妄想アマガエル日記(41)-12月10日(日)晴れ
「よし、じゃ、穴の外に出て朽ち木の樹皮を集めに行ってから、部屋を作ろうじゃないか!」
与助が、元気よく皆に声をかけた。
でも、なかなか銀次郎と小太郎が動いてくれない。
「おいおい、どうしたんだよ~」
与助が2人に声をかけた。
でも、2人とも口をとがらせて目を合わせようともしない。
「おいおい、、俺がなんかしたっていうのかい?」
与助が困って、2人に聞いた。
「だって、、なぁ?」
小太郎が銀次郎に言った。
「そうだよね~」
銀次郎も口をとがらせて小太郎に返事した。
「なんだよ、、俺がなんかしたか?」
与助は困ってしまった。
「僕らが言ったことは何も聞いてくれないけど、いつもいつも日出夫が言ったことだけは物凄く賛同するじゃないか!!」
銀次郎が口をとがらせて言った。
「ほんと、そう」
小太郎も口をとがせていった。
「そんなことないさ。ただ、日出夫が言うことがいちいち的確だからさぁ~」
「やっぱり、俺らより長く生きてるだけあるな~って感心して賛同してしまうだけさ。」
与助が少し呆れて答えた。
「まぁまぁ、、、銀次郎ちゃんも小太郎ちゃんも言ったことはちゃんと与助ちゃんも賛同していたじゃないの♡」
「だから、ほら、銀次郎ちゃんが言った落ち葉にしても、小太郎ちゃんが言った石も、今から取りに行くって与助ちゃんが言っていたでしょ!」
日出夫が2人をなだめるように言った。
「いや、与助は朽ち木の樹皮を取り行こうとは言ったけど、落ち葉と石は言っていなかったよ!」
銀次郎がさらに口をとがらせて、与助を指差しながら言った。
「そうだ!そうだ!与助は樹皮のことしか言っていなかったぞ!!」
小太郎も口をとがらせて、与助を指差しながら言った。
それを見ていた与助が2人のとがった口をつまみながら、
「まったく、お前らは、、、こんなに口とがらせながら言うことじゃないだろ?」
「俺が悪かったよ。樹皮と落ち葉と石を取りに行こう!」
そして、ようやく2匹のアマガエルと1匹のヒキガエル、そしてその頭の上にヌマガエル1匹が穴から外に出て樹皮と落ち葉と石を集めに行くことにした。
数時間後---
「よし!これだけあれば十分部屋を作ることはできるだろう!」
与助が皆で集めたものを見ながら言った。
「そうね。取って来過ぎたかもしれないけど、まぁ、銀次郎ちゃんはたぶん壊すだろうから、その補修用に予備で置いておかないといけないから、これくらは必要ね。」
日出夫が悪気なく言った。
すると、また銀次郎が口をとがらせようとしたので、与助がその口をつまんで、
「まぁ、まぁ、日出夫も悪気はないんだ、落ち着いてくれ!」
それを聞いて、ゆっくりと銀次郎の口が元に戻ったので、皆で部屋の壁を作りはじめた。
まずは、各部屋のくぼみの前に引いた線の上に取ってきた石を積んでいった。腰の辺りまで石を積んで、その石垣で挟むように樹皮を立てた。ちょうど、穴の高さまである大きな朽ち木をとってきたので、それを穴の天井にはまるように加工して立てるとちゃんとした壁を作ることができた。
「お~!!なんかちゃんとした壁になったね!!」
銀次郎がそれを見て喜んだ。
「ほんとだな~。。ちゃんとした部屋になったな!!」
小太郎もそれを見て感心した。
「じゃ、次は落ち葉を壁と穴のくぼみの壁のところにぶらせ下げて扉にしようじゃないか!それぞれ好きな落ち葉を選んでつけよう!」
与助が皆に提案した。
「そうね~。。私はこの大きなホウノキの葉にしようかしらね♡」
日出夫が選んでとりつけた。
「おれは、このギザギザしてかっこいいからクヌギの葉をつけよう」
小太郎が選んでとりつけた。
「じゃ、俺は、この葉が肉厚だし、艶があるからカキノキの葉をつけよう」
与助が選んでとりつけた。
「みんなどんどんつけていくね。。。じゃ、僕はこの 色が綺麗だからイロハモミジの葉っぱにしようかな?」
銀次郎が選んで取り付けようとした。
すると、与助が、
「おいおい、、そんな薄いペラペラの葉じゃ、寝相の悪いお前は部屋から出てきてしまうだろ?」
「この頑丈なモクレンの葉にしなよ!ほらっ。」
それを聞いた銀次郎は、
静かに、そして少しずつ、口がとがりはじめた。
つづく。