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妄想アマガエル日記(38)-11月16日(木)曇り

ノシッ、ノシッ、ノシッ

歩く音が次第に大きくなってきた。
そして、ぬっと大きな体が視界に入った。
やはり、日出夫だ。
大きな体をゆっくりと前進させている。
息を殺して通り過ぎるのじっと待った。

ノシッ、ノシッ、ノシッ

どうにか気づかれず通り過ぎて行った。
「ほっ。。」
皆が安堵した。

まず与助が窪みから頭を出して周りを見渡した。

「どうやら、姿が見えないから、隙間の上に行ったようだな。もう大丈夫だろ。」
小さな声で2人に言った。

「そっかぁ~。。。よかった~」
銀次郎が脚をぴ~んと伸びた状態で仰向けで言った。

「ほんと、改めて見ると日出夫って大きいよな~。。あんなのに襲われたらひとたまりもないや。。」
小太郎が身振り手振りしながら2人に小声で言った。

「よし!じゃ、隙間の上には日出夫がいるかもしれないから、来た道を戻って穴の出口から出るか!!」
与助が提案した。

2人がこくりと頷いた。

そして、銀次郎を2人でタンカのように持って、与助が前で小太郎が後ろで窪みから出て方向を変えようとした時、左奥の大きな岩が動いたように見えた。

そして、その岩がぬっと近づいてきて
「あら!!与助ちゃんと、銀次郎ちゃんと、小太郎ちゃんじゃないの!!!」
日出夫が3人の後ろから声をかけてきた。

その瞬間、小太郎が腰を抜かして銀次郎を落としてしまった。そして与助が必死に2人を引っ張ろうとするがさすがに2人は動かせなかった。

「どうしたのよ~。。なんで、そんなに私を怖がるのよ~」
日出夫が困ったように言ってきた。

「だって、だって、だって、お前、、、俺たちを食べようとしているんだろ?」
与助が地面に尻を付けて震えながら言った。

「ん???私がなんであんたちを食べるのよ!」
日出夫が唖然とした。

「俺は知っているんだぞ!!お前の報告書を見たんだからな!!」
与助が日出夫を指差して言った。銀次郎と小太郎は身動きできずに与助を見ていた。

「報告書???なんのことよ!!」
日出夫がさらに唖然とした。

「その穴のところにお前の蛙第3形態計画ってのことだよ!!」
与助が少し冷静になってきた。

「蛙第3形態計画?????? なんのことよ!!」
日出夫はわけのわからないことを言われ過ぎて、少し呆れてきた。

「だから、、、この報告書のことだよ!!」
与助が少し戻って、穴の脇から報告書を取ってきて、報告書をパンパン叩きながら日出夫に見せた。

「ん~???これのどこが報告書なのよ?」
「これはただの私のメモ帳よ。」
日出夫が頭をかしげて困ってしまった。

「ん~???メモ帳?」
与助も少し困ってきた。でも、こいつは俺たちを騙そうとしているにちがいないから、騙されるもんか!と思った。

「そうよ!!どう見てもこれはメモ帳でしょうが。。。どこにそんな蛙なんとか計画なんて書いてあるのよ。。」
日出夫が本当に困ったように言った。

「じゃ、ここは暗いから外に出て話しを聞こうじゃないか!!」
与助が提案するように見せて、逃げる機会を作ろうとしていた。

「そうね!!じゃ、外に出ようじゃないの!!小太郎ちゃん大丈夫なの?銀次郎ちゃんもどうしちゃったのよ!!まぁ、とりあえず、出ようじゃないの!!」
日出夫も少しムキになってきた。

「小太郎、大丈夫かい?銀次郎を持って外に出れるかい?」
そう言いながら、外に出たら逃げるぞとアイコンタクトを送った。

「あぁ、、、大丈夫さ。少し足をくじいただけだからな。。」
少し震える声で強がった。

与助、銀次郎、小太郎、日出夫の順で穴の中を進み、外に出た。
ただ、小太郎がまだぎこちなくしか歩けずに少し時間がかかった。
この状態だと3人で逃げるのは難しいなと与助は思った。
もう少し日出夫の話しを聞いて、その間に時間を稼いで、逃げる機会を待とう。

「ほら、どこにそんな蛙なんとか計画なんて書いてあるのよ!!」
日出夫が与助が持っている冊子を指差して少し怒っていた。

「どこって、ここの表紙にバッチリ書いてあるじゃないか!!」
与助が明るいところでその表紙を指差して言うと、暗いところでよくわからなかったが、このように書いてあった。

が快適に越冬するために準備にするもの。
一にすることは、銀次郎たち
人の部屋を作らないといけない。部屋の
は色々あるけど、まずはちゃんと
勢を整えないといけないから、穴の中を
測しとかないといけない♡
用紙に部屋の仮の設計図を書いとこう♡
)ある程度態勢が整えられるまでは、部屋のことは皆に内緒にしておこう♡

「ほら、そんなことどこにも書いてないじゃないの!!」
「これは、あの穴の中で皆で一緒に冬を越すためには各部屋を作らないといけないと思ったから、あなたたちにサプライズで準備しようと思っていた時に書いたメモ帳よ!」
日出夫は怒っていた。

「あれ~~ あ~最初の一文字目以外はナメクジが這ったからか少し薄くなっていて暗闇では見えなかったんだ!!」
与助がとても恥ずかしくなっていた。

「でも、この中にアマガエルを食べやすい大きさに切ってとか書いてあったじゃないか!」
与助がいや騙されるもんかと思いながら、返した。

「アマガエルを食べやすい大きさに切って??そんなこと書いていた?」
「ちょっと見せてくれる?」
日出夫が与助が持っていた冊子を手に取った。

「あれ??なんでこれ開かなくなっているのかしら??」
「たぶんナメクジが歩いて開かなくなったのね。」
そう言って、少し破きながら、無理やりページを開いた。

「もしかして、ここの ~アマガエルが食べやすい大きさに切って~ のとこを見間違えたのかしら?」
「アマガエル”を” じゃなくて、アマガエル”が” よ。”が”」
日出夫は指差しながら説明した。そして、少し面白くなってきていた。

「ん?? ”を” じゃなくて、”が”?」
「どういうことだい?」

「だからね、これは何度も言っているけど、あなたちと一緒に冬を越すために準備するものをメモしたメモ帳なのね。」
「あなたたちに栄養のあるものを食べてもらいたいと思ったから、簡単なレシピみたいなものをアマガエル用とヌマガエル用作っていたのよ♡」
日出夫が笑いながら言った。

「でも、銀次郎をこんな目に合わせて、動けなくして本当は食べようとしているんじゃないのか?」
与助が騙されるもんかと思った。

「だからね。。。銀次郎ちゃんのことだから、ちゃんと用法・用量を守らないかもしれないし、ナメクジの粘液を取る方法を教えていなかったから心配して探していたところだったのよ♡ いつもの隙間にもいないし。。」
「想像してた通り、ナメクジの粘液塗り過ぎてるし。。。」
日出夫が銀次郎を見下ろして、ため息交じりで言った。

「でも、肌の手入れなんて俺たちには必要ないだろ!なんかあるんだろ?」
「肌の手入れしないくらいでペラペラになんてなる訳ないじゃないか!!」
与助が未だに疑いを持って言った。

「あ~。。まぁ、あれは大げさに言ったかもしれないけど。。でも、肌の手入れは大事なのはほんとよ。。」
日出夫が目を逸らして、少し遠くを見た。

「ほら!!なんかあるんだろ?」

「まぁ、、与助ちゃんならわかると思うんだけどね。。」
日出夫が与助に少し近づいて与助にだけ聞こえる声で言った。

「銀次郎ちゃんの反応が良すぎるから、、、なんか嘘とか言って、反応みたくなるでしょ♡ 驚くところがとても可愛くて見たくなるのよ、、、茶目っ気よ茶目っ気♡」

それを聞いた与助は
「うん、、、まぁ、、、、わからないでもない。アイツはとても反応がいいからな。。。」
小声で日出夫に言った。

「ん???何を話しているんんだい?」
銀次郎がボソボソ話して2人を下から見ながら言った。

「どう?誤解は解けたの?」
日出夫が元の位置に戻って与助に聞いた。

「ん~~。。。わるかったよ。。誤解していた。。。ごめんよ。」
与助が納得して、謝った。

「じゃ、とりあえず、冬を越すための部屋を作るサプライズはバレてしまったから、これからみんなで相談しましょ♡」
日出夫が嬉しそうに言った。

「そうしよう。」
与助が日出夫のメモ帳をパラパラ見ながら答えた。

「あの~~、、、その前にさぁ、この体を動けるようにしてもらえない?」
銀次郎が脚をぴ~んと伸ばした状態で申し訳なさそうに言った。

「あ~、、そうね。そうしましょ♡」

「あの~、、、俺もさぁ、びっくりしすぎて、未だに脚がちゃんと動かないのだけど、、これもどうにかしてくれないかい?」
小太郎も申し訳なさそうに言った。

「ん~~。まぁ、それはその内 治るわよ♡」
「それまで私の頭の上に乗っていたらいいじゃないの♡」
そう言って、小太郎をヒョッイと持ちあげて頭の上に置いた。

アマガエル2人とヒキガエル1匹、そしてその頭の上にヌマガエル1匹。
元通り。

つづく。