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第20話 色々な目線

 当館には色々なお客さんが来館されます。わざわざこんな田舎まで来て頂いたのだから、少しでも楽しく、そして快適に館内で過ごして頂きたいと考えています。ただ、難しいのが、お客さんがすべて私と同じような体格で感覚の人であれば、自分が楽しく、快適に過ごせる空間や展示を用意すればいいのですけど、十人十色ですからそうはいきません。

 だから、なるべく多くの人の目線を意識して館内を見るようにしています。

 魚類や甲殻類、両生類を生態展示している水槽の上には照明が設置してあります。以前は蛍光灯の照明でしたので光は水槽だけに照射されていましたが、数年前にすべての照明をLEDライトの照明に変えました。当館の水槽は水族館のような壁の中に埋め込まれたものでなく、ほとんどが剥き出しに設置してあるのですが、そんな水槽にLEDライトを設置するとライト自体は直下を照らすように設計されてはいますが、どうしてもライトの光が水槽の蓋に反射して、(私の身長で見ると角度的に光は反射してこないけど)水槽と同じ目線の小さな子の目線で見ると直射してしまいます。水槽用のLEDライトは光が強いだけでなく、水草を成長させるために紫外線域の波長の光も多少含まれているかもしれませんから、そんな危険な光を来館者、しかも小さな子供の目に漏れさせるわけにはいきません。そこで、LEDライトをカバーする目隠しを考えました。しかし、カバーを作ってみるとライトの熱がこもってよくありません。。。そこで、色々と考えてLEDライトの前に黒く塗った角材を置いて光が来館者側に漏れないようにすることにしました。そして、その角材が落ちたりしてはいけないので、水槽に吸盤で固定するようにしました。これで、お客さんには光が届かず、照明の熱がこもることもなく、世話をするのもやりやすくなりました。

LEDライトを水槽の上に置くと子供目線に強い光が蓋に反射して漏れる
LEDライトの前に黒い角材を設置した状態。光が漏れない。
水生昆虫の水槽(目隠しの角材は水槽横に吸盤で固定している)
淡水魚の水槽
淡水魚の水槽
エビとカニの水槽
両生類の水槽

 また、当館には小さな子を連れた家族が来館されることが多いのですが、そのような方々の目線で見てみると、多目的トイレをもう少し考えないといけないと思いました。当初より多目的トイレには“便器”と“手洗い場”、“オムツを変える台”がありました。ただ、オムツをそのまま捨てるとトイレの中が臭くなり、次に使う人が不快になります。そこで、使用済みのオムツを捨てる時に入れる袋を設置したり、小さな子が便器に落ちないようにするカバーを設置したり、椅子を置いたりしてみました。また、トイレではゆっくり授乳はできないかもしれないので、授乳室の提供なども始めることにしました。

多目的トイレ
張り紙
トイレの中
オムツ交換台
使用済みオムツを入れる袋
トイレの中
小さい子用の便座カバー

 さらに、足の不自由な方が来館された場合、だいたいはご自身で車椅子を持参されますが、短時間・短距離 歩くのであれば問題ない方は車椅子を持参されない場合が多く見られますが、貸し出し用の車椅子があったらそのような方は快適に過ごすことができます。そこで、貸し出し用の車椅子を用意して、どなたでも来館された時に使って頂けるようにしました。そして、車椅子があるのであればベビーカーもあったらいいなと思うようになり、ベビーカーも用意しました。また、外で虫採りしている子供達を見ていると、貸し出し用の捕虫網や観察道具もあったらいいなと思うようになり、それも用意しました。

貸し出し用の車いす
貸し出し用のベビーカー
貸し出し用の捕虫網や観察道具

 色々な人の目線で見てみると、見え方は変わりますので、今後も少しずつ色々な人の目線で見てみて、さらに多くの人を観察してみようと思います。昆虫を観察するのが専門の私は、人を観察するのも好きなのです。
 まぁ、どちらも同じ生物ですから。