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一年中、カブトムシやクワガタムシの成虫を生体展示しているので、毎日世話をする。これらの飼育の方法をwebや図鑑などで見ると、どれにも霧吹きで水を土などにかけてケース内の水分を維持すると書いてある。

これまで、何も疑いなくそのようにしてきた。

ただ、彼らを解剖して体を詳しく調べるようになって、さらに春に昆虫の脱皮についての企画展を作るに際して再び体(気管や皮膚)を調べるようになってから、大気中の水分が昆虫(特に甲虫類)の体液に関与する可能性は低いと思うようになった。

水分は口からとるのである。

皮膚から水分が入る余地はないのではないか。昆虫の皮膚は各層によって耐水や酸、有機溶剤から体を守る非常によくできた頑丈な皮膚になっている。

つまり、皮膚から大気中の水分が入る余地はたぶんない。では、それらを繋ぐ膜の部分から水分が入るというのだろうか、、、ただ、この膜の部分は体液にすぐには接していないから、たぶんそれもないと思う。逆に皮膚から水分が取り込めるということは、皮膚から水分が蒸散する可能性もあるからたぶんないと思う。

それでは、大気中の空気を呼吸の時に吸う時に一緒に水分が入るというのだろうか?

昆虫が呼吸のために空気を吸う時は気門と呼ばれる開閉式の通気口がある。基本的に胸部に2対、腹部各節に1対あるのだが、これはあまり運動しないときは基本的には大体閉まっていて、呼吸が必要な時や運動して酸素が必要な時は開く。とはいえ、ここから水分が入った空気を体に入れる可能性はある。

昆虫の気門の位置

しかし、この気門からは気管という皮膚と同じキチン質の管で体の中に空気を送るのであるが、皮膚と同じようなつくりの管だから、それがすぐに体液に水分を補給するとは思えない。気管の先は、各器官(細胞)に酸素を送るが、そこから体液に水分を補給するのかはわからない。たぶん、ゼロではないと思うが、そんなに補給はしないと思う。気管の役割は酸素を運ぶことで、水分を運ぶことではないのだから。

トンボの気管

そんなことを考えて、昨年から、展示しているクワガタなどの土に霧吹きをかけることをやめてみた。でも、ヘラクレスオオカブトなどは、一昨年の冬に羽化した個体がまだ元気に生きているし、他のクワガタなどもみな元気だ。

人も体の7割が水分と言っても、布団がベチョベチョだと気持ちわるい。昆虫もあまりベチョベチョするのはよくないと思う。

水分は口からとるのである。

カラカラの土で長生きしているギラファノコギリクワガタ
(土はひっくり返った時に起き上がるために必要)

ただ、幼虫の場合は餌であるから湿らせた方がいいし、蛹の時は蛹室を維持するためにも多少湿らせた方がいい。さらに、産卵させる時も土は多少湿っていた方がいいと思う。ここで書いたのは、成虫の個別飼育の話し。

これまで何かで読んだか、誰かに言われたことに対して、疑問を持つことが多くなった。

以前、カエルを手で持つと火傷(やけど)するから持ってはいけないと言われたことがあった。その時はそうなのか、、と思っていたけど、日々多くのカエルを見ていると、人間の体温なんてせいぜい37℃くらいなものだろう。

でも、彼らが住む田んぼの水温はそれより高くなっている時だってあるだろうし、炎天下でアスファルトの道路を横切るところも日々目にする。

本当に手で持つと火傷するかを調べるには、触る前と後で組織切片でも作って見ないとわからないのかもしれないけど、そこまでやるつもりもないから本当のところはわからない。

他にも、ムカデ(オオムカデ類)はヒノキの匂いを嫌うからヒノキの粉を撒いているという人に出会ったことがある。ただ、ヒノキ林で採集したことが多々ある。

また、ハリガネムシは爪の間から体内に入るという人に出会ったこともある。もし、爪と肉の間に入るにはそれらを切り裂く口がないといけないが、ハリガネムシの成体は口が退化しているし、もし、入り込めたとしても体の奥に移動するためには、ミミズやゴカイのように体を保持する返しのような毛がないと奥には進めないがハリガネムシの体に毛はない。

さらに、マダニに刺されたらエタノールをしみ込ませたティッシュペーパーで数分押さえて殺すと教えて貰ったことがある。ただ、マダニをエタノールで満たしたシャーレに入れてどれくらいで死ぬのか観察したことがあったが、15分くらいは生きていた。つまり、マダニに刺された人がマダニを殺すにはお風呂にエタノールを満たして体ごと15分以上入らないとマダニは死なないと思うけど、そんなことをしたら人の体も固定される。
マダニにワセリンを塗って窒息させると言っていた人もいた。ただ、案外 寄生性の生物というのは、呼吸に対して強い。だから、体の一部にワセリンを塗ったとて、かれらを窒息させることなんてたぶんできないのではないかと思う。

自分でも思うが、ほんとに、面倒くさい性格である。