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第17話 昆虫嫌い

 毎年、この時期になると市内の小学校が社会科見学の一環として当館に来館されることが多くなります。そして、その際に、多目的ホールという部屋でこの施設のことや学校によっては「昆虫について」話して欲しいと言われるので、写真や実物を交えて話しをします。そんな時、児童の中に両手で顔を覆って昆虫の写真や実物を見ないようにしている子がいることに気づきます。
 おそらく、昆虫嫌いで、見たくないのでしょう。

 その気持ちは私にはなんとなくわかります。それは、大学3回生の時まで私も同じであったからなのだけど、ただ私の場合は写真に映る昆虫の姿までも見たくないという程ではなくて、窓のさんで死んでるハエの死骸を見たら全身に鳥肌が出たり、部屋にいる蚊を殺すことができずそのあたりにある袋に入れてそのままベランダに出したりといったもので、基本的に実物の昆虫を見るのも触るのもできなかっただけで、写真くらいは平気で見ることはできたのです。でも、見るのも嫌という過去の私以上の「昆虫嫌いな人」がいることに個人的に大変興味を持ってしまうのが、私のよくないところです。

 そこで、ここ数年昆虫の話しをしながら、見ないようにしている子がどの写真の時は見ていて、どの写真の時は見ないようにしているかを確かめずにおられないので、その子をチラチラ見ながら話しを進め、その時の写真を確認するようにしています。そうすると、動いている映像や化石の昆虫の写真は問題ないけど、昆虫標本のように脚が左右整った状態の実物の写真などは特に見ないようにしているということが多いことがわかるようになってきました。また、動く映像はいいけど、実物は生きていようが標本だろうが、見たくないということも共通しているようでした。そこで、昆虫の体の一部を拡大した写真で示してみると、それは見ることができるようでした。

標本写真でもアップの写真はまだ見れる。
生きている写真でもアップの写真なら見れる場合が多い

 なるほど、昆虫が嫌いな人というのは、おそらく昆虫のフォルムが嫌いなのだと気づくようになってきました。でも、待てよ、、、そうすると、動いている動画はどうして見れるのだ?そこで、同じような動いている動画でも、今度はヤスデが歩いている動画を見せてみると、見ないようにしてしまいます。脚か!脚が気持ち悪いのか?確かに、昆虫の動画は顔などのアップを示していたので、脚は入っていなかった。では、ミミズは?ハリガネムシは?このあたりになると、共通性が薄れるようで、昆虫は見たくないけど、ハリガネムシなら大丈夫という人もいれば、両方ダメという人もいて、わからなくなりました。また、同じ昆虫でもイラストなら、どんなにリアルなものでも平気っぽいようでした。

 難しい、、、そんな時、昔の自分を思い出します。

 過去の自分は何が嫌だったのか。。。? おそらく「虫=汚い」という思い込みが強かったのではないかと、思うようになりました。

 では、どうして虫が気持ち悪くなくなったのか。。。? 
 わからない。。。。なんで今、平気で触れるのだろうか、、、? わからないけど、たぶん なんか自分の中で変化があったのでしょう。

 だから、私が昆虫の話しをしている時、実物の写真や生体を見ないようにしている子を見る度に、「昆虫嫌いを治してあげたい!」とか、「昆虫のことを好きになってもらいたい!」などとは微塵も思わず、「見なくても全然いいですよ。いつか見れるようになるかもしれませんから」と、思いながら昆虫の話しを進めます。