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妄想アマガエル日記(29)-10月9日(月)曇り

「着いたよ~」
先頭を歩いていた銀次郎が振り返って、日出夫に言った。

「へ~ ここがあなたたちの暮らしている居心地がいいと言っていた場所なのね!」
「確かに、ここは湿っているし、近くに田んぼがあって小さな生き物も多そうね!」
日出夫が嬉しそうに言った。

「ここの一番上の隙間が与助と小太郎が住んでいて、そこの隙間が僕が住んでいる隙間なんだよ。」
銀次郎が朽ち木を見上げて、指差しながら説明した。

「あら?小太郎ちゃんは与助ちゃんと一緒に暮らしているの?」
日出夫が頭に乗っている小太郎に聞いた。

「あ~そうなんだよ。でも、俺は冒険家だから、ずっとここにいるというわけではなくて、一時的に今だけ居候しているだけなんだ。」
小太郎が答えた。

「ふ~ん。でも、そろそろ寒くなって来たから、早くあの建物登って、冬を越す居心地のいい場所を探さないといけないわね?」
日出夫が皆に言った。

「ん?どういうこと?」
皆が首を傾げて言った。

「あら?あなたたちはまだ冬を越したことがないのかしら?」

「そうだね。俺たちは今年カエルになったばかりだから、まだ冬を越したことはないんだ。」
与助が説明した。

「そうだったのね。」
「私たちカエルはね。寒くなると動けなくなるのよ。だから、土の中とか落ち葉の下とか朽ち木の下とか、多少寒さを防げて、外敵からも見つからないようなところでじっと寒い冬を耐えないといけないのよ。」
日出夫が皆にわかりやすく説明した。

「えーーーー!!」
皆が目を大きく見開いて驚いた。

「知らなかったぁ~」
「寒いと動けなくなんだ~!!」
銀次郎がびっくりして声を上げた。

「じゃ、急いであの建物を登らないといけないじゃないか!」
与助が日出夫の頭の上にいる小太郎に言った。

「本当だな~。ところで、いつくらいになったら動けなくなるんだい?」
小太郎が日出夫に聞いた。

「そうね~。。カエルにもよるのよね。。。ツチガエルのように冬でも水の中にいるのもいるけど、あなたたちだとだいたい11月くらいには姿を見なくなるわね。」

「じゃ、あと1ヶ月くらいしかないじゃないか~。」
与助が小太郎を見上げて言った。

「でも、冬を越すためには、やることが色々とあるのよ。」
「餌を食べておいたり、冬を越す居心地のいいところ探したり、お肌の手入れをしたり、ほんと忙しいの。」

「そんなにいろいろなことをやらないといけないの!!!」
「肌の手入れなんて、やったことないよ!!」
銀次郎が驚いて答えた。

「肌の手入れは日出夫だけだろうけど、他のことをはやっておかないといけないね。特に、冬を越す場所を探すだけ探しておこないといけないな!」
与助が皆に言った。

「ところで、これまで ひでおちゃんはどんなところで冬を越していたんだい?」
銀次郎が日出夫に聞いた。

「そうね~。。だいたい大きな木の下の根の奥の隙間とか、大きな石の下の隙間とかかしら~。。」
「そうそう、ここの大きな石の下の隙間なんかちょうどいい感じよ。」
日出夫は新しく住むことになる自分の石のを指差して言った。

「じゃ、みんなでここで一緒に冬を越したらいいんじゃない?」
銀次郎が提案した。

小太郎はその様子を想像した。
たぶん、ずっと日出夫に腹を触られるぞ。。寒くて動けないというから逃げることもできないぞ。。。いや、でも日出夫も動けないのか???
いやいやコイツなら動けるのかもしれないぞ。。

与助はその様子を想像した。
たぶん、銀次郎は動けないと言っても寝るんだから、寝相悪いぞ。。。寒くて動けないというから逃げることもできないぞ。。いや、でも銀次郎も動けないのか???
いやいやコイツなら動けるのかもしれないぞ。。

銀次郎はその様子を想像した。
みんなで冬を越すのか~。楽しそうだな~~~~。


そして、与助が提案した。
「まぁ、まだ時間はあるから、もう少し冬を越す場所は探してみようじゃないか!」

それを聞いた小太郎が
「そうだな。きっともっといいところがあるかもしれないな!!」
すぐに同意した。

与助は思った。
はは~ん。小太郎は日出夫に腹を触られるのを想像したんだな。

小太郎は思った。
はは~ん。与助は銀次郎の寝相の悪さを想像したんだな。

お互い思った。
どうにか、みんなで冬を越すのだけは回避するぞ。

つづく