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昆虫の標本を収蔵するときには、標本箱というものに入れて保管する。昆虫の場合は、ヒメマルカツオブシムシなどの昆虫に食害されるのできっちり箱にいれてこれらの虫から守らないといけない。そもそも、外には色々な美味しい食べ物があるだろうに、これらの虫はどうしてこんな標本を食べたがるのか、、本当によくわからない。

そして、標本箱には基本的に『防虫剤』を入れるのが博物館の習わしになっている。ただ、この点が学芸員になって色々な博物館の標本を見るにつけて、ずっと不思議でしょうがない。

確かに、インロー式桐製標本箱と呼ばれる桐製の箱でガラスの蓋がなくただの木の箱に入れるのなら『防虫剤』を入れるのはわからないでもない。
でも、博物館が使用する標本箱はドイツ式標本箱と呼ばれるガラスの蓋がある箱である。

ドイツ式標本箱

この標本箱はきっちりと閉まるし、開けるときはヒメマルカツオブシムシが飛び交うようなところで開けることなんてない。

ドイツ式標本箱を横から見たところ

いったい、この箱の中にどうして『防虫剤』を入れる必要があるのか、、?
そもそもこの箱の中には入って来れないではないか、、と思うである。
ヒメマルカツオブシムシが超能力でもあってガラスをすり抜ける能力でもあれば別であるが、そんなことはたぶんできない。

ただ、標本を作成して乾燥している時にこの虫に卵を産み付けられたりして、箱に入れた時点で標本に入ることがあるとは思う。ただ、この時点ではすでに箱の中にいるのだから、『防虫剤』は役に立たない。
防虫剤に殺虫効果があるのか、以前 容器に防虫剤とヒメマルカツオブシムシを一緒に入れてみたが死ぬことはなかった。

そんなことを思ってから、『防虫剤』は入れなくなった。

ただ、防虫剤を入れておくとカビなくなると聞いたことがあったので、その点も折を見て観察しているが、カビが出る標本は今のところないので、問題なさそうである。

また、そもそも殺虫剤というのが、昆虫標本などの中に入りこんでいる卵などに効くとはどうしても思えない。

以前、一部の植物標本にタバコシバンムシというのが発生したことがあった。殺虫剤で燻蒸して標本一式を殺虫できたと思っていた。確かに成虫や幼虫は死んでいた。しかし、数か月してまた発生した。どうやら、植物の茎の中に卵などを産んでいてそれから出たようだった。

その時、殺虫剤は効かないと思うようになった。

結局、これらタバコシバンムシを退治する方法としては、いろいろとやった結果、標本を一晩冷凍するのが一番効果があった。そこで、それからというもの、植物標本は乾燥したら一晩冷凍してから乾燥させて、完全に生物を根絶した後に標本に作製して、それを箱ごとに袋に入れてその袋を圧着して完全に密閉した状態で箱に入れるようにした。それ以来、虫が出ることはなくなった。

生物を根絶してから乾燥して標本にして袋に密閉した標本

だから、昆虫標本にヒメマルカツオブシムシが出た場合も殺虫剤などは使わず、箱に入っている標本を一晩完全に冷凍してから乾燥させて保管するようになった。それ以来、彼らは出なくなった。

そもそも私は、防虫剤(特にナフタレン)の匂いが、どうしても好きになれない。