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世界中のカブトムシとクワガタムシを生きたまま展示しているので、毎朝餌をあげたり、水槽を拭いたりしている。

そして、彼らを見ていて一つ不思議なことがある。
彼らは、飼育個体なので、卵からずっと人に育てられて来た生き物である。そんな彼らは、『とても大人しい』、、いや『大人しすぎる』。
ずっと餌を食べているのである。

一日中餌を食べているヘラクレスオオカブト

確かに、餌をよく食べる個体は長生きをするし、暴れたりしないから飼育も簡単なのだが、一年中飼育していても一度も翅を開いて飛ぼうとしたところを見たことがない。ただ、雌がいたら交尾しようとはする。だから、彼らの行動といったら、少し歩く、餌を食べる、交尾する、人に触られたら反応する、たまにひっくり返る、うんことしっこする、くらいなのである(野外から採ってきた個体は夜は飛び回るし、昼はどうにかして隠れようとする)。

累代飼育によって大人しい個体のみが選別されて生き残った結果で、ある意味進化のようなものなのかもしれない。

じゃ、これらの個体は、飛ばないのではなくて、飛べないのか?と思って、長年大人しく餌を食べて4年くらい生きたニジイロクワガタの亡骸を冷凍庫から出して、飛ぶための筋肉が退化しているのかを見てみることにした。

ニジイロクワガタの飛翔筋

いや、立派な飛翔筋があるではないか!これなら、全然飛ぶことはできそうだ(コオイムシなど飛べなくなる個体は、この飛翔筋が溶けて使い物にならなくなる)。

どうやら、飛べるけど、飛ぼうとしないらしい。

そして、このことはもう一つの不思議なことを考えさせる。
それは、たまに飼育個体と思われる外国産のクワガタが野外で見つかって持ち込まれることがある。

公園で見つかったと持ち込まれた外国産のクワガタ

そんな個体はたいてい「公園の木にいた」と持ち込まれるのであるが、たぶんそれは飼えなくなった人が公園の木に置いていったからではないかと思われる。つまり、何が不思議なのかと言えば、逃がされたクワガタは公園の木に置いて行かれた後に、そこを動かずじっとしていたのではないか?そして、このような飼育個体は野外に放たれたとして、いったい「飛ぶのか?」ということである。

野外に放たれた開放感から、飼育ケースでは飛ばなくても野外に出たら飛ぶのであろうか、、、?でも、ライトに飛んできたというのは、今まで聞いたことがない。

また、もう一つ不思議なのは、どうしてクワガタやカブトは飼育個体はこんなに大人しいのに、ホタルやタガメなどは、大人しくならないのだろうか、、昆虫ゼリーに何か大人しくなる成分でも入っているのだろうか、、?

そんなことを、毎朝、大人しいクワガタやカブトの餌を食べ続けている背中を見ながら思うのである。