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第13話 ホタル祭りの大事な仕事

 先日、3年ぶりにホタル祭りが開催されました。この町のホタル祭りは今回が第55回目を迎える歴史のあるホタル祭りです(詳しくは、雑誌『とよたの』をご参照ください)。

 この祭りは、通常、6月の第1週と第2週の土曜日に行われるもので、非常に多くの方が来場されます。しかし、今回は3年ぶりですし、大々的な広報もできなかったので、そんなに来場されないのかと思いましたが、とても多くの方に来場頂きました。

今年のホタル祭りのチラシ

 当館はホタル祭りの会場の一つになっているので、音楽イベントやキッチンカーなど大変賑わい、館内にも多くの方が来館されました。

 ただ、私は、この祭りの実行委員の一人ですし、もっと言えば企画委員会の委員長をやっていたり、雑誌『とよたの』を作ったりとこの祭りに深く関わっているのですけど、この祭りを一度も見たことがありません。祭りの最中にメイン会場に近づいたことすらないのです。一応、責任者ですから館を離れるわけにはいかないので、漏れ聞こえてくるステージの声や浴衣を着たお客さんの姿を見たり、 祭りの最後の花火を見て、この祭りを感じるくらいです。

 祭りの時には、私にはやらないといけない大事な仕事があるのです。

 それが、監視カメラをひたすら見て、ふらふらと展示室内を歩いて展示ケースを拭いたり、トイレが汚れていないか見たり、ゴミを拾ったりといった仕事です。そして、その際に、人の動きと人の声をじっと観察するのです。

 通常、祭りの時以外に来館される方というのは、たいてい当館に関心があって来館される方がほとんどです。しかし、この祭りの時に来館される方というのは当館の存在も知らず、何が展示されているのかも知らない方ばかり。そんな方々の意見や感想というのは、とても大事なのです。また、監視カメラを見ながら、そんな人達がどこで、どのように展示を見ているのか、それをただひたすら観察すると、貴重な視点と修正すべき部分が見えることがあります。そのため、ただひたすらに、人の動きと声を観察して、当館に関心がない人がどの部分で気持ち悪がって、どの部分で感心するのか、そこを今後のために情報を収集するというのが、祭りの時にしかできないとても大事な仕事です。
 
 また、いつも仕事で展示室に入っていますが、たまの休日に入館料を払って一人の客として展示室に入ることもあります。この時は他のお客さんと同じようにゆっくり見て周りますが、この時に、「あ~ここは少し汚いな~」とか、「ここは暗いな~」とか、毎日のように入っているはずの展示室なのに、お客さんの目線で見ると気づくことがあります。いつも見ているのに、どうして気づかなかったのだろう~と、とても不思議に思います。

 さらに、身長の高い人の目線で歩いて見たり、小さな幼児の目の高さで見て見たりしながら、展示室内を見て回ることもあります。身長の高い人だと棚の上が見えるから目隠しの板を設置したり、小さな子が見れるように棚の高さを低くしたり、色々と修正を加えています。

 博物館というのは、入館料が前払い制ですから、展示を見せる前にお金を貰います。先にお金を貰う以上、下手な物は見せれません。ですから、可能な限り、多くの人に満足して貰えるように多くの声を聞き、多くの視点を知ることが大事な気がします。

 だから、私がホタル祭りを見ることは、たぶん今後もないのでしょう