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妄想アマガエル日記(30)-10月13日(金)曇り

「どうだった?あの石の下は?」
銀次郎が日出夫に聞いた。

「とっても、よかったわよ♡」
「いいところを教えてくれてありがとうね」
とても嬉しそうに、満足気に答えた。

「それはよかったよ!」
「そんなにいいのなら、みんなで一緒にそこで冬を越したらいいね?」
銀次郎が嬉しそうに言った。

「ほんとね~。ここなら4人分の空間は十分にあるし、寒さもしのげそうだし、みんなで一緒だったら楽しそうだしね。」
「あと、1匹で冬を越すと危険が多いから、イモリとか見ていると何匹かで冬を越すようにしていたから、安全のことも考えたらあなたたちは単独よりは複数で冬を越した方がよさそうだしね。」
日出夫が銀次郎の提案に賛成して、さらに先輩としての助言もして、それを聞いた銀次郎は大いに感心した。

2人の会話を隙間から耳を澄まして聞いていた与助が、まだ寝ている小太郎を起こした。
「おい、そろそろ起きろよ~」

「ん~~。もう朝か~。。。」

「あの2人がさっき話していたんだけど、、、4人であの石の下で冬を越そうって言っていたんだよ!」

「えーー。それはどうにか阻止しないと!!」
それを聞いて、小太郎は一気に目が覚めた。

「どうやって、阻止するか考えないといけないな!!!」
与助が提案した。

「そうだな~。。」
「あの隙間は4人には狭いから、銀次郎と日出夫はあそこで、俺らは別のところでって提案するのはどうだい?」

「いや~、、、それがね。。。さっきの2人の会話だと、4人が入るのに十分な広さがあるみたいなんだよ。。。」

「そうか、、じゃダメか~」
腕を組んで小太郎が考えを巡らした。

「じゃさ、2人とかにすると何か言われるかもしれないから、みんながそれぞれ別々に冬を越すように提案したらどうだろう?」
小太郎がいいアイデアが思いついたという顔で提案した。

「いや~。。それがね。。日出夫が何度も冬を越していて、その経験から単独で冬を越すより集まって冬を越した方が安全だと言っていたんだよ~」
「特に俺ら小さなカエルは。。」
与助が困ったように答えた。

「そうなのか~」
小太郎は腕組をしながら、考えた。

「じゃさ、日出夫の石の下の隙間の中に部屋をどうにか作って、銀次郎の寝相の悪さとか、日出夫が腹を触ってくるのを阻止するようにするってのはどうだい?」
小太郎は身振り手振りで説明した。

「それはとてもいいアイデアだけどさ、、、あいつらが、部屋を作るのを嫌がると思うんだよね。。」
与助が提案した時の2人の態度を想像して答えた。

「確かにな~。。銀次郎はみんなで楽しく過ごすとか言っていたからな~」
小太郎が斜め上を見上げながら言った。

「困ったな~。。」
2人が同時に言った。




「まぁ、とりあえず、まだ時間はある訳だし、あいつらも冬を越す場所のことなんか、ずっと覚えているわけじゃないだろうから、少し様子を見ることにしよう。」
与助が提案した。

「そうだな。さすがにすぐに冬を越す場所を決めるなんてことは言いださないだろ。」
「まぁ、とりあえず腹が減ったから、何か食べに行こうか?」

「そうだな。」

2人が朽ち木の隙間から出て行くと、朽ち木の陰から日出夫と銀次郎が2人を待ち構えていた。

「ん?どうしたんだい?」
与助が銀次郎と日出夫を交互に見て言った。

「あのさ~、、、冬を越す場所についてなんだけどさ~。。日出夫の石の下の隙間がとてもいいらしんだよね~。みんなであそこで冬を越すのを決めない?」
銀次郎が2人に提案した。その横にはニコニコしながら日出夫が見下ろしていた。

「え!!だって、まだ寒くなるまで時間があるから、もう少し考えるって話しだったじゃないか!」
与助が困りながら返答した。

「でもね。探している時間があったら、早くあの建物を登った方がいいんじゃないかと思うんだよね。。」

銀次郎がまともなことを言って来たので、与助も小太郎も返答に困ってしまった。

「まぁ、その石の下の隙間は行ったことがないから、よくわからないから、とりあえず、一回見るだけ見てみようか?銀次郎、君は見たのかい?」
与助が冷静を取り繕いながら銀次郎に答えた。

「そういえば、まだ見ていなかったよ。」

「じゃ、とりあえず、腹減っているから、何か食べたらまた集まって、皆であの石の下の隙間に行ってみようじゃないか。」
与助が提案した。

「そ、そうだな。」
小太郎が答えた。

さて、どうする?行ってしまったらもう逃げられないぞ。
与助と小太郎は目を合わせた。

つづく