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夏休みのこの時期は、毎日全国からいろいろな質問メールが届く。
それらに対してなるべく迅速に、そして丁寧に資料なども添付して答えていく(それに対する返答や御礼のメールはほとんど来ないけど、、御礼などいらないから、せめてこちらのメールが届いたかどうかだけでも教えて欲しい)。
そんな中で「生き物とは何か?」といった質問があることがある。

これは、とても難しい質問で、私のような者がおいそれと答えられることではないのだが、一応生物が生きるという上で共通していることが、「ものを食べてウンチをする」、「周囲の様子を感じて反応する」、「息をする」と言われるので、その辺りを説明するようにしている。
ただ、この時、生き物に共通しているのではないか?と思うアレについては、あいつのせいで書かないようにしている。

それは、「寿命がある」ということである。

たいていの生物を見ていると産まれてから、ある程度成長すると死んでしまうから、生物というのは「必ず死ぬ」ものであると思ってしまう。しかし、「寿命という概念を持たない生物」が案外身近にいるのである。

それが、「プラナリアやコウガイビルなど扁形動物の中の、無性生殖する種類や個体群」である。

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プラナリアやコウガイビルといった生き物も有性生殖する種類や個体群は交接して、産卵して死ぬのだが、厄介なのが、無性生殖する種類や個体群であって、これらは、分裂によって殖えるのである。分裂によって殖えるというのは、1匹を1ヶ所切ると2匹になり、2ヶ所切ると3匹になるといった具合なのだ。

この生き物がスゴイところは、切ると最初に再生芽という司令塔みたいなのを作り、体をすべて再構成してしまうところである。さらに、この生き物がたぶん地球上ではじめて脳(神経系)を手に入れ、しかもそれが全身にある。さらに、体の中の隙間である体腔という空間を無くし、左右対称の体も手に入れた生物の進化を考える上で、とても重要な生き物なのである。

そして、この生き物は当館の敷地内やこの周辺にはとても多くて、私にとってとても身近な存在なのである。

コウガイビル

敷地内を散歩して、石や木をひっくり返すとよく見つかるコウガイビルは10㎝くらいだが、中には1m近くに達する種類もいて、それほど小さな生き物というわけでもない。

そして、この生き物を見たり、出前授業などで生物の話しをする時に皆の前で切って見せたりしている時に私がいつも思うことがある。

それは、「この生き物は何歳なんだろう?」ということなのだ。

分裂によってだけ殖えるということは、本体がなくならないから、今、ここにいるわけである。しかし、そう考えるとこの生き物は、何億年くらい生きているということになるのだろうか~??と考えるのである。

さらに、前述したように、この生き物の脳は全身にあるわけであるから、もし記憶みたいなのがあるとしたら、何億年分の想い出をこの生き物は持っているのだろうか?と考えるのである。

さらに、もっとも根源的なことも気になってくる。

それは、卵が先かニワトリが先かの話しになるが、
今手元にいるこの個体の最初の個体はどうやって誕生したのだろう?」ということである。

分裂によって殖えることはわかるが、では最初の個体はどうやってこの地球上に誕生したというのだろうか。。。稀に無性生殖する種や個体群でも、有性生殖する個体が出てくることがあるようだから、卵(卵包)から出てきたのかもしれないけど、、考えれば考えるほどわからなくなるのである。

ただ、寿命がないだけで、死なないわけではない。捕まえて瓶にでも入れて、そのまま置いておくと1日もしない内に簡単に溶けて死んでしまうのである。

私が知る限り、もっとも長く生きた生き物として知られるのは深海に暮らすカイメンの1万年らしい。

でも、私が敷地内でいつも見ている無性生殖するコウガイビルはそれよりも先輩になるのではないだろうか、、と、いつも落ちている棒でツンツンしながら考えるのである。

そして、「1億年くらい昔はどんなだったんだい?」と聞いてみたくなるのである。