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妄想アマガエル日記(65)-7月11日(木)曇り時々雨

「じゃ、そろそろ、雑木林に戻ろうか!!」
与助が皆に声をかけた。

「そうだ!そうしよう!!」
小太郎もそれにすぐに同調して答えた。

「え~~、、まだ来たばっかりだし、、もう少しここにいてもよろしいのじゃありません?」
真矢が与助を見つめながら甘えた声で言ってきた。

「でもっ、、ほら、、もう暗くなってきたしね、、そろそろ、鳴く練習とかもしないといけないからね。。」
「ねっ、、」
与助が銀次郎を振り返りながら言った。

「まぁ、そうだね。暗くなってきたから、そろそろ帰ろっか。」
与助に言われて、特に何も考えずに銀次郎が答えた。

「じゃ、帰ろう!!」
与助が皆に言った。

「でも、、、ね。。。」
「ここがどこかもわからないから、どうやって雑木林に戻るんだい??」
小太郎が少し困った感じで質問した。

「あっ、、そうだったな。。。俺はここまで来る間ずっと寝ていたし、、、いったい、どこにあの雑木林はあるんだ??」
与助も困ってしまった。

「あっ、、与助さま、、雑木林への行き方なら、あたしわかりますわよ。。」
真矢が与助の後ろから声をかけた。

「えっ。。そうなの??」
与助が少し戸惑いながら答えた。

「え~、、まぁ、、あたしたちも冬の間はいつもあそこの朽ち木の中で過ごしますから。。。」
真矢が与助に見つめられて少し恥ずかしそうに答えた。

「じゃ、教えてくれないかい??」

与助がそういうと真矢が湖の右奥を指差して言った。
「あそこに壁みたいなのがありますでしょう?あれを越えると大きなヤナギの木がありまして、その奥が雑木林になんですわ♡」

「えっ!!そんな近いの??」
与助が驚いて答えた。

「じゃ、帰ろう。真矢さん、色々と教えてくれてありがとう!」
与助がそそくさと御礼を言って、皆に声をかけた。

「あの~~、、あの壁は迷路みたいになっていますから、あたしも一緒に途中まで行きましょうか??」

「いや、、、大丈夫、大丈夫!ありがとう」
与助がすぐに断った。

「でもですね、、この前もアマガエルがあの壁に向かってから消えてしまいましてね。。。その前はトノサマガエルも、、そしてその前はツチガエルも消えまして、、危険なんですわ。」
真矢がポツリポツリと説明した。

いや、、、それは、あなたが付きまとったから消えたんじゃないのか。。
与助はそう思っていた。

「なんでそのカエルたちは消えたんだい?」
銀次郎が素直に不思議そうに聞いた。

「そうですね。。まぁ、あたしが悪いと言えば悪いのですけどね。。」
「とてもイケメンたちでしてね。。。いつも近くでチラチラ見ていたのです。まぁ、あたしとしてはただ見ているだけでよかったのです。でも、相手はそれが気持ち悪かったみたいで、、、あたしの忠告を聞かずにあの壁に一人で行ってしまうものだから、、、」
「あの壁はほんと迷路みたいなので、危ないのですよ。。。。」
真矢が申し訳なさそうに答えた。

「へ~~、、そうなんだ~~。じゃ、真矢さんに案内をお願いしようよ。」
銀次郎がニコニコしながら与助に言った。

「そっ、、そうだな。。」
与助もしぶしぶ受け入れた。

それから、真矢を先頭に銀次郎、花子、与助、小太郎、日出夫の順にその壁に近づいて行った。

その壁はコンクリート製の小さな倉庫のようなもので、その下に小さな隙間が空いていた。その隙間は日出夫がギリギリ入れるくらいの大きさで、どうにか皆、中に入ることができた。

「さて、ここからが迷路みたいになっていましてね。もし、行き方を1回でも間違えると一生ここから出れなくて、干からびてしまいますから、いいですか?」
「ただ、あたしはこれ以上は行けませんから、行き方を説明しますので、皆さん覚えて行ってくださいね。」
「いいですか。まず、最初を右、突き当りを左、その先を上に登って、途中に横穴がありますから、そこに入って突き当りまで行って、突き当りを右です。」
「覚えましたか?」
真矢がゆっくりとわかりやすく説明した。

「え~と最初が右で、その先を左で、突き当りを左だったかな?」
銀次郎が一生懸命思い出した。

「違うだろ。最初が右で、次を左、その先を上に登って、途中の横穴に入って、突き当りを右だろ。」
与助が自信満々に答えた。

「さすがですわ~♡」
真矢がうっとりした顔で与助を見つめた。

そう言われて与助が少し照れくさそうに答えた。
「まぁね、、」
もう真矢のことをストーカーだとか、変な風には思っていなかった。親切に教えてくれる姿を見て、逆に好感を持っていた。

「じゃ、大丈夫そうですわね♡」
「気をつけていってらっしゃい。たまには遊びに来てくださいね(特に与助さま♡)。」
「あと、何度も言いますけど、、絶対に今の道順を間違えたらダメですからね!」
真矢が最後に釘をさして、別れを告げた。

皆で真矢に御礼を言って、真矢に見送られながら、暗い倉庫の中に歩みを進めた。

つづく。