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妄想アマガエル日記(56)-5月2日(木)晴れ

そして、皆が口を揃えて驚いた。
「えっ!!!!!」
「えっ!!!!!」
「えっ!!!!!」
「えっ!!!!!」
「えっ!!!!!」「えっ!!!!!」

「これは、いったいどうなっているんだ??」
先頭にいた与助が穴の外の光景を見て、ポツリとつぶやいた。

そこには、見える範囲すべてを赤色や白色の大きなツツジの花が咲き乱れ、この世のものとは思えないとても美しい光景が広がっていた。
真っ暗な穴の中から出て来たカエルたちにとって、その赤色と白色の美しく派手な色の大きな花は、とても とても美しく、そして初めて見る光景だった。

特に皆が驚いたのは、その咲き乱れるツツジの下で、銀次郎らしいアマガエルがその赤色の大きなツツジの花を帽子のように頭に被り、白色のツツジの花をスカートのように腰に履いて、楽しそうに踊り、それを1人のツチガエルが腹を抱えて、爆笑しながら見ている光景だった。

穴の中から出たカエルたちが、ゾロゾロとその綺麗なツツジの花を口を大きく開けながら、見渡しながら銀次郎のところに近づいて行った。
そして、どうやらここは水路の近くらしいことがわかってきた。

「しっかし、、、なんて!!綺麗な花なんだ~!!!」
「はじめて見たな~、、こんな綺麗な光景は!!!」
与助が感動しっぱなしで皆に話しかけた。

「確かにな~、、去年のこの時期はまだ生まれていなかったからな~。」
小太郎が相槌をうった。

「ほんっと!!この水路には去年ずっといたけど、その時は花は咲き終わっていたんだな~。」
八助が七助や六助を振り返りながら話しかけた。

「ほんと!!ここはただの緑色の葉っぱだけの花壇だったからね。」
六助が頷きながら答えた。

「いや~、、ほんと♡ 綺麗だわね~♡」
「私はずっと雑木林の奥にいたから、この辺り来たことなかったから、初めて見たわ♡」
「こんな美しい光景が見れるだなんてね~♡」
日出夫が目を輝かせて、周りを見渡しながら喜んでいた。

「あっちの奥も地面を芝桜が地面を覆っていて、全体がピンク色や紫色をしているし、、、ほんと、見渡す限りカラフルで、綺麗だな~!!」
与助が手を広げて、久しぶりの外の空気をいっぱい吸い込み、花の匂いを体全体で感じていた。

そうこうしていると、銀次郎のところまで歩きつき、ツツジを被って周りが見えない変な踊りをしている銀次郎の肩を、与助が後ろからツンツンして話しかけた。
「オイオイ!」
「銀次郎、、お前も起きたばっかりだろうに、いったいこんなところで、何してんだ??」

「・・・・・・」
顔を隠していた赤色のツツジを持ちあげながら振り返り銀次郎が声をだした。
「ん??」
「あれ??君たちいったいどうして、こんなところにいるんだい??」

「いや、それはこっちのセリフだろ?」
与助が頭を搔きながら答えた。

「ん?僕は、ほらっ、花子ちゃんとただ遊んでいただけだけど?」

「花子ちゃん???」
与助が訝しそうに聞き返した。

「あっ、私が花子。ツチガエルの花子っていいまーす!」
ツチガエルが銀次郎の近くに来て、2人の話しを聞いて間に割り込んできた。

「あっ、あなたが花子、、さんね。」
与助がちょっと驚いて、聞き返した。

「んで?なんで、お前はこんなところにいて、そんな格好をして、そんな変な踊りをしているんだ?って聞いているんだよ!」
小太郎が与助の後ろから銀次郎に聞いた。

銀次郎が思い出しながら答えた。
「あ~、、まぁ、寝ていたからよく覚えてないんだけどね。。」
「どうやら、寝ている時に寝相が少しだけ悪かったみたいでね。部屋から出たみたいなんだよね。穴の中をコロコロ転がって、目が覚めたらここにいたんだよ。」
「穴の中のどこかが、地面が濡れているところがあったと思うんだけど、そこで濡れたり、転がったりしていたら体中 土だらけになったみたいでね。。花子ちゃんが見つけてくれた時は”きな粉餅“と間違えたくらいだからね。」

そう言うと、”きな粉餅“だった姿を思い出した花子が
「プっ、、きな粉餅ってwww」と思い出して吹き出して笑い始めて、それを見た銀次郎もまた同じように笑った。

「まぁ、そんなことだろうとは思ってな。お前が蹴って壁に凹みが出来ていたから、それを辿って来たら、ここに着いたってわけさ。」
与助が爆笑している2人を見ながら、少し呆れて言った。

「なるほどね~。しっかし、壁にそんな凹み作った記憶はまったくないけど、、少し踵(かかと)が痛いから、コロコロ回転しながら壁を”踵落とし“みたいに蹴っていたのかもしれないね。」
銀次郎が踵を触りながら言った。

それを聞いた花子が
「プっ、、踵落としってwww」とまた吹き出し、笑い始めて、それを見た銀次郎もまた同じように笑った。

「わかった、わかった。」
与助が、くだらないことで笑いあっている2人を見ながら、少し前まで銀次郎のことを心配したことを馬鹿らしく思えてきた。

「まぁ、それはわかったけど、倉庫から落ち葉とか無くなっていたけど、あれもお前の仕業か?」
与助が笑い疲れて静かになった銀次郎に聞いた。

「そうそう!!花子ちゃんに僕らの部屋の話しをしたら、自分も作って欲しいなんていわれちゃてさ~」
銀次郎が照れくさそうに答えた。

「ほんと!!銀ちゃんは、器用で、力持ちで、、カッコよくて♡」
花子が銀次郎を見ながら、嬉しそうに言った。

「そう??」
銀次郎が照れながら喜んでいた。

「わかった、わかった。」
与助が呆れ始めた。

「まぁ、みんなせっかく来たんだしさ、、、冬を無事に超えることもできたわけだからさ、、、パッと花見でもやろうよ!!」
銀次郎が嬉しそうに皆に提案した。

「まっ、そうだな!!」
与助も嬉しそうに頷いた。

ちょうど、日も暮れはじめ、夕焼けがツツジの花の赤色と白色、そして葉の緑色を際立たせ始めた。

銀次郎が、与助と小太郎に赤いツツジの花を被らせ、白いツツジの花をスカートみたいに履かせて、3人で銀次郎の変な踊りを一緒に踊らされ、最初は嫌がっていた与助も小太郎も次第に楽しくなり、踊りはじめた。

そして、その3人の変な格好の変な踊りを見ながら、他の皆は腹を抱えて笑い、日が暮れるまでカエル達の笑い声がツツジの花とともに、その一帯を覆った。

つづく。