考察および仮説 『ジョブ理論』

はじめに

この文章はクリステンセンの書籍『ジョブ理論』について、筆者の考察をまとめたものです。本の紹介は触り程度しかしないのでご了承ください。

概要

イノベーションのジレンマ』でお馴染みクリステンセンの新著。
『何故ヒトはこの状況においてそのサービス/プロダクトを雇用したのか?』を深く考察することでイノベーションを予測できる、という『ジョブ理論』を提唱した内容となっている。

考察

『ジョブ理論』の有効性について

有効・無効が言える程の具体性がまだない、という印象。
ベースは基本的に多くの事業モデルと同様、仮説検証である。
その仮説を正として、仮説の効果がわかるサービスを構築・改善する。
仮説の立て方/視点がジョブ理論のコア/独自性と言える。
つまり『仮説が合ってるか間違ってるか』を検証する手立て自体はジョブ理論にはない。
あくまで『仮説の立て方の仮説』である。
リーンやデザインスプリントのようにフレームワーク化されたものではないため、試して効果が得られる/検証できる、といったステータスにはまだない。

『ジョブ理論』はどう使えるか?

しかしいくつか使える材料はある。
1つ目は『マーケティングに対するカウンター』である。
マーケティングは数値を扱うため、新規事業の開発や既存のシステムの改善において強力な決定権を持ちがちであるが、そのマーケティングの扱う『数値』は客観性があるものではない。
別にこれはマーケティングに限った話ではなく、全ての数値を扱う分野、特に現実とデータの間を行き来する統計やシミュレーションの分野で当てはまる話だ。
現実というものは非常に複雑な要素が絡んでいて、それを1つのデータに圧縮/射影する、というのは当然情報を切り捨てる行為である。
そこには『この情報は不必要である』あるいは『必要な情報を抽出する』という意思/判断、もっというと仮説が働いている。
論文が基本的に『データ→仮説→仮説を元にデータを取得する実験→実験結果から仮説を検証する』というフローを取るのもそのためである。仮説のない、仮説に無自覚なデータには意味がない。
必要なのはデータを取るための仮説であり、下手をすると言語化すらできていない一連の行動でありストーリーである。
離散的であり現実を強烈に圧縮してしまっているデータはあくまで仮説があって初めて定量評価のために機能する。


『粒度』と『サービス』について

もうひとつ利用できそうなポイントは『ジョブ理論』の提唱する目線そのものだ。
UX系のワークショップを開催した際、インサイトの粒度、アイデアをまとめた時の粒度が度々問題に上がる。
粒度が適切でないとフレームワークに沿って進めているにも関わらず、妥当なレベルに企画/サービスが落ちないためだ。
個人的にはこのあたりはどのワークショップのメソッドでも根本的な問題としてあるな、と思っている(経験した事があるヒトも多いだろう)。
しかし『ジョブ理論』は『今フォーカスすべき課題・問題・仮説・ジョブの目線/粒度/倍率』に対して一定の指標を与えている。以下は『ジョブ理論』内で指摘されている言語化されたジョブのい間違っている例である。

状況を形容詞を使って説明している
同種のプロダクトでしか解決できない
具体的なソリューションに言及している

もっというと、これは要するに「複数のサービスを取捨選択できる状況」を克明に記述する、ということなのかもしれない。
この状況に対して深く分析し、競合サービスより、より最適化したソリューション/サービスを提供できればシェアを奪い、成長することができる。
逆にいえば状況にフォーカスすることでUberがタクシーだけでなく自動車業界全体に対して脅威となる/ジョブの奪い合い相手となるのが分かりやすい。

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