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もったいない、が僕たちを惑わす


■ロシアから撤退した企業ほど高評価

米エール大学経営大学院の調査によると、ロシアから撤退・一時停止・縮小を表明した企業はそうでない企業の株式リターンを大幅に上回ったことが判明したそうです。(参照:日本経済新聞2022/7/1)

つまり、ウクライナを侵略するロシアに「ノー」を突きつけた企業ほど、市場から評価されている、ということです。

撤退するということは、これまで投資してきた金額を捨てるということで、株主利益に反します。だからその額が大きいほど企業は躊躇する。

それでも撤退を決断した企業を市場はポジティブに評価したのです。

株主利益よりも企業倫理を優先した企業が支持された、ということです。

■埋没コスト(サンクコスト)は無視せよ


まさに戦時下である現在、撤退した企業の決断が正しかったかどうかは、もう少し長いスパンで見なければ判断できないかもしれません。

それでも、ロシアの強権的な侵略行為を見るにつけ、撤退企業に対して「良くやった」と賞賛の声を送った人は多かったのです。

さて。

既に投下した金額や時間が大きければ大きいほど、撤退に躊躇する、ということは、平時のビジネスシーンでもよく起こります。この事業、あまりうまくいかないし、やる気も起きなくてやめたいのだけど、結構なお金と時間を投下しちゃってるから、もったいなくてやめられないんだよな・・・
というシーン。

この、すでに投下したコストのことを「埋没コスト(サンクコスト)」と呼び、経営判断時には「このコストを考慮すべきではない」というのが通説です。

今から発生するコストと未来に得られる利益のみを判断材料にして、
意思決定せよ、と。

過去に投下したコストは無視、そのうえで、ビジョンや理念に照らし合わせ、「今後、自分はこれを続けるべきか?」と問いなさい、ということです。

■映画館での埋没コスト


この埋没コストは、映画館で映画を見るシチュエーションで説明されます。

映画を見るため、1800円払って映画館に入ったとする。

映画が始まって5分たつと、この映画は全く興味が無いことが分かってしまった、という場面、あなたならどうするか?

払った1800円がもったいないから、最後まで我慢して見続けるか?それともすぐに映画館を出て、失うはずだった2時間を有効に使うか?

「埋没コスト」の考え方では、後者を選択すべし、となる。

1800円はもったいないけど、無駄な時間をただ座って過ごすことは全くばかげている。1800円のことはさっさと損切りして、次の面白いことを探しに出かけた方が断然生産的なのだ、ということです。

■自分レベルの視点で


自分レベルではいかがでしょうか?

僕たちはすでに払ったコストに囚われて、間違った判断をしていないだろうか?

「もったいない」という感情は、時に僕たちの判断力を麻痺させます。僕は、国家資格のキャリアコンサルタントの資格と、コーチングの民間資格を持っていました。しかし更新時期が来ても、どちらも更新しませんでした。

両資格とも、取得するために数十万円のお金と数十時間という時間を投資しました。これを考えると、「更新しないのはもったいない」となる。

でも、今後の未来を考えた時、更新のための時間と費用を費やすほどの価値が自分にとってあるのか?という疑問が湧きました。

で、「自分にとってはノー」、となりました。

払った時間とお金は埋没コストとして無視し、自分のビジョンに照らして有用か否かのみで判断すると、「いらない」、という考えに至りました。

資格は失効したけど、スキルは残っています。

それで十分。

更新するためにさらに追加でお金と時間を使うよりも、もっと優先すべきことがある、と思ったんです。「もったいない」と思うと、判断を間違えます。

「中小企業診断士」の資格は本業のコンサルに必要なので、これはしっかり維持します。でも他のものはいらない。

ドラッカー先生は、生き抜くためには「高度に専門特化したスキル」が必要だ、と言いました。

専門特化。僕たち、アレもコレもできません。埋没コストを惜しまず、やるべきこと(専門)を磨きます。

あなたはどうします?

応援しています。

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