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妄想アマガエル日記(35)-10月31日(火)晴れ

「お前、、いったいそれは、、、何やってんだ、、、???」
落ちた朽ち木の残骸を除けながら、うつ伏せになった与助が体を起こしながら銀次郎を見上げて言った。

「・・・・」

数日前の夜 @日出夫の石の下の穴の中ーーー

日出夫と銀次郎は並んで寝ようとしていた。その夜は満月で月の明かりが隙間から2人を照らしていた。

「ひでおちゃんはさ~。どれくらい生きているんだい?」
銀次郎が天井を見ながら聞いた。

「そうね~。。オタマジャクシからカエルになってたぶん、、6年くらい経つのよね~。早いわよね~」

「これまで、冬はどうやって過ごしていたんだい?」
「冬ってのは、寒いんだろ?体が凍ったりするんだろうか?」

「そうね~。とても寒いのよね~。。でも、寒い時はほとんど動けなくなるのよ。。。だから、あまり覚えていないのよね~。。考えることもあまりできなくなるのよ。。。まぁ、ここにいたら敵も来ないだろうし、寒さも多少しのげるから心配ないわよ!!」
「そうそう、敵って言えばね。ヘビも冬は動けなくなるみたいだから心配ないのよ!!」

「へ~~そうなんだ~。動けなくなって、考えることもできないんだ~。あと、ヘビも動けなくなるのはよかったよ!じゃ、心配ないね!!」
銀次郎が何度も頷きながら、真剣に返事した。

「ただね、、、私たちヒキガエルは、あなたたちアマガエルとか小太郎ちゃんみたいなヌマガエルと違って2月とか3月とかの寒い時期に産卵するのよ~。。あれがキツイわよ~。。水が超冷たいのよ。。」
「まぁ、私は産卵はできないのだけどね。。。」

「そうなんだ~。僕がオタマジャクシだったのは6月くらいだったら、そのくらいに産卵するんだろうけど、ヒキガエルってそんな寒い時期に産卵するんだ~。。違うもんなんだね~!!」
銀次郎は日出夫が話すことが知らないことばかりで、感心しっぱなしだった。

「あとさ~。。この前さ~ 冬を越すためにやっておかないといけないことがあるって言ってたでしょ?? 確か、、、餌をいっぱい食べるとか、冬を越す場所を探すとか、肌の手入れとか。。。」

「そうね~。場所はもうみんな決まったし、餌はここは豊富だから心配ないとして、肌の手入れを教えておかないといけないわね!!」

「肌の手入れってのは大事なのかい?」

「そりゃ~もちろんよ!!!冬は乾燥するから肌の手入れをちゃんとしておないと肌がボロボロになって春に起きた時にミイラみたいになるのよ!!そして、水分がなくなって干し柿みたいになることもあるのよ!!一番ひどいのは、、水分が抜けてペッちゃんこになって落ち葉みたいになったりするのよ!!!」

「えぇーーー。。そうなの?? じゃ、肌の手入れってとても大事じゃないか!!! 落ち葉って、、あんなペラペラになるのかい??」

「そうよ!!」

「じゃ、どうやって手入れしたらいいんだい??頼むから教えてくれよ~」

「いいわよ!!銀次郎ちゃんだけに特別にひでおちゃん↑オリジナルの肌の手入れを教えてあげるわよ!!!」

それから、日出夫先生の肌の手入れの説明と実践が繰り広げられ、銀次郎はそれをメモにとり真剣に聞いた。

そして、気づいたら2人は寝落ちしていた。

次の日、銀次郎は昨夜聞いた肌の手入れに必要な物を集めて、それらを探している途中で見つけた朽ち木の隙間にそれらを隠した。ただ、必要な物はだいたい揃ったが、使い方がわからなかったので、再び日出夫先生の元を訪ねた。
しばらく講釈を受けて理解して、朽ち木に戻り肌の手入れを始めた。

「さっそく、日出夫先生に教えて貰った通りやってみよう!!」
美肌になる自分を想像するとワクワクしてきた。

丸い小石で美顔ローラーのように肌を転がし、美肌に効くと日出夫が言っていたナメクジの粘液を体中に塗り、それをヨモギの葉で覆った。

なんか、肌がツルツルしてきたような気がするぞ~ と内心とても嬉しくなってきた。そこで、さらに丸い小石を顔に転がして、ナメクジの粘液を体中に塗っていると、後ろから

「ミシッ ミシッ、ドスーーーーーン」
と大きな音と振動がした。

振り返るとそこには、朽ち木の残骸とともに与助と小太郎の姿があった。

銀次郎は、日出夫先生から内緒で教えてもらった肌の手入れを2人に見られてしまったと思った。

そして、声が出た。。。
「見たな~」

つづく。