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妄想アマガエル日記(9)-7月26日(水)晴れ

ここ数日、日記を書いていなかった。
それは、日記がどっかにいってしまって書けなかったからだ。

「はて?どこに置いただろうか~?」
数日前を思い出すことにした。

「確か、大冒険をした次の日まではあった。次の日に大冒険のことを書いたのは覚えている。その次の日に、体の色が茶色になって慌てたことも書いたからその次の日もあったんだ。。」
でも、その後に日記をどこに置いたのかまったく思い出せない。

「もしかしたら、寝ている時にどっかに蹴飛ばしたのかもしれない。。」
自分の寝相の悪さはなんとなくわかってきた。朝起きたら朽ち木の隙間から落ちていたこともあったし、どうしてだかわからないが、朽ち木の上で寝ていたこともあった。

朽ち木の隙間から落ちたとしたら、その下にあるかもしれないと、隙間の下を探してみたけど、見つからなかった。

「いったい、どこにいってしまったのだろうか~?」

「そういえば、、、最後に日記を書いた夜に日記を持って散歩に出たな、、」
その夜は月が綺麗だったので、月を見ながらこれまでの日記を読もうと思ったのだ。

「散歩のときは確か、、、朽ち木から出て、近くのコンクリートの塀をよじ登って、塀の上を歩きながらヤナギの木の下に行ったな、、、」

「あっ、塀をよじ登った時に日記を近くのきのこの上に置いた気がする!」
すぐに、そのきのこがあったところに行ってみました。けれど、そこにはもうきのこはなくて、腐ったきのこだった物があるだけ。

「あっ、そういえば、このきのこの上に日記を置こうとしたけど、ナメクジがいたからやめたんだった」
そこで、改めて考えなおしてみました。

「ん~、塀の上を歩いている時に落としたのだろうか~?」
塀をよじ登って塀の上から下を見ながら探してみました。しかし、見つかりません。

「あっ、そういえば、塀の上から落ちたらいけないと思って、日記をいったん朽ち木の隙間に置きにいったんだった」
そこで、ふたたび、朽ち木の隙間に戻ることにしました。

「ん~、、いったいこの隙間のどこに置いたかな~」
いくら考えても思い出せません。

朽ち木の隙間は、ちょうど自分が立てるくらいの高さがあって、奥は少し腐っていて、湿っぽくなっていて、立って歩くと5歩くらいの奥行があります。途中には、何もありません。

その隙間をぐるっと見渡しても、日記はどこにもありません。それは、そうです。これまで何日もここは探してあるのですから。

「おかしいな~、、どこにいってしまったのだろうか、、?」

ただ、その隙間から外を見ると少し風景が違うことに気が付きました。

「あれ?いつも見ているあの大きな石が見えなくなっているな。。」

そこで、朽ち木の隙間から外に出て、その隙間を見てみることにしました。
すると、朽ち木が少し動かされたみたいで、これまで使っていた隙間と位置は同じだけど、違う隙間にいたようでした。

そこで、朽ち木をよじ登って、これまで使っていた隙間に入ろうとすると、なんとその隙間には、私と同じくらいの大きさの青色のアマガエルが頭をこちらに向けて寝転んでいたのでした。

「あの~すみません。。。」
「以前、この隙間にいたのですけど、ここ数日は間違って別の隙間にいまして、、この隙間を返して頂けないでしょう、、?」
と寝転んでいる頭の上を覆うように頭を出して、恐る恐る聞いてみました。

すると、その青いアマガエルは、
「わっ!驚いた。。突然なんなんだい?」
「・・・あっ、もしかして、君がこの日記を書いたアマガエルかい?」
と、上半身を起こして、あくびをしながら日記を出して聞いてきました。

「はい」
間髪入れず、答えました。

「君は変な奴だな、、日記なんて書くなんて。なんのためにこんなもん書くんだ?」
と、青いアマガエルは姿勢を変えて、あぐらをかきながらまっすぐこちらを見て聞いてきました。

「特に、意味はありませんが、、しいて言えば、オタマジャクシの頃は毎日が楽しかったような気がするのですけど、、カエルになった時にその時の記憶をほとんど忘れてしまったのです。だから、記憶を留めるために日記を書こうと思ったんです。」
と、真面目に答えました。

「なるほどな、、確かに、オタマジャクシからカエルになった時に俺も記憶を失われたな、、、」
青いアマガエルは私が言ったことに納得してくれたように見えました。

「気にいった。これから仲良くしようじゃないか!俺の名前は与助だ。」
青いアマガエルを右手を差し出してきました。

私もそれにこたえるように手を出して握手して、自己紹介をしました。

「じゃ、これからは友達ということで、よろしく!」
与助がニコニコしながら、そう言ってきました。

「あの~、ところで、この隙間は返してもらえるよね、、?」
友達になったので、気軽に聞いてみました。

すると、ニコニコしながら断られました。
あの笑顔はずるいな~、、何も言えないよ、、と思いながら、日記を持って、間違った隙間に戻りました。
「まぁ、いっか。この隙間も自分が数日気づかないくらい居心地がいいし」

はじめて友達ができたので、いい一日になりました。

つづく