妄想アマガエル日記(21)-8月27日(日)晴れ
「あっ、おはよう!」
「昨日はちゃんと寝れたかい?」
銀次郎が小太郎に声をかけた。
「あ~、とってもよく寝れたよ。」
「なかなか居心地のいい隙間だな。ここは。」
小太郎がぎこちなく答えた。
「そうだろう~。ここはとても居心地がいいんだよ。涼しいし、静かだしね。」
銀次郎が自慢げに言い添えた。
「ところで、君は体痛くないのかい?」
小太郎が恐る恐る聞いてみた。
「ん?体?全然なんともないよ!」
手足を屈伸しながら、ニコニコしながら答えた。
「ふ~ん。君は本当に頑丈な体をしているんだな~」
小太郎が銀次郎の体を見回しながら言った。
「朝っぱらから、変なことを言うな~。。。。」
銀次郎が前にも同じようなことを言われたな~と思いながら言った。
「だって、君は夜中ずっと壁にぶつかっていて、スゴイ音していたんだぜ。」
小太郎が呆れたように言った。
「あ~、そういえば、与助が前にそんなこと言っていたよ。。」
「でも、本当になんともないんだよね。。」
「寝相が悪いのはわかっているけど、あの隙間から落ちたことはないし、怪我したこともないんだよね。。」
「たぶん、音がするのは別の原因があると思うんだよ。。」
銀次郎が不思議そうに答えた。
「そっかぁ、、、まぁ、怪我がないならいいんだけど。」
与助が言っていたことが本当だったんだなと、思いながら返事をした。
「おっ、もう集まっていたのかい!朝の餌を食べるのに少し手間取ってしまって遅くなってすまない。」
与助が爽やかに言ってきた。
「ところで、今朝は何食べたんだい?」
銀次郎が与助に話しかけた。
「今日は、小さなキリギリスの幼虫とハエかな。ミミズは見つからなかったんだ。。探したんだけどね。。まぁ、それで少し時間かかったんだ。。。」
与助が少し残念そうに答えた。
「そうなのか~。。俺はさっきそこの田んぼの脇でミミズ食べたけどね~。」
小太郎がさらっと話しに入ってきた。
「いいな~。僕はクモを食べたんだけど、糸が口の中で絡まってね。。。それを取るのに苦労したよ。。」
銀次郎が困った感じで言った。
「さて、じゃ、練習してみるか。」
「まずはそこのコンクリートブロックを登ってみよう。」
与助が声をかけた。
「よし、じゃ、まずは僕が小太郎をおんぶして登ってみるよ!」
銀次郎が壁の下に登る体勢になって、背中を小太郎の方に向けて言った。
「じゃ、すまんが、背中に乗るよ。」
小太郎が銀次郎にそういいながら背中に乗った。
「じゃ、壁を登ってみるよ!」
銀次郎が小太郎をおんぶした状態で壁を登ろうとした。
すると、
「キャッ、キャキャキャ」
銀次郎がくすぐったそうに笑った。
「脇腹に足が当たって、くすぐったいよ~。。」
銀次郎が耐え切れずに地面に降りた。
「だって、どうやっても足が脇腹のところに当たってしまうだろう?」
小太郎が困ったように答えた。
「じゃ、今度は俺がやってみよう!」
与助が言ってきた。
「え~。。まだ全然登れてないんだけどな~」
銀次郎が悔しそうに言ってきた。
「まぁまぁ、とりあえず今は試行錯誤の最初だから色々やってみようじゃないか!」
与助が銀次郎をなだめるように言った。
「わかったよ。」
銀次郎が渋々納得した。
「じゃ、乗っていいよ。」
与助が小太郎に背中を向けて言った。
「よいしょっと!」
小太郎が銀次郎の背中に乗った。
すると、
「ウキャ、ウキャキャキャキャキャ」
与助がくすぐったそうに体をよじりながら、地面に降りた。
「すまない。。。。君の腹はなんかとてもツルツルしていて、柔らかくて気持ちいいんだな~。。背中がなんかすごくくすぐったくなるよ。。」
申し訳なさそうに言った。
「あ~。俺の腹は白くてツルツルしてて柔らかいだろう。」
「俺たちヌマガエルはツチガエルに似ていると言われることがあるんだが、ツチガエルは腹に黒いシミみたいな模様があるし、皮膚が硬いんだが、俺たちは模様もなくて真っ白で、やわらかいんだ。。。」
小太郎が分かりやすく説明した。
「困ったな~。。。」
銀次郎と与助が、申し訳なさそうに顔を見合わせて言った。
「よし、じゃ、俺と銀次郎が何かを持って上がってさぁ、それに君が掴まって登ってみるというのはどうだい?」
与助が提案した。
「なるほど~。それならくすぐったくないし、2人で持ち上げれば重さも半分でよくなるし、、さすが与助だ!」
銀次郎が納得して、感心した。
「じゃ、手始めにここに落ちているクヌギの枝はどうだい?」
与助が落ちていた枝分かれたした枯れた葉が数枚ついたクヌギの枝を手に取って言った。
「じゃ、こっちの枝を僕が持って、そっちを与助が持って、ここに小太郎がしがみついていたらどうだい?」
銀次郎が提案した。
「じゃ、とりあえず、銀次郎と登ってみるから、ある程度登ったところで、ここにしがみついてみてくれ。」
与助がさらに補足して、説明した。
「わかった」
小太郎が答えた。
「ん~。。片手で枝を持つのは少し難しいね。。」
銀次郎が実際にやってみて、この問題に気づいた。
「確かにな~。。。じゃ、この葉に穴をあけてそこに体を入れて、両手を開けた状態で登ってみることにしよう。」
与助が提案して、さっそく実際にやることにした。葉に穴をあけて頭をそこに入れてみた。案外うまくいった。
「うん。これなら両手が開いているから登りやすい。」
銀次郎が嬉しそうに言った。
「よし、じゃ、登ってみよう。。」
与助がそう言って登り始めた。それに合わせて銀次郎も登り始めた。すこし登った辺りで、小太郎が下の枝にしがみついた。
「よし、このまま上まで登ってみよう。」
与助が声をかけた。
しばらく、登っていくと、
「ちょっと待って、、、穴を大きく開けすぎたかもしれない。」
「こっちの葉が破れそうだ。。」
銀次郎が慌てて言った。
「じゃ、一旦降りよう」
与助が言った。
そして、地面に降りて銀次郎が葉をのぞきこみながら、いろいろと問題点をお互い話し合った。
「この方法は危ないかもしれないね。。。」
「途中で葉が破れたら危険だ。」
銀次郎が答えた。
「確かに、、、ただ、2人で持っていれば、どちらかが外れても小太郎くらい一人で持てるから安全なのはわかったな。」
与助がおんぶよりは、この方法をより試行錯誤する方がいいと結論をだした。
「何か、両手が使えて、2人で持てて、小太郎が安全に掴まれるものはないかな~」
銀次郎と与助が周りを見回して言った。
すると、
「そういえば、この前冒険しているときに、あそこの水路の手前に白いマスクが落ちていたんだ。。あれなら、輪っか状の紐が2つついているし、俺が乗れる部分もあるし、どうかな~?」
小太郎が提案した。
「なるほど~。。マスクか~。いいかもしれないな。」
与助が言った。
そして、小太郎がマスクを取りに行った。その間に銀次郎と与助はお互いに同じスピードで登る練習をしていた。
しばらくして、小太郎が戻ってきた。
「あったよ。。風で少し飛ばされていて、探すのに手間取ってしまった。」
小太郎が、白いゴムが1対ついたマスクを首に掛けながら持ってきた。
「お~!これならよさそうじゃないか。。首に掛けても痛くなさそうだし。」
与助が嬉しそうに言った。
「じゃ、さっそくやってみよう!」
銀次郎が与助に言われる前に言ってみた。
まず、与助と銀次郎がマスクのゴムを首に掛けてある程度登って、ハンモックのような状態になったところで、小太郎がそこに乗った。
「なかなか順調にいけそうじゃないか!」
与助が嬉しそうにいった。
コンクリートの壁を半分くらい乗ったところで、小太郎がマスクの上に立った。すると、マスクがひどく不安定になった。
「おいおい、立ったらダメだよ。そこで大人しく座っていてくれよ。。。」
与助が小太郎に言った。
「そうか、悪いな~。立った方がなんかカッコイイと思ったんだけどな。。」
小太郎がバツが悪そうに言った。
そのまま、大人しく座った状態でコンクリートの壁を上まで登った。最後は、立って、小太郎が自分で壁の上に立った。
「おーーーーーー!」
「スゴイなーーーー!こんな風景は初めて見た!!」
「いつも草の根際とか、土の中しか見たことないから、こんな高いところから見たのは初めてだーーーー」
小太郎が嬉しそうに叫んだ。
それを見て、銀次郎と与助は顔を見合わせて、笑った。
「じゃ、このままこの奥に歩いて行って、柳の木の下で少し休もうか!」
銀次郎が提案した。
与助、銀次郎、小太郎の順に連なって、柳の木の下までやってきた。
「おーーーー!!ここはまた涼しくて、快適な場所だな~」
小太郎がとても嬉しそうに叫んでいた。
「そうだろう~。ここは秘密の場所なんだ。」
銀次郎が照れくさそうに言った。
この前、与助とここに来た時にお互い笑った話しを一通りして、それを聞いた小太郎も大爆笑をして、しばらくの間を柳の木の下で3匹のカエルが笑って過ごした。
「いや~、、面白い!お前らはやっぱり変な奴だな~」
小太郎が嬉しそうに言った。
「じゃ、そろそろ降りようか!」
与助が提案した。。
「そうしよう!」
小太郎と銀次郎が相槌をした。
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3匹のカエルが顔を見合わせて、言った。
「どうやって、降りようか。。。?」
登ることしか考えていなかったので、降りる方法は考えていなかったのだ。
3匹のカエルが柳の木の下で並んで沈黙した。
「ちーーーーん」
つづく