないように小声で問い詰めた。
「こいつが、誘ったんだよ。」
与助が銀次郎を指差して言った。
「いやいや、、、誘ったわけじゃないんだよ。」
「僕らが住んでいる朽ち木の居心地の良さを話してね。そして、ちょうど日出夫が住めるような大きな石が朽ち木の前にあってね。そこは今は誰も使っていないんだよって言ってね。あの辺りは常に湿っていて餌も豊富だよって言ってね。小太郎があの建物に登りたいって言うから手伝って欲しいんだよね。って話しただけなんだよ。。。。」
銀次郎が身振り手振りで2人に弁明した。
「いや、それを誘ってるって言うんだろうが~」
小太郎が銀次郎に近づいて睨みながら言った。
「まぁまぁ、日出夫もここは乾燥していて、あまり餌がないから引っ越し先を探していたみたいだしさ。。小太郎が登るのを手伝ってくれるって言ってるしさ。。悪い奴じゃないしさ。。いいじゃないか!」
与助が銀次郎をかばうように言って、小太郎をなだめた。
「いやだ!ぜったい嫌だ!」
小太郎が、もし一緒に住むくらいなら、建物を登るのは諦めて出て行くとぐちぐち言い始めた。
すると、のしっのしっと日出夫が3人のところに近づいてきた。
「どうしたのかしら?小太郎ちゃん。そんなに嫌がらなくてもいいじゃないの。」
3人の様子を遠くから見て、たまに漏れてくる単語を聞いて、だいたいの話しの内容を察して言った。
さらに、
「あなたは冒険家なんでしょ。なのに、1回決めたことを諦めるの?」
日出夫が上から見下ろして小太郎に言った。
「あと、あなたは高いところが怖くなってしまったんでしょ?」
「与助から内緒で聞いてしまったのよ。」
「与助~~。。。」
小太郎が与助を睨みながら言った。
与助は申し訳なさそうな顔をして、謝る身振りをした。
「だから、私があなたの高いところが怖いというのを治してあげようじゃないの!」
日出夫が小太郎に提案した。
皆が呆気に取られた。
「ん?どうやったらそんなことができるんだい?」
銀次郎が小太郎に代わって聞いてみた。
「ん~~そうね、、、、」
「とりあえず、私の頭の上に乗っていたらいいんじゃないかしら?」
日出夫は思い付きで言ってみた。
「なるほど!!日出夫の頭の高さは相当高いから、そんなところにいつも乗って移動していたら、高いところなんて怖くなくなるかもしれないな!!」
与助が感心して言った。
「そんなんで、高いところが怖くなくなるかね?」
小太郎が信じられないといった顔で与助を見た。
「まぁ、とりあえずさ~。日出夫の頭の上に乗ってみたら?」
銀次郎が小太郎を促した。
「まぁ、冒険家の俺が高い所が怖いままってのも情けないし、、治せるのならありがたいからな。。。」
小太郎がしぶしぶ日出夫の提案に乗ることにした。
「どうやって、乗ればいいんだ?」
小太郎が日出夫に聞いた。
「そりゃ、私がいつも見たいに持ち上げてもいいけど、それもなんかあなたのプライドが許さないみたいだから、自分の力で私の背中から登ってみたらいいんじゃないの?」
日出夫が背中を指差して言った。
「よし、じゃ、そうさせてもらおう!」
そう言うと、日出夫の後ろに回りこんだ。
へぇ~~、、初めて背中を見たけど、、これは小さな山みたいだな~
小太郎は思った。
「じゃ、失礼させてもらうよ!」
小太郎は日出夫に言って登り始めた。
登り始めてわかったことだが、ちょうど、自分が登るための足場のようにちょうどいいところにちょうどいい大きさのイボが配置されていたのである。そして、するすると簡単に頭の上まで登ることができた。
「上手じゃない!!」
日出夫が嬉しそうに言った。
「ほんと、上手だったね!」
銀次郎も褒めた。
それを聞いて、少し嬉しくなった小太郎は日出夫の頭の上に立ってみた。そこは、まさに今までとはまったく違う世界だった。なんて高くて、遠くまで見渡せるんだ!確かにここからの風景に慣れたら、高いところなんて怖くなくなるかもしれないな!心の中でとても感動していた。
「よかったじゃないか!それくらいの高さに慣れたら、高いところなんて怖くなくなるさ!」
与助が嬉しそうに言った。
「じゃ、帰ろう。」
銀次郎が提案して、皆で帰りはじめた。
しばらく、歩いていくと
「うぇ、、オェ。。。」
「もう少し振動を抑えて歩いてくれないかい?」
小太郎が日出夫の歩く上下の振動に酔ってしまっていた。
「立っているからよ♡」
日出夫が上を見て、小太郎に言った。
「じゃ、どうしたらいいんだよ。。オェ」
小太郎が少し不機嫌に言った。
「頭の上にあなたの腹を付けて、身をかがめて乗るのよ♡」
日出夫が真面目にアドバイスした。
「こうか?」
小太郎は日出夫に言われる通りにやってみた。
「いや、もっと腹を押し付けないと振動を吸収できないでしょ!まったく世話が焼ける。。」
日出夫が少し怒って言った。
「あぁ、わかったよ。。こうだね?」
「そうそう、それなら振動を吸収して酔わないでしょ?」
日出夫が少し動きながらそう言った。
「確かに、これなら振動は感じないけど、高さは立っているのとあまり変わらないから慣れることができそうだよ。ありがとう。」
小太郎が日出夫に感謝した。
それを見ていた与助は、銀次郎に小声で言った。
「日出夫はさぁ~、ただ小太郎の腹の柔らかさを感じたいだけなんじゃないか?」
そう言われて、銀次郎が日出夫を見ると、とても気持ちよさそうな顔をしていた。
「確かにね、、あれはただ小太郎の腹の柔らかさを感じたいだけみたいだね。」
「まぁ、お互い嬉しそうだから、このことは小太郎には内緒にしておこう!」
与助が銀次郎に小声で言った。
「そうだね」
2匹のアマガエルと1匹のヒキガエル、そしてその頭の上に身をかがめたヌマガエルが1匹。
ゆっくりと雑木林を後にした。
つづく