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毎年、この時期にはあることを考えて不思議に思う。
それは、「夜、虫の声がしなくなったということに気づかない」ということにである。

不思議なもので、虫が鳴いている時には「賑やかに鳴いているな~」と思うが、それが無くなった時は、「なくなったな~」とは思わないものであるし、どれだけ賑やかだったかを思い出すこともない。

また、少し前まではキンモクセイの匂いがしていたが、今ではその匂いもまったくしなくなった。でも、「匂いがなくなったな~」と思うことはない。

不思議なもので、あれだけ賑やかに鳴いていた虫の声もあれだけいい匂いを出していた花の匂いも、それがない時は思い出すこともない。
不思議なものだといつも思う。

それがある時には感心が湧いて気になるが、それがなくなるとその存在自体が無くなったように忘れてしまうようである。

ただ、まだ私の場合は仕事柄、動物や植物を調べることがあるから、彼らのことを思い出す機会は多いのかもしれない。

だから、せめて私くらいは、この時期、花の咲かない桜に感心を持つ人は少ないだろうと思うけど、花が咲いていない桜に関心を向けてみようと思う。

また、せめて私くらいは、この時期、光りながら舞い飛ばないゲンジボタルに感心を持つ人は少ないだろうと思うけど、イモムシ状のゲンジボタルに関心を向けてみようと思う。

せめて私くらいは、その辺りに落ちている虫けらや石ころに価値を見出してあげたいと思う。