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妄想アマガエル日記(27)-10月4日(水)晴れ

「まったく、なんなんだよ、、、あのヒキガエルは。。」
小太郎は本当に迷惑そうにつぶやいた。

そりゃ~、、気絶している時に助けてくれたのはありがたいけど、そもそも気絶するくらい驚かしたのはアイツじゃないか。。。
アイツに近づくとまた腹をほっぺたに擦りつけるから、近づかないようにしよ。。アイツのほっぺはジャリジャリして、こそばゆいんだよ。。。
そんなことを考えながら、日出夫が与助と喋っている隙に離れることにした。

銀次郎は日出夫と与助の間でニコニコしながら2人の話しを聞いているから、どうにかしてあの2人に声をかけて、あのヒキガエルから離れないといけない。

「いったい、どうやったらあの2人にここから離れて帰ろうと伝えられるだろうか~?」
小太郎は少し離れた石の裏に隠れて考えていた。

「そうだ!まず銀次郎をどうにかしてこっちに呼んで、帰ろうと与助に伝えてもらおう!」

隠れているの石からチラッとを顔を出して、銀次郎がこちらを見るのを待つことにした。



「おいおい、、、アイツは何であんなにニコニコしながら2人の話しを聞いているんだよ。。。」
銀次郎の能天気で楽しそうな顔を見て、だんだんイライラしてきた。しかし、その内周りを見るだろうから、もうしばらく待つことにしよう。




「いつまで話しを聞いているんだ。。。こっちを見ろよ。。。」
「せめて、こっちじゃなくてもいいから、周りを見ろよ・・」
全然周りを見ない銀次郎に、さらにイライラしてきた。

ダメだな。銀次郎は自分で話しをするのも好きだけど、人の話しを聞くのも好きな奴だからな。。。別の方法を考えるとするか。

「よし!じゃ、俺は一人で帰るから、ここに帰ることを記した置き手紙を書いておこう!」

なんか書けるものはないだろうか。。。
周りを見渡すとヨモギの葉くらいしかなかった。
葉の裏に文字を書いて、ここに置いておいてもアイツらがそれに気づくとは思えない。与助はもしかしたら気づくかもしれないけど、銀次郎が気づくはずがない。ただ、もし気づかなかったら心配をかけることになるな。。。
別の方法を考えるとするか。

「仕方がないが、ヒキガエルにばれないように少しずつ近づいて、耳元で伝えるしかないな!」

そこで、日出夫と与助は向かい合ってしゃべっているから、銀次郎の後ろから近づいて、日出夫に見えないように銀次郎を楯にして近づくしかない。

そろ~り、そろ~り、遠回りしながら銀次郎の背中側に移動した。途中、チラッと日出夫を見たが、おしゃべりに夢中になっていて、こちらにはまったく気づいていない。

「よしよし!この調子!」
そこからは身をかがめ、日出夫と銀次郎が一直線になって、自分の姿が日出夫に見えないように銀次郎の陰のように少しずつ歩きはじめた。その姿はまさに鳥を捕らえようとする猫、いやカエルを捕らえようとするヘビのようだと自分で思いながら少しづつ近づいた。

冒険家の俺からしたら、こんな特殊任務は朝飯前だ。これまでの冒険の成果だな、なんてことを思いながら、今の自分はなんてカッコイイんだ~なんてことを思いながら、さらに進んだ。

そして、ようやく誰にもバレずに銀次郎の背中まで来ることができた。ここまで来たら、あとは銀次郎の耳元で声をかけるだけだ。

「さすが、俺だな。」
自分が誇らしかった。

息を殺して、銀次郎の後ろから耳元に向けて
「帰ろう~」と伝えた。

すると、
「ぎゃ~~~~~~~~」
銀次郎が飛びあがって驚いた。

そして、日出夫と与助がこちらを振り向いた。

「どうしたんだい?銀次郎?」
与助が声をかけた。

「お化けみたいな声がしたんだよ!!」

「お化け?そんなもんがこんな昼間からいるわけないだろ?」
「ん?後ろにいるのは小太郎じゃないか!」

銀次郎が振り返って
「おっ、ほんと。小太郎なにしてんだい?」
「びっくりした~~。。驚かさないでくれよ。。。」

すると、日出夫が嬉しそうに目を輝かせて
「あら♡ 小太郎ちゃん、そこにいたのね♡」
そういうと、のしっのしっと小太郎に近づいてきた。そして、小太郎を両手で持ち上げて、小太郎の腹をほっぺにスリスリしはじめた。

「くそ~、、またこうなってしまった。。。」
小太郎は、一人で帰ればよかった、と思った。

つづく