GISTプランニングについての記事の考察

社内および1-10みたいなインタラクティブなモノ作りをするエンジニア界隈で『製品ロードマップの使用をやめて、GISTプランニングを試すべき理由』が『良い!』という声がちらほら聞こえてきたのでじっくり読んで中身を分析してみました。

みんなが惹かれるポイント

まず、既存のプロジェクト進行に対して端的に問題点を突いているのがこの記事が読まれる理由なのかな、と思いました。

アジャイル開発はウォーターフォール・モデルに取り組みましたが、プランニングのウォーターフォールは変えませんでした。

これはアジャイル開発の問題点の提起ですね。

「作ってみるとプランニング/企画上の問題点が見つかり、具体的に企画をどういう方向に変更したほうが良いか判明したが、それがイテレーションサイクルの中に入ってないため実現できなかった」というパターン。
よくあります。

アイディアはゴールに到達する仮定上の方法を示しています。ここで重要な言葉は“仮定上”です。与えられた目標を達成するためのアイディアはたくさんあるでしょう。しかし、肯定的な結果を生むアイディアは3分の1以下です(格段に確率が低いことも多いです)。経験豊富なリーダー、製品管理者、設計者のアイディアも平均以上の成功率は得られません。

本文中では名言はしていませんが、こちらは従来のUXベースのサービスデザイン系に対する問題点かな、と感じました。特にフィジビリティや技術課題に対しての答えに感じました(僕がエンジニアサイドの人間だからかな・・・?)。現実的に実現できないアイデアがワークショップで出てきて、体験試作を作って終わり・・・そんなのはさっさと切りましょう、ということかと思います。

大規模なプロジェクトを始める代わりに、小規模なステップ・プロジェクトでアイディアを試します。各ステップ・プロジェクトの期間は10週以下で、1段階ずつ実行していきます。
例:モックアップ→プロトタイプ→実用最小限の製品(MVP)→試験運用→ベータ版→販売

これもウォーターフォールのプロジェクトに対しての返答となっていますね。
大規模なプロジェクト運用ではなく、小規模なステップ・プロジェクトという10週以下の単位で実行していく、と書いています。非常に素晴らしい。

結局GISTってどんなプロジェクト進行なの?

長く書いてますが、大きく4つのパーツから構成されています。

1. ゴール
会社の目標になります。1年単位のサイクルで更新。具体的な制作/企画はアイデアに分離されるようです。売上10%アップ!とかですね。
1年サイクルで更新/作成するようです。

2. アイデア
ゴールを実現するためのアイデアになります。
ターゲットの異なる新商品を発売ししましょう!とかかな。
通常のウォーターフォールと違い、常にアイデアは出し続けるようです。

3. ステッププロジェクト
これがGISTの肝かと思います。プロジェクトは全てアイデアに紐づき、アイデアはゴールに紐づく。アイデアの数だけプロジェクトがあり、検証を進めていく。そしてステップが進まなくなったアイデアは削除/凍結する。
面白いのはモックの制作からユーザテストまでこのステッププロジェクト内で行う想定にしていることです。

4. タスク
タスクはおなじみのタスクとほぼ変わりません。個人に紐づいた今日明日レベルでのやることのリストですね。

GISTの特徴/特製について

GISTは革命的な新しい考えではありません。どちらかといえば、ここ数年間のアイディアと手法を融合させたものですが、別々にすることもよくあります。GISTはプランニングの山の全ての層に取り組もうと試み、生きた変更プランを作り出します。

ここにも書かれている通り、GISTは柔軟性を持ちつつ、異なる視点で見なければならないプロジェクトの動き方を図式化/名称化したものに思えます。
筆者の書かれている通り、整理してしまうと新規性はあまりないかもしれませんが、うまく行かないときに何処の柔軟性が確保されていないからうまく行かないのかを指摘することは可能になるように思えます。そういう意味では非常に有用に思えます。

個人的に気になったのは、『これはプロダクト開発や新規事業開発に利用できるのか?』という点。

ステッププロジェクトが10週以内(つまり2か月以内)でユーザテストに行く点からいって、プロダクトの開発としては結構厳しいのではないかと思います。『UX的な評価に長けたかなり訓練されたユーザ』によるユーザテストが実施できる環境構築がマストになりそうです。

また、このプロジェクトだとスケーリングや量産といったフェーズが用意されていません。おそらくステッププロジェクト内で完結させていくのだと思うのですが、これだとプロダクトのような量産に時間とコストがかかる、量産フェーズにならないとコストが高くて検証できないものをどのようにGISTで処理するのかについては書かれていません。

このGISTはおそらくアジャイルなどと同様、ソフトウェア開発の中で出てきたものであり、プロダクト開発事業で運用するためには組織作りは勿論、プロダクト開発の特性を織り込む必要がありそうに思います。

新規事業についてはどうでしょう?
まずゴールの設定が難しいですし、その次のアイデアのレベル感もなかなか粒度大きくなりそうで難しいように思いました。新規事業だとアイデアのレベルでもう一個GISTをイテレーションするぐらいの感じなのかも・・・と思います。



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