見出し画像

トヨタデイズ第二回 日本では絶滅しかけている使いやすいサイズのステーションワゴンが「カローラツーリング」だった

●カローラという名前からくるかつてのイメージはこのクルマにはないし、人々の間にももはやない

トヨタデイズ第二回はカローラツーリングに乗ってみた。私は長い間、自動車ライターというものをやってきたが、実はクルマオタクではない。マニアでもフェチでもなく、単にクルマというものが好きなだけ。なのでクルマに関して好きだ嫌いだ、メカがどうとか、走りがどうとかというような話ではなく、割に客観的に、そのクルマの社会的立ち位置とかから考えてしまう方だ。クルマのステイタスというか、ブランドの持っているイメージからその所有者の趣味嗜好、あるいは考え方までがわかるよね、というような話が好きだった。

クルマって、その所有者を表すと思う(まあ今となっては、かつては、だが)。派手なスポーツカーに乗る人は派手な人だし、マニアックな外車に乗る人はそれなりのウンチクをいいたい人で、どちらもおとなしいタイプではない、とか。本当に高いクルマに乗っている人はお金持ちだし、無理して高いクルマに乗る見栄っ張りの貧乏人はそれが滲み出る。オラオラ系のクルマに乗る人はやっぱりオラオラの人だし、かわいらしい軽自動車に乗る女子がオラオラの人である可能性は低いはず。などなどクルマは乗る人(所有する人)の考え方とステイタスを表しているなあ、と思ったりする。

そういう視点でカローラというクルマを見ると、これに乗っている人というのは、考え方は保守本流、あまりお金がある方ではなく、仕事は毎日ドブネズミスーツで、休日はダイエーのジーパンで、地味な嫁さんと郊外に一戸建てをローンで買って住んでいるというイメージだった(関係各方面、ゴメンナサイ)。カローラを手に入れたら、あとはディーラーの言うままに7年位で買い換え(もちろん現金で)、他のクルマに(例えばプリウスにすら)浮気することなく、たとえ自身が出世してもクルマはこれで十分とマークⅡやクラウンには絶対に移行しない人のクルマ(というあくまでイメージですのでゴメンナサイ)。もちろん乗ってるのはワゴンではなくセダンの方。

画像1

2002年のカローラがこれ トヨタ カローラ ラグゼール 20021228アップ

そんな人がベーシックなカローラユーザーだと勝手に思ってたが、まあそれだけでカローラが販売のトップに立てたりするわけはないので、様々なカローラを冠したクルマが作られ、その合計で、かつて日本で一番売れてるクルマとされてきた。その中でカローラフィールダーというワゴン(ステーションワゴン)も登場。カローラというクルマは、いわゆる大衆車だから、法人の送迎などの営業車としてカローラセダン、そして荷物を運ぶ商用車としてカローラバンが作られてきた。ただ商用車としてプロボックス(サクシード)が専用ボディで登場したあたりでカローラバンは必要なくなったはずだが、その後もワゴン(バンタイプ)のボディは生き延びた。これは日本というより世界で求められていたからだろう。日本のワゴン市場はほぼ壊滅したが、海外にはまだ残っていた。それゆえカローラにはワゴンが今も存在することになったわけだ。

さてカローラバンの思いでだが、個人的には二代目によく乗った。もう40年以上前だが、水質検査会社のアルバイトで、愛知県各地の工事現場で採取した地下水を検査場へ運ぶという仕事をやっていたのだが、その時の足がカローラバン。当時もう乗用車はラジアルタイヤだったが、商用車は細いバイアスタイアで、工事現場の土の上ではかなりよく滑ったことを記憶している。当時はFRだから、リアハッピーというやつ。そういえば別の現場で、友人がバックさせたときに地面にあった鉄筋がハネて床から斜めにボディを突き抜いたなんて恐ろしい事故があったが、あれもカローラバンだった気がする。今の高剛性ボディではそんな事故は起きないはずだが、どうなのだろう。

話を戻して、新型のカローラにもワゴンがあり、今回試乗したのもそれで、今はツーリングと呼ばれる。二世代前はフィールダーと言っていた。カローラはセダンとハッチバックとワゴンという3タイプのボディを持つわけだが、日本で不人気なワゴンはフィールダーとかツーリングと呼ばれステーションワゴン色を薄めたわけだ。とはいえこのクラスのワゴンは他にないだけに今やけっこう貴重な存在。サイズとしては5ナンバー枠を45ミリ超えるナローボディが用意されており(日本だけ先代プリウスと同じ全幅1745ミリ・グローバルモデルは全幅1790ミリ)、小さめのワゴンが欲しい人にはありがたいのでは。しかしこれ、今となっては昔のクラウンワゴンあたりとさして差がない大きさで、そこそこ大きく広いと言えるだろう。比べてみると、私が昔乗っていたメルセデス・ベンツのCクラスワゴン(2000年式W202)とほぼ同じ大きさ。なるほど乗りやすいと実感できたのはそういうわけか。

画像2

最初のフィールダー トヨタ カローラ フィールダー 1.8S “エアロツアラー” 20120907アップ

画像3

ハイブリッドになったフィールダー トヨタ カローラフィールダー ハイブリッド 20130809アップ

画像4

先代のフィールダー トヨタ カローラ フィールダー 1.5G “W×B” 20150605アップ

画像5

石川県小松市二ツ梨町一貫山40にある「日本自動車博物館」の前で

スタイリングはなかなか美しいのでは。荷室の広さよりスタイリング重視という感じでリヤハッチはかなり寝ており、全高も1460ミリと低いので、流れるようなワゴンスタイルが素敵だ。ツライチとまではいわないが、トヨタ車も最近はリアタイヤがそれなりに張り出しているので、ノーマル状態でもカッコ悪くはない。試乗車はハイブリッドだったので走った感じはプリウスあたりと同じような印象。ちょっと金太郎飴的なTOYOTAハイブリッド風味となる。

 今回は高速道路中心に450キロほど乗ったが、まあ静か、かつ快適そのもので、燃費もトータルで19km/Lと、個人的にはまったく文句なし。カタログ値と違うという人は、努力してカタログ値に近い燃費を出す走りをすればいいだけ。W202は高速でも11km/Lくらい(しかもハイオク)だったから、燃費に関しては昨今、素晴らしい進化といえる。走りに関しては専門の人達の試乗記をご覧いただきたく。とはいえ実際、乗っていて何にも気になりはしなかったので、走り云々をもはや言う意味はないように思える。高速道路ですらほぼ80~100km/hしか出せないまま60年もの年月が過ぎてしまった日本の道路事情ゆえ、クルマの性能はすっかりコモディティ化してしまったのでは。道がクルマを作るとしたら、日本のクルマの今の性能は、道が進化しなかったから、とも言えるように思う。

画像6

越前丸岡城の前で

●結構な自動運転。でもまだまだこれから先は長そう

さて、何より今回は「自動運転」を試してみた。というと誤解を招くが、全車速対応クルーズコントロールとレーントレーシングアシストで、どれくらい車線維持して走ってくれるかを、コーナーの多い北陸自動車道でやってみたのだった。結果、もうほとんど自動運転といえそう、これは。車線に沿ってほとんどのコーナーで程よくステアリングを自動で切ってくれる。もちろんステアリングに軽く手を添えてはいるが、力は加えていない。ただ、微妙に修正を入れながらの自動コーナリングは、やや違和感があり、自分でなめらかなステアリング操作したくなる。我慢しながら運転を任せているという感覚で、初心者運転の隣りに座った感じとでもいうか。ともあれ頑張れ、頑張れと心でつぶやきながらの走りはけっこう楽しめはした。

こうして世の中はだんだんと自動運転になって行くのだろうが、しかしまあ、いかにもその歩みがのろい。2005年の愛知万博の頃、そうした技術が一斉に出てきたのだが、それから15年もたっているにもかかわらず、まだこの程度か、という思いは否めない。せめて高速道路でのトラック自動縦列走行くらいは実現していても良さそうなものだが、それも未だまったくの夢物語。クルマを操る楽しみを体験しようにもそれができる道は事実上なく、自動運転も遅々として進まないわけで、そこが現在のクルマの大問題だろう。自動運転は早く実現してくれないとこちらが死んでしまう。それゆえ、もう中国製でもいいので早く実現してくれ、などと過激な気持ちにもなってしまう。

画像7

このカローラツーリングに乗っていると、最初に書いたカローラのネガなイメージはもうまったく感じられなくなった。パッと見、なかなかカッコいいので、これがあの「カローラ」だと気づく人は少ないし、もし気付いたとしても、多くの人にはもう昔のカローラのネガイメージなどないので、色眼鏡で見られることもない。逆に「これがカローラなの? なかなかいいクルマだなあ」といわれる方が多いだろう。私の家内も「ワゴンだし、これ欲しいかも」と言っていたくらい。「ハイブリッドならプリウス買うよりこっちの方がいい」とも。そう、現行プリウスのデザインに魅力を感じない人でも、トヨタのハイブリッド車にはワゴンボディのこういう選択肢も用意されてますよと言われたら、つい買ってしまいそう。プリウスの販売は鈍っても好調を維持するトヨタ、の底力はこういうところだろう。

カローラツーリングトヨタ公式ページ

webCG試乗記 LINEカーナビに悪戦苦闘

ベストカーweb カローラシリーズでナンバーワン人気はツーリング

モーターデイズ試乗記 トヨタ カローラ スポーツ 20180727アップ

モーターデイズ試乗記 トヨタ カローラ アクシオ ラグゼール “αエディション” 20061027アップ

画像8


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?