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妄想アマガエル日記(46)-1月14日(日)晴れ

「えっ!!」
銀次郎と与助が光が当たって暗闇から浮かび上がった3匹のトノサマガエルを見て同時に声がでた。

「地底蛙じゃなくて、ただのカエルだね?」
銀次郎が与助の後ろから出て来て言った。

「そうだな。。まぁ、地底蛙なんているわけないから、地底蛙なんて疑ってもいなかったけどな。。。」
与助が少し地底蛙と思ったことを誤魔化すように言った。

3匹のトノサマガエルが少しずつ近づいてきたので、与助と銀次郎も近づいた。

「君たちはいったいどこから来たんだい?」
与助が聞いた。

「俺たちは水路の上流のところから使われなくなったモグラのトンネルを歩いていたら、ここに着いたんだよ!」
七助が代表して答えた。

「へ~。。あんな遠くまでこのトンネルは続いていたのか。。水路の上流って結構遠いもんね~。」
銀次郎が思い出すように言った。

「へ~。。君も水路に行ったことがあるのかい?」
七助の後ろにいた八助が横に出て話しかけてきた。

「そうだね。。。前に、少し冒険したことがあってね。。」
「その時にあの水路を渡るのに苦労してね。。。何度も溺れそうになりながら、苦労して渡ったらさぁ~、、少し上流見たら泳がなくても渡れるところがあってさ~(笑)心底自分の運の悪さにガッカリしたんだよね~。。」
銀次郎が頭をかきながら情けなさそうに言った。

それを聞いた七助と八助と六助は顔を見合わせて、思い出していた。
あっ、、あの時の運の悪いアマガエルだ!

「へ~。。そうなんだ~。あそこ以外は流れ速くないからね~。。運が悪かったね。。。」
八助がフォローするように言った。

「ん?よく今の話しで詳しい場所までわかったね?」
与助が気になって指摘した。

「んん~。。そう?俺たちはずっとあの水路に住んでいるから、ちょっとの話しで場所もわかるのさ。あははは・・・」
八助が必死に誤魔化した。

その様子を見て与助は、銀次郎が苦労して泳いでいたことをこの3人が見ていたのだろうと一瞬で感じとった。そして、そのぶざまな姿を見たのにそれを銀次郎のために隠しているのに気づいた。そして思った。
彼らはいい奴らだ。

「ところで、君たちはどこに行こうとしていたんだい?」
与助が質問した。

「あ~。寒くなってきたから、冬を越す場所を探していたんだよ。」
六助が後ろから前に出て来て言った。

「そうなんだ~!!じゃ、ここで一緒に冬を越したらいいんじゃないかい?」
与助が提案した。

「えっ。いいのかい?そんな広い空間があるようにも見えないけど。。」
七助が周りを見ながら言った。

「この奥にね、俺たちが冬を越すための広い空間があるから、そこで冬を越したらいいさ。ちょうど、窪みは3つ空いてるし、そこを部屋にする朽ち木の樹皮も落ち葉も石もまだいっぱいあるし。。」
与助が朽ち木の樹皮や落ち葉を指差して言った。

「窪みに朽ち木?よくわからないけど、その空間をまずは見せてくれないかい?」
七助が与助に聞いた。

「おっ、そうだね。こっちだよ。」
与助、銀次郎、七助、八助、六助の順にトンネルを歩いて広い空間まで進んだ。

「おっ~!!!これはいい空間だね~!!」
七助が空間を見渡して喜んだ。

「本当だね~!!これは素晴らしい!!」
八助も同調した。

「そして、ここに窪みが3つあるでしょ。ここをほらっ他の窪みが部屋みたいになっているでしょ。あんな感じで部屋にして各自部屋で寝るってことさ!」
与助が他の部屋を指差しながら言った。

「なるほどね~。。。これはいい!!」
六助が心底感心して言った。

「じゃ、とりあえず、君たちを日出夫と小太郎にも紹介しないといけないから、まずは名を教えてくれないかい?」
与助が3人に聞いた。

「あっ、そうだったね。」
「俺は八助で、こっちが七助、そしてこっちが六助」
「俺たちはトノサマガエルなんだ。君たちはアマガエルだね。じゃ、その日出夫と小太郎ってのもアマガエルなのかい?」

「いや、俺たちはアマガエルだけど、日出夫と小太郎はアマガエルではないんだ。」
「銀次郎、2人を呼んで来てくれよ。」
与助が銀次郎にお願いした。

「うん。わかったよ。」

その間、与助と3人が色々な話しをしていた。すると小太郎が部屋から出てきた。

「あっ、あれがね。ヌマガエルの小太郎なんだ。冒険家なんだ。」
与助が小太郎を指出して紹介した。

そして、日出夫が部屋から出て3人の後ろに歩いて近づいてきていた。
しかし、小太郎の紹介をしている与助の方を3人は見ていた。

「あっ、そして、君たちの後ろにいるのがね。日出夫なんだ。」
与助が指差して言った。

3人のトノサマガエルがゆっくり振り返るとそこには壁があるだけだった。

「ん?どこにいるんだい?」
六助が不思議そうに言った。

「いやいや、君たち見てるじゃないか。。。」
「あっ、じゃ上を見上げてごらんよ。」

そう言われて、3人がゆっくり見上げると、天井から空いた小さな穴から一筋の光が大きな大きなカエルの顔だけを照らしだし、大きな大きなカエルが自分たちを見下げているのが見えた。
壁と思っていたのが、大きなカエルの腹だったことにその時気づいた。

それを見て、3人が目を丸くして、心の中で叫んだ。
カッチョイーーーーーーーー!!

つづく。