妄想アマガエル日記(7)-7月23日(日)くもり~トノサマガエル八助編~
僕は、最近カエルになったばかりのトノサマガエルです。
生まれも育ちもこの小さな水路で、この水路はわずかな流れがあるけど、その一部に少し広くなったところがあって、そこは水が溜まって流れがありません。そこで、オタマジャクシの頃を過ごし、最近カエルになりました。
同じ夜に一緒に陸に上がってカエルになった七助と六助といつも一緒にいるけど、同じ卵塊から生まれたから兄も弟もありません。ただ、七助は少し太っていて、僕は中くらいで、六助は痩せています。六助は食べても食べても太らないようで、この中では一番よく食べるけど、痩せています。
さて、カエルになってからもずっとこの水路で過ごしているので、他の世界はよくわかりません。
この水路は便利なもので、餌となる小さな生き物は多いし、水路の上に木が覆っているところがあって涼しい。そして、隠れるところが多い。
数日前、1匹のアマガエルが水路を渡ろうと泳いでいました。
けれど、そのアマガエルが泳いでいたところは、この水路の中でも唯一流れが速いところで、そのアマガエルは苦労していました。
傍から見れば、少し上流に行けばピョンとジャンプするだけで渡れる幅が狭いところがあるのに、どうしてこのアマガエルはわざわざそんなところを泳いで渡ろうとしているのか?
七助と六助と一緒に、大きな石の上からその様子を見ていました。
「たぶん、あのアマガエルは体を鍛えようとしているのんじゃないか?」
僕がそういうと、
「いや、見てみろよアイツの顔。体を鍛えようとしているんじゃなくて、困った顔してるじゃないか」
七助が、アマガエルを指差して言ってきた。
「たしかに、、体を鍛えようとするなら、あんな困ったような表情はしないか、、」
僕がそれに納得すると、
「たぶん、あのアマガエルは、偶然、あそこを渡ろうとして、上流にそんなところがあるなんて気づいていないんだろ」
六助が、アマガエルを擁護するように言った。
「でも、あそこ以外、ほとんど流れなんてないじゃないか。あそこだけ、あんなに流れがあるし、幅が広いんだ。なんか意味があるんだろうよ」
と僕が、腕を組んで想像するように言った。
「あっ、ようやく向うの岸に泳ぎついた。なんてザマだ。疲れ切っているじゃないか」
七助が少し呆れた感じで言った。
さて、これからあのアマガエルはどうするんだろうか?
その様子を見ていると、水路を上流側に移動していった。
そして、上流側の水路を見て、口と目を見開いて、ショックを受けていた。手で口を覆っている。
どうやら、泳がなくてもこの水路を渡れることを知って、ショックを受けているようだった。
六助が言っていたことが、合っていたのか。。。
皆がそう思った。
そのアマガエルの背中を見ながら、3人でしんみりとしてしまった。
そして、
「運が悪いアマガエルだな、、、」
3人同時に、そうつぶやいた。
つづく