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妄想アマガエル日記(68)-7月25日(木)晴れ

「オイオイ、、最初を右に曲がってからだいぶ歩いたけど、まだ突き当りに着かないな~」
先頭を歩く与助が後ろにいた銀次郎に声をかけた。

「おい!!聞いているのか?」
与助が返事をしない銀次郎に再度言った。

「あっあ~、、、」
上の空といった返事であった。

「どうしたんだい??銀次郎??」

「いやね~、、一番後ろを歩くさっきまで干からびていたトノサマガエルのさぁ~歩き方がなんか、、、変じゃないかと思ってさぁ」

銀次郎が見ている先に目をやって、与助も一番後ろにいるトノサマガエルを見た。

トノサマガエルは、日出夫にコソコソと隠れるように歩いていて、チラチラと花子を見て、少し距離をとりながら探偵のようについて来ていた。

「ほんとだな~、、、あれは、あれなんだろ?」
「ほらっ、花子の視界に少しでも自分が入ると惚れられてしまうと思い込んでいるから、視界に入らないように歩いているんだろ?」
与助が少し呆れて言った。

「まぁ、アイツのことは気にするなよ。。。おっ!突き当りだ!!ここを左って言っていたな。」
「そして、その先を上に登って、、、と言っていたけど、、」
与助がそう言って、2又に分かれた道の片方を指差していった。

そこには、急な坂道のように上に伸びる道とまっすぐな道があった。

「真矢さんは、突き当りを左に行って、その先を上に登って、途中の横穴を進むって言っていたから、、、こっちでいいんだよな??」
後ろにいる銀次郎に声をかけた。

「でも、、、、ほら、この天井の部分に穴が開いているよ!」
そう言って、天井を指差した。

「あっ、、ほんとだ!!」
「でも、この穴は小さいし、なにより、吸盤がない小太郎とか花子とかは登れないし、日出夫なんて入れないから、真矢さんがこんな道を言うわけないだろ?こっちのこの坂道を上って言ったんだよ!!」
与助が腕を組みながら、少し考えて言った。

「でも、、上に登るって言っていたんだよ。もし、この穴のことだったらいけないからさぁ~」
「とりあえず、入って確認してみるよ。」

ワクワクしている銀次郎をもはや与助が止めることはなかった。
壁をスルスルと登り、天井に開いた穴に頭を突っ込み入って行った。


「なかなか帰ってこないな~。。。」
与助が銀次郎の帰りが遅いので、少しイライラしてきていた。

「ほんとだな~。。もう15分くらいは経つよな~。。」
小太郎もイライラしてきていた。

「でも、、、もしかして、道に迷って、、今度こそ干からびてしまったんじゃないの??」
花子が心配そうに、イライラしている与助と小太郎に声をかけた。

さすがに、さっきは大丈夫だったけど、今回こそは何かあったのかもしれないと与助も少し心配になり、スルスルと壁を登り、その穴に頭を突っ込んで声をかけた。
「おーーーい!!銀次郎~~」
「大丈夫かーーーー」
「おーーーい!!」

シーーーーーーーン

まったく、返事がない。
「ちょっと、俺が見てくるしかないな!!」
与助が意を決して、穴の中に入ろうとした。
その時、穴の奥から何やら、音がした。

ザー、ザー、ザー、、

「ん??まさか!!またか?」
「または、、、本当に今回は干からびて体を引きずっているのか??」
与助が心配と呆れの両方の感情の中、穴を見つめていた。

すると、穴の中からヌッとカエルの脚が出て来た。

「おい!!これは、また干からびたカエルの脚だけど、、、アマガエルの脚だぞ!!」
小太郎が見上げながら、指差して言った。

「えっ、、、もしかして、銀次郎なのか!!それはいけない、引き出そう!!」
そう言って、その穴からでたアマガエルの脚にぶら下がり、与助の脚を小太郎が持って、小太郎の腰を花子が持ち、花子の腰を日出夫が持ち、少し離れた岩陰で干からびていたトノサマガエルが傍観していた。

ウン、トコ、ドッコーーイ
ウン、トコ、ドッコーーイ

また、小太郎が変な掛け声を言って、皆がそれに合わせて引っ張った。

ウン、トコ、ドッコーーイ
ウン、トコ、ドッコーーイ

そーーーーーれ!!  

ポンっ!!

ようやく、穴から体が抜けて、全身が出てきた。
そして、小太郎の上に与助が落ちて、引っ張っていた花子と日出夫も腰ついた。

「いてて、、、、」
みんな踏みつぶされたり、腰を付いたりして痛そうにしたが、すぐに干からびた銀次郎に集まった。

「ん???このアマガエル、、、黄色いね~」
「アマガエルって干からびると黄色くなるのかい?」
小太郎が与助に聞いた。

「どうなんだろうな~??干からびたことないからな。」
与助が首をかしげて言った。

すると、天井の穴から、ピョンと銀次郎が降りてきた。

「ん??あれ??銀次郎~。お前、無事だったのか。じゃ、このアマガエルは誰なんだい?」
与助が銀次郎に声をかけると

「まぁまぁ、、説明はあとで。とりあえず、このアマガエルに水をあげないといけないね。」
銀次郎はそう言って、さっき取ってきたツユクサの茎を絞って水をかけた。

すると、
「ぶはっ!!!」
干乾びていた黄色いアマガエルが水を吸い、一気に膨らんで、上体を起こした。

「おっ、よかった~、生きていていたか!!」
銀次郎がほっとして、声をかけた。

つづく。