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妄想アマガエル日記(3)-7月17日(月)晴れ

昨晩は、風がなく、じめじめしていて暑かった。カエルの私からしたら、最高の夜である。月もなく、暗い夜でもあったが、近くの街灯の光が一筋こちらに届くようで、この朽ち木の辺りは夜でも完全には暗くはならない。

一昨日は、いつのまにか寝てしまって、移動できなかった。
その反省を踏まえて、昨晩は暗くなるまでこの朽ち木の隙間の入り口付近でじっと身を潜め、暗くなったらすぐに出て行こうと準備していた。
いよいよ、大冒険だ!

そう思いながら、じっと入り口付近で暗くなるのを待っていると、どこからか何かの視線を感じた。

・・・・・

どうやらそれは、斜め右下に転がる石の下からこちらを見ているヌマガエルの視線だった。
「あっアイツは見覚えがある。確か、同じ夜に同じ田んぼから出てきたカエルだ。アイツもこんな近くにいたのか。」

「ところで、なんでアイツこっちを見ているんだ?」

ヌマガエルが隠れている石は、スイカ大くらいの大きな石でポツンとその石だけが転がっていた。そして、その石の下にはアリが列をなして入っていて、どうやらアリの巣があるようである。その右端の隙間にそのヌマガエルは隠れてこちらを見ていた。

「アイツも今夜あたりどっかに移動するのかな?さすがにアリがあれだけいっぱいいたら、噛まれたりして大変そうだしな、、日も当たって暑そうだし、よくあんなところに隠れるもんだ。」と思った瞬間、嫌な予感を感じた。

「まさかアイツ、この居心地のいい隙間を狙っているんじゃないか?今夜、私が出て行くのを待っているのではないだろうか?いや、間違いない」そう思い出すとソワソワしてきた。

「でも、今夜ここを出て行くのだから、別にアイツにここを取られてもいいじゃないか」そんな思いもした。

それから、「こんな居心地のいい隙間を他のカエルに取られるは嫌だな~」、「でも、もっといい隙間を探す旅に今夜出るのだから関係ないことだ」、「いや、こんな居心地のいい隙間が見つからなかったら戻るところがなくなるんじゃないか」と自問自答していた。

そして、気づいたら朝になっていた。
なんてことだ!!

気づいたら、アイツはどっかに行っていないし。。。。(ここを狙っていたわけではなかったらしい)

今夜こそは!

つづく