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妄想アマガエル日記(70)-7月31日(水)晴れ

「オイオイ、、上に上がってきたけど、なかなか横穴ってないな~」
先頭を歩く与助が後ろにいた銀次郎に声をかけた。

「おい!!聞いているのか?」
与助が返事をしない銀次郎に再度言った。

「あっあ~、、、」
上の空といった返事であった。

「どうしたんだい??銀次郎??またさっきまで干からびていたトノサマガエルが変なことしたのか?」

「いやね~、、一番後ろを歩くさっきまで干からびていた黄色いアマガエルがさぁ~歩き方がなんか、、、変じゃないかと思ってさぁ」

銀次郎が見ている先に目をやって、与助も一番後ろにいる黄色いアマガエルを見た。

黄色いアマガエルは、壁に当たらないようにひょいひょい体を動かして、なるべく真ん中を歩こうとしているように見え、前を歩くトノサマガエルが探偵のような動きで左右に隠れながら歩くのを真ん中を取られまいと肩で押して阻止しようとしていた。

「ほんとだな~、、、あれは、あれなんだろ?」
「ほらっ、壁に当たるとあのご自慢の黄色い体が汚れるだろ。だから、壁に当たらないように避けながら真ん中を歩こうとしているんだろ。」
与助が少し呆れて言った。

「まぁ、アイツのことは気にするなよ。。。おっ!横穴だ!!ここを突き当りまで行って、突き当りを右って言っていたな。」
「もうすぐだよ!!」
与助がそう言って、横穴を指差して後ろを歩く皆に声をかけた。

その横穴は真っ暗で光はまったく入らなかった。しかし、アマガエルたちは暗闇でも色がわかる特殊な目をしているから、暗くてもそれほど問題なく進むことができる。

横穴を進んで行くと、突き当たりが見えてきた。ただ、突き当りの手前の右下に小さな穴が開いているが遠くからでも見えた。その小さな穴からは少し光が漏れていたので、特に遠くからでもよく見えたのだ。

「オイ!銀次郎、、あそこに小さな穴があるだろ??」
「そして、その先に突き当りが見えるだろ?いいか?ぜったいにあの穴には入るなよ」
「また変な干からびた奴連れて来たら、嫌だから。」
与助が後ろを振り向いて、銀次郎に念を押した。

「うん。わかっているよ。。。僕ももう懲りたよ。」
銀次郎も変な2人を助けて、花子と与助にグチグチ言われたのに懲りていた。

「よし!わかればいいんだ!!」
与助はそう言って、その小さな穴を見ないように通り過ぎようとした。
すると、
その小さな穴から、干からびたカエルの脚の先がチョイチョイ出たり、ひっこめたりしているのが視界の片隅に見えた。

オイオイ!今度は自分から足を出しているくるのか??
与助はその干乾びた脚を横目で見ながら通り過ぎようとした。
すると、
その小さな穴から、干からびた脚がより激しくチョイチョイ出たり、ひっこめたりし始めた。

「与助、、、どうする?これ?」
銀次郎がその穴の前で止まり、チョイチョイ出たり、引っ込めたりしている脚を指差して聞いた。

「いや、、、またどうせ、、、変な奴だろ?」
「関わらないで行こうよ。干からびているけど、元気そうだし。」

与助がそう言うと、その脚がぐったりと動かなくなってしまった。

「ほら~、、与助、、可哀そうだよ~。助けてあげようよ。。。」
銀次郎がぐったりとした脚を指差して言った。

すると、うんうんと同意して頷くように、その干乾びた脚がまたチョイチョイ動くようになった。

「わかった、わかった。」
「じゃ、、助けよう!」
と与助が言った。

そして、しばらくそのままその脚をみんなで眺めていた。


・5分経過

・10分経過



「オイオイ!!助けろよ!!!」
穴の中からカエルの声が聞こえてきた。

そして、穴の中から干からびたカエルが自分の力で這い出てきた。

「オイ!助けるって言ったろぉ~が~!!!」
干乾びたツチガエルが這いつくばりながら与助を見上げて叫んだ。

「いや、、、なんか元気そうだし。。。ほらっ自分で出て来たし。。。」
与助が這い出てきたツチガエルを見下ろしながら呟いた。

「いやいや、、、こんな可愛そうな干からびたカエルがいたらふつう助けるだろうぉが~!!!」

「でもね、、、ここに来るまでに2人助けたし、、、、君はなんか元気そうだったからね。。。」
「あと、これまで助けた奴がなんかね、、、あんなのでね。。」
「助けるのが少し嫌になっていたんだよ。。。」
そう言って、一番後ろの遠くにいるトノサマガエルと黄色いアマガエルを指差して言った。

干乾びているツチガエルが与助が指差した方向を見ながら
「そんなの関係ないだろ??ふつうは助けるものだろぁが~。。」と
強気に言ってきた。

「そうね~。。。ごめんね!」
「じゃあ!」
そう言って、その場を去ろうとした。

「おいおい!ちゃんと聞いていたのか?ふつうは助けるだろ??」

「うん。でも、ほら君は元気そうじゃないか。」

「どこが元気なんだよ。こんなに体が干からびていて。。。」

「わかった、わかった。。じゃ、水をかけてあげるからそれでいいかい?」

「最初っから、そうしてくれればいいんだ!!」
干乾びたツチガエルがプンプンしながら這いつくばっていた。

「銀次郎~。さっきのツユクサまだあったよね?あれを絞ってあげてよ。」
与助が後ろにいる銀次郎に声をかけた。

「わかったよ。」
そう言って、銀次郎がツユクサの茎を絞って、その干乾びていたツチガエルに水をかけた。

「ぶはっ!!!」
干乾びていたツチガエルが水を吸い、一気に膨らんで、上体を起こした。

「じゃ!」
与助がそう言って、その水を吸って膨らんだツチガエルに声をかけて先を進もうとした。

「いやいや!!ちょっと待てよ!!」

「なんだい?助けたからもういいだろ?」

「えっ!!そんな感じ?ふつうはさぁ~」
「助かってよかったね~ とか、生きていてよかったよ~とか、なんかそんな感じの会話みたいなのがあるもんじゃないのかい?」

「まぁ、ふつうはね。。。でも、ここに来るまでにもうそんなのは2回やったからね。。。」
与助がブツブツ言った。

「いやいや、そっちは2回かもしれないけど、俺からしたら初めてのことなんだ!!」
「助けてくれてありがとうよ~ みたいな感動的なセリフを言うチャンスだろう??」

「まぁふつうはね。。。でもね~。。。もうそれは2回やったからね。。。」
「助かって、よかったよ。」
「じゃ!」
与助がそう言って先を進もうとした。

「オイオイ!なんなんだよ、、その感情のない棒読みの言い方は!!」

「もう、、よかったよ。ほんと!、よかったよ。じゃぁな!」
与助が先を進もうとすると、そのツチガエルがポツポツと話しはじめた。

「ここに来る前にはアカハライモリに惚れられてしまってな~。俺はほんとよくモテるんだ。それから逃げるためにここに入ったら迷ってしまってな~。俺は動きが速すぎるから、ふつうのカエルと違ってこんな狭い道は通り過ぎてしまうんだ。そして俺は体が大きいから、アマガエルにはわからないだろうけど、これまでも色々なところで危険な目にもあったけど、全部力で解決してきた。少しだけ俺の自己紹介をさせてもらったぜ。」

「ふ~ん。じゃ、もういいかい?」
与助が長い話しを一応聞いてから、聞いた。

「ん??今の話しを聞いて、俺に関心持たないのか??」

「関心?まぁ、なんとなくどんな人かはわかったからね。」

「そうか!!俺のことをわかってくれたんだな!」

「あ~、、まぁね。。。ただの、、、、、、」
「見栄っ張りだね!」

「ん???」

つづく