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妄想アマガエル日記(10)-7月30日(日)晴れ~アマガエル与助編~

俺は、小さな水たまりでオタマジャクシを過ごし、最近カエルになったアマガエルだ。

オタマジャクシの頃を過ごした水たまりは、俺がカエルになってすぐに干上がってしまった。
ただ、カエルになって数日はその水たまりから離れたところにいたが、数日後、雨が降った翌日に寄ってみたらまた大きな水たまりになっていたので、懐かしくて少しその水たまりに入っていた。

水面に写るカエルになった自分の姿を見ると、全身が綺麗な青色をしていた。その日は昨日の雨が嘘のように晴れていたので、空の青色が水面に写っていたので、その青色かと思ったが、どうやら俺は青色の体をしているらしい。
その時はじめて知った。

水面に写る空の青色と自分の青色がなんとも綺麗だと自分で見とれてしまった。

ただ、見渡しても周りにいるアマガエルはみんな緑色をしていた。

「どうやら、俺は他のアマガエルとは違うらしい。。」そう思った。

そこで、いろいろなアマガエルを見るために移動することにした。

まずは、地面がレンガで覆われた大地があったので、そこを通ろうと思ったが、昼の灼熱で熱くなっていそうだったので、すこし冷めるまで近くの花壇の陰に身を隠して冷えた頃を見計らって進むことにした。
進み終わった頃には、日が暮れていたが満月だったので周りは明るかった。そして、風がひんやりとしていて涼しかった。

レンガの大地の先には花壇があって、その下の草むらには、全身が緑色のアマガエルが何匹もいて、小さなコオロギを競うように食べていた。

「どうやら、この辺りにいるアマガエルはみんな緑色のようだな」
確認するように独り言を言った。

そして、その先には水路があった。
水路は泳いで渡らないと向うにはいけそうになかったが、他に渡れるところがないか周りを見てみようと少し上流側に移動してみた。すると、ピョンとジャンプするだけで渡れる幅が狭いところがあったので、そこを渡ってみた。

その水路には、ツチガエルとトノサマガエルが多く、アマガエルはあまりいないように見えたが、水路の近くの草の上や花の上で何匹もアマガエルが寝ているのが目に入った。ただ、それらのアマガエルも全身緑色をしてた。

「そうか、、、アマガエルというのはどうやら緑色をしているのがふつうのようだな、、」
特別な色をした自分がなんとも誇らしかった。

その先の草むらを進んで行くと小さな雑木林があって、そこの縁を進むとコンクリートブロックの背丈の低い壁があった。

「よし、少しこの壁をよじ登って高いところから周りを見てみることにしょう」自分に言い聞かせるように言った。

壁をよじ登って周りを見渡すと、その壁のすぐ下にいい感じの朽ち木が何個か転がっているのに気づいた。そして、その一つの隙間には自分を誘うように近くの街灯の光が一筋射していた。

「おっ、なかなかよさそうな朽ち木だ!」

その朽ち木に近づくためにその壁を降り始めると、下から体の大きな茶色のアマガエルが1匹登ってきた。

すれ違う時に、
「君は、体の色が茶色をしているんだね!」
と、声をかけてみた。

すると、
「あ~、この色?君は最近カエルになったのかい?」
「なら、まだ知らないか。。俺たちアマガエルは周りに合わせて勝手に体の色が変わるんだ。だから、今は茶色だけど、草むらにいたら緑色になるし、白い壁にいたら白色になるんだ。」
さらっと教えてくれた。

「へぇ~、、そうなんだ!じゃ、俺は今は青色をしているけど、それは空の青色が水面に映った水たまりにいたからなのか!」
自分の青色が気に入っていたので、他の色に変わるのは嫌だな~と思っていた。

「いや、君は青色なんだよ。」

「えっ、俺は青色以外の色に変われないの?」

「そうなんだ。君みたいな色の奴に以前会ったことがあるけど、そのカエルは色が変わらないって言ってたし、長い間一緒にいたけど、変わったところは見たことないから。。」

「そっかぁ。じゃ、青色のままなのか~! よかった~!!」
「青色を維持するためにまたあの水たまりに戻らないといけないかと思ったよ~」
「教えてくれてありがとう!」
その大きなアマガエルに御礼を言って、朽ち木の隙間の前に行ってみた。

すると、その隙間はちょうど自分が過ごすには広さもちょうどいいし、風も涼しくよさそうなところだった。

「よし、当分ここで暮らそう」
そう思った時、足元に、1冊の日記が落ちているのに気づいた。

つづく