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妄想アマガエル日記(72)-8月14日(水)晴れ

「えっ」
穴の外を見て、皆が声を合わせて驚いた。

穴のすぐ下に底が見えないくらい深そうな大きな井戸が口を開けていた。

「助けてくれ======」
穴の底から黄色いカエルの声が反響しながら聞こえてきた。

「君はアマガエルだろ??吸盤使って登れるだろ======?」
与助が井戸の底に向けて体を井戸の縁から乗り出して声をかけた。

「それがな====、さっきまで干からびていたらか、、吸盤が効かないんだ====」

「あらま、、、、じゃ、水に体をつかってから吸盤が戻るのを待てばいいだろ====!」
「他のツチガエルとトノサマガエルは大丈夫なのかい====?」
与助がまた穴の底に向けて声をかけた。

「一応、大丈夫だけどな~。この壁は俺たちは登れそうにないな====。ふっ」

確か、、あの最後のカッコつけて「ふっ」はトノサマガエルか。。。
与助は返事せずに、どっちが言ったのかを考えていた。

「聞こえているのか!!オイ!!」

今の偉そうな言い方は、、ツチガエルだな。。。
与助はまた返事もせずに、どっちが言ったのかを考えていた。

「お====い。。。聞こえていますか====?ちゃんと、まだそこにおられますか====?」

「あぁ、、聞こえているよ。」
今のはツチガエルだな。与助は反響する井戸の中からの声の違いはわからないけど、言い方の違いで区別できるようになっていた。

「じゃ、、とりあえず、紐みたいなのを探してくるからさ~。。。もう少し、そのまま待っていてくれ!!」
与助が穴の底に向かって声をかけた。

「早くしてくれよ====。。ここには何かがいるみたいなんだ!ふっ」

「あ====、、わかったよ!」
与助はそう言って、後ろを振り返った。

「ということみたいなんだ。紐みたいなの探さないといけない。」

「そういわれてもね。。。ここはいったいどこなんだろ?」
花子は周囲を見渡して言った。

「そうだね~。。井戸があるなんて知らないよね~??」
「小太郎、、、君は冒険家なんだから、知らないのかい?」
銀次郎が小太郎に聞いた。

「いや~、、、井戸なんて見たこともないよ。。。」
小太郎が申し訳なさそうに答えた。

「じゃ、日出夫は何か知っているんじゃないかい?」
与助が日出夫を指差して聞いた。

「それがね~♡ なんかあの柳の木は見たことがあるような気がするのよね。。。?」
「でも、井戸があるなんて、聞いたこともないのよね。。?」
日出夫も申し訳なさそうに答えた。

「柳の木ね~~??」
与助は腕を組んで、その柳の木を見上げた。

「ん???」
与助と銀次郎が同時で目を見開いて、気づいた。

「オイ!!この柳の木は、あの柳の木じゃないのか???」
与助が銀次郎に聞いた。

「そうだよね?僕も今、ちょうどそう思っていたんだよ!!」
銀次郎も嬉しそうに答えた。

「ん?お前らはこの木を知っているのか??」
小太郎は二人を見て聞いた。

「いや、、、小太郎も知っているだろ??壁を登る練習をした塀を覆っていたあの柳の木だよ!!」
与助が柳の木を指差して言った。

「えっ!!そういわれたら、塀があるな、、」
小太郎は驚いた。

「ちょっと、その塀を登って向う側を見てくるよ!」
銀次郎がそう言って、塀をスルスルと登っていった。

「あーーーーー!!!!僕らの雑木林だ!!僕らの朽ち木もあるよ!!」
銀次郎が塀の上に登って、大きな声で叫んだ。

「真矢さんの言う通りだったんだな!!」
「本当に雑木林に着いたんだ。でも、こんな近くにこんな井戸があったなんて気づかなかったな!!」
与助が大きな声で塀の上にいる銀次郎に声をかけた。

「ほんとだねーーー。でも、この塀の上から見ると、その井戸はちょうどそこの草が邪魔になってまったく見えないから、気づかなくても仕方ないよーー。」
銀次郎も大きな声で返答した。

「なんか紐みたいなのは、そこから見てなんかないのかーーい?」
与助が銀次郎に大きな声で聞いた。

銀次郎が塀の上から下を見渡して、紐になりそうなのを探した。

「あっ!!日出夫の後ろにクズのツルが伸びているけど、あれは使えないかね?」
銀次郎が日出夫の後ろを指差して大きな声で言った。

与助が井戸から日出夫の後ろに移動して、そのクズを引っ張った。
「まぁ、これくらい頑丈で、長ければ使えるかもな!!」

「じゃ、皆でこのクズを引っ張って、井戸の中に垂らそうか!」
「銀次郎~~手伝っておくれ~~」
与助が皆に声をかけ、塀の上にいる銀次郎にも大きな声で声をかけた。

スルスルと地面に降りてきた銀次郎が、草木をぴょんぴょん飛び越えて、戻ってきた。

「よし!じゃ、このクズのツルを井戸の中に垂らそう!」
与助がそう言って、皆でクズのツルを井戸に運んだ。

「お====い。今から紐を垂らすけど、、、いいか====い??」
与助が井戸の底に向けて声をかけた。

シーーーーーーーーん

「ん??聞こえないのか====??」

シーーーーーーーーん

「ん?返事がない」
「何か、、あったのか?」

つづく。